腕時計
SIHH2018 ジュネーブサロン・レポート
フランク ミュラー
2018.03.16
新作時計の初春到来を高らかに告げる恒例の「SIHH(ジュネーブサロン)」が1月15日から19日まで開催された。昨年は毎年3月に実施される「バーゼルワールド」からジラール・ペルゴとユリス・ナルダンが移行。今年もエルメスが新しく参加したほか、カレ(Carré des Horlogers)と呼ばれる特設会場に17ブランドが出展。大型パビリオンを構える18ブランドと合わせて、過去最多となる35ブランドが競演した。ラグジュアリーな雰囲気の中で静かな熱気が漂う会場で発表された新作から、魅力的なモデルを紹介していこう。
不朽の傑作「マスターバンカー」を「ヴァンガード」に搭載
マスター オブ コンプリケーション(複雑時計の達人)とも謳われるフランク・ミュラーが1992年に設立したブランド。SIHHの開催期間に合わせて、ジュネーブ郊外に立地する自社工房「ウォッチランド」でフランク ミュラー グループとしての新作展示会を行ってきた。
流麗な曲面で構成された「トノウ カーベックス」が、世界的な人気を誇る代表的なコレクション。近年は、このコレクションの次世代モデルとして展開した「ヴァンガード」のラインアップが充実しており、レディスも含めてバラエティが急速に広がってきた。今年の新作でも、1996年に発表された独創的な「マスターバンカー」をスケルトンとして搭載した「ヴァンガード マスターバンカー スケルトン」が登場している。
フランク・ミュラーの友人による「瞬時に世界の金融市場の時間が読み取れる時計があれば」という一言で発想したモデルであり、1つの自動巻きムーブメントで3か所の異なるタイムゾーンの時刻を表示するコンプリケーションだ。それぞれのタイムゾーンに時針と分針があるだけでなく、これらを1本のリューズで調整できることが画期的だった。この特許取得のメカニズムを「ヴァンガード」のダイナミックなケースに移植するだけでなく、スケルトンにすることで現代的な造形美を表現。3つの時間帯の視認性も優れており、シンプルで実用的な「マスターバンカー」の卓越性をそのまま継承した魅力的な新作だ。
また、1931年に初めて開発された宇宙服をデザインモチーフとした「スカファンダー」が「ヴァンガード」のファミリーに追加された。100m防水なのでダイバーズではないが、機能美を強調した武骨で剛健なスタイルが特長。ケースの9時位置側面にあるプッシュボタンでインナーリングが回転。オレンジ色の三角マーカーを分針に合わせれば、経過分を読み取れる。
掲載した商品はすべて税抜き価格です。
問/フランク ミュラー ウォッチランド東京 03-3549-1949
プロフィル
笠木恵司(かさき けいじ)
時計ジャーナリスト。1990年代半ばからスイスのジュネーブ、バーゼルで開催される国際時計展示会を取材してきた。時計工房や職人、ブランドCEOなどのインタビュー経験も豊富。共著として『腕時計雑学ノート』(ダイヤモンド社)。