旅と暮らし

日本最高位は17位「傳」、世界のベストレストラン50

2018.07.19

写真・図版 小松宏子

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いまやミシュランとその勢力を二分するレストランランキング「世界のベストレストラン50」。その名のとおり世界1位~50位のレストランが発表されるアワードが、去る6月19日、美食都市スペインのビルバオで開かれた。

このランキングは世界26の国と地域の1000人超の食のプロの投票によって決まる。事前にノミネートされた50のレストランのシェフがタキシードやドレスをまとって一堂に会する、アカデミー賞さながらの華やかなアワードだ。ビルバオは三つ星レストランの多さだけでなく、古くからのバル文化や男性中心の「美食倶楽部」など、独自の食文化を誇るバスク州ビスカイア県の中心地。盛り上がりは最高潮に達した。

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イタリア・モデナの「オステリア・フランチェスカーナ」が1位に返り咲く!

ベストレストラン50は、世界評議員たちが過去1年半以内に訪れたレストランのなかでも最も感動したレストランへの投票によって決まるため、アワードの開催地のレストランのランキングが跳ね上がる。昨年の開催地はメルボルン、その前がNYだった。影響は当然大きい。また、公正を期すために評議員の入れ替えが義務付けられており、そのためのランキングの入れ替わりも激しく、それがまた醍醐味のひとつにもなっている。本命不在と言われた今年のアワードで、果たして1位は? シェフたちは少しでもあとに名前が呼ばれることを祈りながらその時を待つのである。

1位~5位の残り5枠を残して、いまだその名が残るレストランは昨年1位のNY「イレブン マディソン パーク」、昨年2位の「オステリア・フランチェスカーナ」、過去2回1位のスペイン「エル セジェール カンロカ」、昨今とみに高評価なフランス・マントンの「ミラズール」。そしてアジアの星「ガガン」。

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「ガガン」

その栄冠は、マッシモ・ボットゥーラ率いる「オステリア・フランチェスカーナ」の上に輝き、一昨年に続く2度目の世界一となった。昨年1位の「イレブン マディソン パーク」は5位にとどまり、「ガガン」が4位と、アジア勢が初めて5位以内に入る快挙を成し遂げた。3年連続アジアで1位という圧倒的な強さを誇るガガンの人気は、世界のすみずみにまで波及していることがよくわかった。マッシモはマダムとともに壇上に上がり、昨年1年間のスタッフの努力への感謝を述べ、イタリア食文化を礼賛した。

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    「傳」の店主・長谷川在佑さん
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日本人の最高位は17位「傳」。ハイエストクライマー賞を受賞!

日本人の最高位が17位というのは、美食の国を誇る日本人としては不本意ではあるが、受賞した「傳」がハイエストクライマー賞(昨年から最も順位を上げたレストランに与えられる賞)!」も同時に受賞したことは、大変に喜ばしい、世界へ与えるインパクトも大きいと思われる。「傳」は昨年の45位から28も順位を上げてランクインしたのである。2年前のNY大会で、枠外ながら初めてONE TO WATCHという注目賞を取って、ベスト50に顔を出して以来の急上昇だ。順位の躍進に加えて、2度の壇上でのパフォーマンス。やはり、店主の長谷川在佑さんは“持っている”のである。ブラックタイがドレスコードのパーティーにあっても、いつものコックコートで登場し、その下に着た愛犬プチをプリントしたTシャツを披露し、喝采を浴びる。世界中のシェフと交流し、コラボやポップアップレストランを重ねて認知度を高めてきた「傳」の努力の結実である。

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「NARISAWA」の成澤由浩シェフ

NARISAWA22位、日本料理龍吟41位にランクイン

そのほかの日本勢で今回ノミネートしていたのは「NARISAWA」 と「日本料理 龍吟」の2軒。いずれも、日本が世界に誇るトップレストランだ。「日本料理 龍吟」は41位、一昨年以来のうれしいカムバックである。スクリーンには、会場の声援に応えて投げキスをする、嬉しそうな山本征治さんの姿が映し出された。ちなみに10年営んだ六本木店を閉じ、この8月に新名所・日比谷ミッドタウンに移転が決まっている。席数も増え、世界のフーディーズもより来店しやすくなり、今後の活躍が一層期待される。もうひとりの重鎮である成澤由浩シェフの「NARISAWA」は22位にランクイン。昨年の17位からややランクダウンしているものの、“里山キュイジーヌ”を掲げ、日本の食材や風土の魅力を発信しつづけるトップシェフとしての重責を見事に果たしたと言えよう。

