旅と暮らし

ボブ・ディラン楽曲のカバー集を発表したアーティスト
2つの演出でみせるコットンクラブでのステージは見逃せない

2018.02.21

写真・図版 内本順一

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2016年8月に続いて、アメリカはケンタッキー州生まれのシンガーソングライター、ジョーン・オズボーンの来日公演が再びコットンクラブで行われる。とてもうれしい。長きにわたって活動を続けていてもなかなか日本で観ることのできないアーティストというのはたくさんいるもので、ジョーンもそういうひとりだったわけだが、ついに観ることができた2016年の来日公演からわずか1年8カ月でまた来てくれるとは!

自分がジョーンの歌を初めて聴いたのは、ご多分に漏れず1995年の大ヒット曲「ワン・オブ・アス」。繰り返される印象的なギターリフと、ハスキーがかっていて哀感を漂わせながら甘みもある歌声、ブルーズとロックを併せ飲んだシブめの雰囲気ながらも多くの人の心に響くメロディーのよさにやられ、すぐにファンになってメジャー・デビュー・アルバム『レリッシュ』も愛聴した。

ちなみにシェリル・クロウのメジャー・デビューが1993年。シェリルの1stアルバムに収録されている「ラン・ベイビー・ラン」「さらばラス・ヴェガス」といったアメリカのロードムービー的な雰囲気の曲が大好きだった自分はジョーンの歌にもそれとそう遠くない物語性を感じ、またふたりとも1962年生まれの同世代ということもあって、この当時、両者の作品を近い感覚でよく聴いたものだった。シェリルは1995年のグラミー賞で最優秀新人賞など3部門を獲得。ジョーンは翌1996年のグラミー賞で、受賞こそ逃したものの最優秀アルバム、レコード、新人賞ほか8部門にノミネートされていた。

ジョーンの出世曲「ワン・オブ・アス」は、その歌詞にも驚かされた。「もし神様に名前があるとしたら、どんな名前なんだろう。訊きたいことがあれば訊いてもいいのかしら」「もし神様が私たちと変わりなかったら? 私たちのように、だらしのないボンクラだったとしたら……」。「神は素晴らしい。そのとおりよ」。作詞はジョーンではなくフーターズのエリック・バジリアンなのだが、なかなかすごい。

そんな「ワン・オブ・アス」は後にプリンスが3枚組大作『イマンシペイション』でカバーした。信仰心を強めていた時期だっただけに響くところがあったのだろう、きっと。そういえばプリンスはシェリルの曲をカバーしたこともあった(「エブリデイ・イズ・ア・ワインディング・ロード」)。ジョーンもシェリルもプリンスに気に入られた才ある女性だったということだ。

ジョーンはシングル「ワン・オブ・アス」とアルバム『レリッシュ』でブレイクしてしばらくは堅調な活動を続けたが、その後「ワン・オブ・アス」のようにポップさのある曲の量産を求めるマーキュリー・レコードと考えの相違が生まれ、契約解除を通告されることに。だが彼女は信念を曲げることなく活動を続け、2000年にインタースコープから2枚目のスタジオ盤『ライチャス・ラヴ』を発表。2002年にはインディーのレーベルに移ったが、ソウルやロックのカバー集『ハウ・スウィート・イット・イズ』に始まり、その後もコンスタントに作品を発表しつづけた。

そんな彼女は両性愛者であることを公表し、また避妊と人工中絶を訴える女性団体にも参加して、女性向けのウェブサイトも主宰。ジョーンが信念の人であることはそうしたところからもわかるものだ。

国内盤のリリースは長らく途絶えていたし、来日もまったくなかったので、日本でどれだけ関心を持った人がいたのかわからないが、幻の初来日(確か1公演だけ行われたものの、何かの事情でその後の予定分がキャンセルとなった)以来およそ20年ぶりに実現した2016年8月の日本公演は実に素晴らしいものだった。それは鍵盤担当(何曲かではギターも)の男性キース・コットンとふたりだけによるアコースティック・セットで、ジョーンはほぼ歌に専念する形。歳月を経た分だけ熟成された歌声は非常に味わい深く、さらりと歌っているようでもそこからソウルとブルーズの感覚がにじみ出ていた。

その公演でジョーンは初っ端からストーンズもカバーしたスリム・ハーポの「シェイク・ユア・ヒップス」を歌ったものだが、途中、ボブ・ディランの曲も2曲カバー。また、プリンスが「ワン・オブ・アス」をカバーしてくれたことのお返しにと「リトル・レッド・コルヴェット」をカバーしたりもして、自分はそこでちょっと泣きそうになった。

そういえばジョーンは2007年に『Breakfast in Bed』というアルバムを出していて、そこではビル・ウィザーズやホール&オーツの曲をカバーしてもいたが、そのように自分が「名曲!」と思ったものをカバーしつづけるところにも音楽愛と信念が反映されているよう。その最近の素晴らしい成果が昨年9月に発表した最新作で、タイトルは『Songs Of Bob Dylan』。ずばり、ボブ・ディランのカバー集で、彼女らしい深い洞察力と解釈力に改めてうならされるアルバムだ。とりたてて新しい解釈で曲をよみがえらせようなどと気張っているわけじゃないが、感情を込めて歌っているだけで、そこに深みが出る。つまりそれこそが彼女のボーカルの魅力であることが伝わってくる。

さて、その新作『Songs of Bob Dylan』で再びアメリカでの評価が高まっているジョーンのとても喜ばしい日本公演が、4月の初めに3日間、今回もコットンクラブで行われるわけだが、なんと各日1stショーと2ndショーで異なるコンセプトになるそうだ。いずれもキーボードとギターでサポートするのは前回公演同様キース・コットン(『Songs of Bob Dylan』でも腕を振るっていた)だが、1stショーでは新作『Songs of Bob Dylan』にちなんでボブ・ディランの楽曲を歌唱。題して「JOAN OSBORNE SINGS THE SONGS OF BOB DYLAN featuring KEITH COTTON」。一方2ndショーは「JOAN OSBORNE SINGS A SELECTION OF ORIGINAL WORKS featuring KEITH COTTON」と題し、自身の代表曲を中心とした内容になるとのこと。なお、コットンクラブでは「2shows 通し券」も発売されている。もちろん自分は両方を続けて観たいと思っているところだ。

プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」(http://ameblo.jp/junjunpa)でライブ日記を更新中。

JOAN OSBORNE SINGS
THE SONGS OF BOB DYLAN featuring KEITH COTTON

公演日/ 2018年4月3日(火)-5日(木)
問い合わせ/ 03-3215-1555
所在地/ 〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2階
その他詳細はこちら
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/joan-osborne-1st/

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