お酒
少量生産者のキリっと辛口、
スペイン産「グリモウ カヴァ トランカディス」
[今週の家飲みワイン]
2018.07.06
1月から連載の始まった「今週の家飲みワイン」では6つのぶどう品種を紹介してきたが、今月からは国別に気になる4本を国際派のソムリエ 梁世柱さんにセレクトしてもらう。いわゆるニューワールド(新世界)と呼ばれるアメリカ、チリ、オーストラリアなどに加え、これまで世界的に評価の偏っていた国やエリアにも注目。いま飲みごろの4本を各国から選んでもらうことで、新しいワインの潮流が見えてくる。
今月、梁さんがチョイスしたのはスペイン。「ぶどう畑が広がっていながら、これまではリオハなど一部のエリアやぶどう品種しかグローバルに取り上げられてこなかったため、逆に昔のままの、いわば打ち捨てられたような畑が多く残っていました。意図せずオーガニックの状態のまま放置されているようなところも。そんな状況に若い世代の造り手が注目し、ワイン産地としての価値を再発見し、いまスペインでは、手をかけた丁寧な造りをする小規模生産者のワインが増えているのです。ところが、国際的な評価を得るにはまだ至っていないので、価格はリーズナブル。新世界のワインの価格も高騰しているいま、同じ値段帯のワインのなかでは、スペイン産のクオリティーが圧倒的に高いんです。そうした意味で、いま大注目の国ですよ」と梁さんは言う。
大きな変化が訪れているCAVA
CAVA(カヴァ)とは、スペイン北東部カタルーニャ州のペネデスやバルセロナ周辺で造られているスペインのDOP(原産地呼称制度)に基づいた、瓶内2次発酵のスパーリングワイン。地下の暗いセラーで長時間熟成することから、CAVA=洞窟の名称がある。
これまでCAVAというと、フレシネのように大規模メーカーのものが主であったが、そうしたメーカーにぶどうを販売していた農家のなかに、自社で醸造して瓶詰めする生産者が出てきたのである。いわゆるシャンパンにおけるレコルタン・マニュピュランのような動きで、工業的な大規模生産から、小規模生産によるオートクチュールなCAVAの登場である。とはいえ、国際的な競争力がまだまだ高くないため、2000円前後で上質なものが手に入るといううれしい状況だ。「コスパのいいスパークリングを求めるならCAVAがファーストチョイスです」と梁さんも太鼓判を押す。
『グリモウ カヴァ トランカディス』は、ペネデスの家族経営のワイナリーが、アント二オ・ガウディの生誕150周年を記念して造ったカヴァだ。トランカディスとは、タイルを砕いて貼り付けるガウディ独特の技法の呼称。エチケットにも、砕いたタイルの図柄がモダンにあしらわれ、いかにも新しいカヴァの潮流を感じさせる。
また、シャンパーニュやスパークリングワインは、通常、発酵によって分解された糖分を補うために最後に甘いリキュールを加えて味の調整を行う“ドサージュ”をするのが一般的だが、トランカディスはノン・ドサージュの、ブリュット・ナチュレ。非常にキリッとしたシャープな味わいだ。サーモンや生ハムのようなスパークリングワインに鉄板の前菜はもちろん、刺身や寿司などとも相性のよさを発揮してくれる。そしてこれが1700円前後というのだから、いますぐに試してみたい。
Photograph:Reiko Masutani