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そろそろ手に入れておきたい、大人のための紳士傘
2018.06.18
名作『雨に唄えば』の劇中でジーン・ケリーは恋が始まる喜びをこう表現する。「外は大雨でも心の中にはお日様が照っている」。とはいえ、心躍る出会いでもなければ、なんとなく憂鬱(ゆううつ)なのが雨ばかりの梅雨の季節。そんなときにはお気に入りのレインウエアに身を包めば少しは心が晴れるかもしれない。憂鬱なムードを一新してくれそうな、厳選の雨用アイテムを紹介しよう。
井上陽水の『傘がない』はあまりにも有名な曲だが、この時季、何はなくとも傘がなければ始まらない。ビニール傘で十分などと言わず、大人ならばいい傘を一本持っておくべきだ。開いたときの小気味よい音や感触は、背筋までピンと伸ばしてくれる。何より失くさないように大切に扱うことで、ぐっと愛着が増してくるはずだ。
銀杏の葉を合わせたような不思議な形は、ニュージーランド発のブラントの傘。この傘がすごいのは空気力学的に計算されたフォルムにより、どんな暴風雨でも裏返ることなく、軽々と持つことができるという点。傘が発明されて以来、ほとんど変わることのなかったデザインに真っ向勝負を挑んだ、まさにエポックメーキングなアイテムと言えよう。¥6,500/ブラント(サエラ 03-6416-9910)
鮮やかなワインレッド地に、ネイビーの小花柄をあしらった折り畳み傘は、イタリアの老舗ブランド、マリアフランチェスコの一本。天然木の節や、木目の表情を生かしたハンドルは職人によるハンドメイドならでは。その芸術的とも言える品質は古くからヨーロッパにおいて、傘は親から子へ受け継がれるというストーリーに圧倒的な説得力を与えてくれる。¥29,000/マリアフランチェスコ(コンドッティ 03-6427-9277)
王家、ブルボン家のステッキ製作からブランドが始まった、同郷ナポリにある老舗傘店マリオ・タラリコとの別注したダブルネーム傘。その美術工芸品にも例えられるクオリティーは、天然木を手で曲げて成形するハンドルや、先端のチップに用いた牛角などからも見て取れる。およそ取り回しに優れているとは言い難いずっしりとした重みは、紳士への通過儀礼と考えればそれも納得だ。¥63,000/マリネッラ ナポリ(マリネッラ ナポリ 東京ミッドタウン 03-6721-1070)
1868年の創業以来、イギリス王室御用達として知られる由緒あるブランド、フォックス アンブレラ。トラッドムードを醸す正統派のブラックウォッチ柄に、ハンドルには野趣あふれるクロコスタンプを組み合わせるなど、その卓越したセンスは伝統にあぐらをかかない先進性が垣間見える。閉じたときの美しい細身のシルエットは、まさに端正そのもの。¥44,280/フォックス・アンブレラ(トゥモローランド 渋谷本店 03-5774-1711)
創業70年を迎える高級洋傘ブランド、前原光栄商店。機織り機での生地作りに始まり、加工の工程に至るまで、それぞれ専門職人の手によって丁寧に作られている。開いたときに最も美しいとされる10本骨の傘は、大判でありながら軽量なのが特徴。シックなストライプ柄や天然素材を使った手元のパーツなど、徹底した美意識を感じさせる逸品。¥24,000/前原光栄商店(日本橋三越本店 03-3241-3311)
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Photograph:Yoshinori Eto
Styling:Tomohiro Saitoh(GLOVE)
Text:Tetsuya Sato