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「日本料理 龍吟」の山本征治さん

アワードの冒頭で発表された51位~100位のなかではアジア3位の川手博康シェフの「フロリレージュ」が59位、生江史伸シェフの「レフェルヴェソンズ」が92位に入った。アジアのベストレストラン50の3位「フロリレージュ」でさえ世界の50位以内に入れないという現実は、投票権を持つ欧州、南北アメリカの評議員が、あまり日本に食べに来ていないということも原因だろう。今後は、アジアのベストレストランを日本で開催するなど、評議員の誘致を積極的に考えなければいけないとも思わされた。

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「フロリレージュ」の川手博康シェフ

食文化を築いてきた食の巨人たちへのリスペクト

50位~1位までのランキング発表の間に、各スポンサーからのアワードも用意されている。なかでも全員が最も敬意を表するのが、LIFEA CHIEVEMENT AWARD=功労賞である。過去にはアリス・ウォータース、ジョエル・ロブション、アラン・デュカス、ヘストン・ブルメンタールなど、時代を変えてきた革命者に贈賞されている。今年は、ペルーを美食の先進国にした立役者「ガストン」のガストン・アクリオ氏が晴れて受賞。食を観光資源のひとつに掲げ、食のレベルを上げることが自国の発展につながると、ガストロノミーをクリエイトすることに邁進(まいしん)。飲食業界に雇用を生み出すなど、社会への貢献度も高く、将来は政治家にと言われるほどの人望の持主だ。

また、今年からの新しい試みとして、アワードの前にこの1年間に亡くなられた食の偉人への追悼が行われた。まず、今年6月に自ら命を絶った、シェフであり「キッチン・コンフィデンシャル」などのベストセラーで知られる作家のアンソニー・ボールディン氏。業界に衝撃が走った彼の死が、今回のプレアワードを作らせたのではないかと推測する。続いて、ヌオーヴァ・クッチーナ・イタリアの先駆者グァルティエロ・マルケージ氏、そして50年以上三つ星を保持したポール・ボキューズ氏。会場は彼らのもたらしてくれたものの上に、現在のガストロノミーがあることに深く感謝し、冥福を祈った。

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    「ガストン」のガストン・アクリオ氏
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    ポール・ボキューズ氏

FOOD MEETS ARTを掲げた、2018世界のベストレストラン

ビルバオといえば、現代建築の巨匠フランク・ゲーリーによるグッゲンハイム美術館をシンボルとするアートの街でもあることもあり2018年のベストレストラン50にも、“FOOD MEETS ART”というテーマが流れている。アワードの前日に行われたトークセッションはグッゲンハイム美術館で行われ、登壇者はマッシモ・ボットゥーラ、12位に順位を上げたフランスのアラン・パッサール、イタリアデザイン界の重鎮、ジュリオ・カッペリーニ、ポルトガルの女性アーティスト、ジョアンナ・ヴァスコンセロスの4人。フードもアートも進化するにはクリエイティビティーが必要と熱く語り合った。

アワード前後のパーティー会場でのフィンガーフードのプレゼンテーションもいつになくアーティスティックで、スパニッシュクラフトジンを使ったミクソロジーカクテルなどが演出に花を添えた。アフターアフターパーティーの会場はなんとサッカーの競技場。受賞シェフが店名入りのサッカーのユニフォームを着るという、スペインならではのホスピタリティーはさすが。翌日のブランチはグッゲンハイム内のレストラン「ネルア」でジャズバンドの生音を聞きながらの立食と、首尾一貫、フード&アート両方の側面から、バスクの魅力を世界中にアピールするアワードとなったことは間違いない。

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