紳士の雑学
スーツに合う鞄のタイプ12種類をまとめてみた
2018.03.06(最終更新:2020.04.08)
優秀なホテルマンは、鞄を見ただけで客人の人となりを判断できると聞く。男の装いにおいて、鞄はあくまでも脇役。しかし、道具として納得できるかという視点から吟味されたモノであるゆえに、持ち主の仕事観、ひいては人生観を雄弁に物語る、自身の分身という役目を担うことも忘れずに──。
Style 代表的な意匠8選
【01】<ATTACHE CASE> アタッシュケース
錠前付きの箱型書類収納用ケース。革素材に木枠のフレームの作りが本格派だが、アルミ合金や樹脂など多様なタイプが存在する。通常、開閉時は横置きにする。また、内装は書類をファイリングできるように仕切りが設けられている。アタッシェとはフランス語で大使館員や駐在武官・書記官のこと。彼らに愛用されたことが名称の由来とされる。
【02】<BRIEF CASE> ブリーフケース
スーツに合うカバンの代表といえばブリーフケースだろう。書類用鞄の総称として、広義にはアタッシェケースやダレスバッグなどもこれにあたるが、一般的には薄マチの鞄を指す場合が多い。ブリーフとは指令書や訴訟書類の意味。近年は持ち手が2本のファスナータイプが人気だが、開口部がかぶせタイプの伝統的なものや、ショルダータイプもある。A4用紙を折らずに収納できるサイズが多い。
【03】<CLUTCH BAG> クラッチバッグ
クラッチとは、しっかりとつかむという意味の英語で、提げ手やショルダーストラップなどがなく、手に抱えて持つ鞄をこう呼んでいる。広義にはポーチと呼ばれる小物収納用の小型バッグもそのひとつ。また、内装に書類用の仕切りなどがあるディテールの三方がファスナーで大きく開く二つ折り式のクラッチバッグは、特にポートフォリオと呼ばれる。
【04】<DULLES BAG> ダレスバッグ
書類用鞄のひとつ。口金式開口部がガマ口状に大きく開き、書類の出し入れが容易。マチ幅が広く大量の書類を携行可能。中央の錠前のベロも特徴的。1950年代の戦後激動期にたびたび来日したダレス米国国務長官がこの鞄を愛用。これに着目した銀座の老舗鞄店が製作販売時に命名した。正式名はトップフレームブリーフケース。ドクターズバッグとも呼ばれる。
【05】<TOTE BAG> トートバッグ
角型袋仕立てで2本手ハンドルのシンプルな鞄。トートとは持ち運ぶという意味の英語で、もともと氷のブロックを運ぶ目的に使われた。素材はキャンバスが典型だが、革やフェルト、ナイロンなど多様なものが用いられ、軽量で丈夫なものも数多い。大きな開口部と幅広のマチが生み出す使いやすさも相まって、近年、多くのビジネスマンの支持を集める。
【06】<BOSTON BAG> ボストンバッグ
1920年代に米国ボストン大学の学生が愛用したことから命名された、ポピュラーな小型旅行鞄。当時のものは学生が求めやすいカジュアル志向のものであったが、現在ではやわらかな革を用いた上品なスタイルも数多く見かける。底は長方形で、持ち手は2本。1気室構造なので出し入れが容易なうえに、収納力も高い。短期間のビジネストリップに最適。
【07】<TRUNK> トランク
19世紀半ばに西欧王侯貴族の船旅用として登場以来、長い歴史をもつ旅行鞄の代表格。かつてはフレーム構造で鉄張りといった重厚なものだったが、技術革新とともにファイバーやアルミ、ジュラルミンといった素材を用いた軽量堅固な現代の形へと発達した。特に20世紀初頭に台頭したファイバー製トランクは、劣化も少なく人気だ。
【08】<CARRY CASE> キャリーケース
2ないし4個の車輪が付属し、牽引して持ち運べるバッグ。ほとんどは伸縮して後胴に収まる持ち手を備える。高密度ナイロンやポリカーボネート、アルミなど軽くて丈夫な素材が主流。サイズに大小あるなか、機内持ち込み可能なものは航空機での移動にとても便利だ。また大量の荷物を容易に持ち運べるので、昨今では街なかでの人気も高い。トロリーケースとも呼ぶ。
そのほかの代表的なカバン4選
【01】<SHOULDER BAG> ショルダーバッグ
肩がけ鞄の総称。ショルダーストラップで肩がけにすることで手が自由になり、たすきがけにすれば身体にしっかりとホールドできる。用途に応じてさまざまな素材や形状のものが見られ、なかにはハンティングやフィッシングなどのフィールドスポーツ用に開発されたものや、フォトグラファーといった特殊な職業用に開発された、独特な機能をもつものもある。
【02】<MESSENGER BAG> メッセンジャーバッグ
自転車便配達員のツールとして開発されたショルダーバッグ。前胴前面を覆い隠すような大きなフラップが特徴。斜めがけにして背負う使用法が前提で、アクティブな走行でも鞄本体が動かないように補助ストラップを備えるものが本格派。最近では、小型化や機能の簡略化で汎用性を高めたものも増え、シティバイカーのニーズを満たしている。
【03】<BODY BAG> ボディバッグ
近年急速に使用者を増やしているショルダーバッグのひとつ。一本のショルダーストラップを斜めがけで使用するのが基本。体に沿うような作りからこう呼ばれる。一見ウエストバッグと似た印象だが、開口部やポケットなどの各仕様は斜めがけ用に設定されている。両手を空けていられることが利点。ポケットが少ないアウター着用での外出時に重宝する。
【04】<RUCKSACK> リュックサック
リュックは背、サックは袋を意味するドイツ語の英語読みで、背負い鞄を指す呼称。本来は帆布製の登山用であったが、米国製フレームパックに押され需要は低下。ところが、薄手の革を用いたエレガントなものや、高密度ナイロン素材の軽量高機能製品の登場で、いまやタウンユースの人気アイテムとして復権を果たしている。
出典:永久保存版「スーツ」着こなし事典(朝日新聞出版)