お酒
ギリシャ内陸の魅力を象徴するエレガントな赤ワイン
ドメーヌ・ダラマラ/ ナウサ ダラマラ [2015]
[今週の家飲みワイン]
2018.08.17
ギリシャの3本目は、複雑な地形を有するギリシャの内陸部の赤ワインだ。島や沿岸部とは異なり、赤ワインにおいて本領を発揮する。ドメーヌ・ダラマラが位置するナウサは、ギリシャ北部のマケドニア地方の中央に位置する古くからのワイン産地。
マケドニア地方と言えば、6500年も前から、つまりぶどうの栽培が始まる前から、地ぶどうによるワインが造られてきた、世界最古のワイン産地の一つでもある。そのなかでもナウサ地方は、ギリシャ原産地呼称制度O.P.A.P.を最初に取得した、伝統のエリア。ギリシャの地ぶどうのなかでも、最も魅力的な黒ぶどうクシノマヴロの産地としても知られる。地域一帯を見下ろす、ヴェルミオン山によるミクロクリマ(朝夕に吹く冷涼な風)のおかげで、ぶどうにキリっとした酸が備わるのも特徴だ。
「ワイン産地としての長い長い歴史をもちながらも、近代的なワイン造りでは遅れを取っていたギリシャが、国際的なワイン市場で注目を集めるようになったのはこの10年ほどです。そのなかでも、最も期待されているワイナリーの一つが、このドメーヌ・ダラマラです。前々回に紹介したキリ・ヤーニと同じ、クシノマヴロを100%用いながらも、キリ・ヤーニが国際市場を見据えた都会的に洗練されたワイン造りで成功したのとはまた異なるベクトルで、純粋なワインとしての進化や洗練を求めた結果がこの一本です。肩の力の抜けた、ナチュラルなワイン造りを目指しながらも、華やかな香りと豊かな果実味をもつ、エレガントな飲み口のワインを造ることに成功しました」と梁さん。
造り手のダラマラス族は、1840年よりナウサの地で5代にわたってワイン造りと蒸留酒造りに専心してきた、歴史あるワイナリー。現在は、フランスのボーヌの醸造学校を卒業後、ブルゴーニュや南仏のドメーヌでワイン造りの修業を積んだ、6代目の息子、コスティスに受け継がれつつある。ぶどう栽培はすべてヴィオディナミ農法に切り替えられ、ストレスのかからない、無理のない抽出で、クシノマヴロというぶどうの本質的な魅力を引き出すためのワイン造りを実践している。
「グラスに顔を近づけると、ふわりと香るベリー系の香りにまず魅了されます。アルコール度数が12.5%と低めなので、するりとのどを通り、体に染み渡るような滋味が広がります。華やかなのに飲み疲れしない、癒やされる味わいに仕上がっているのがうれしいですね。だから、食中に飲むのも最適。シンプルに焼いたラムチョップに抜群の相性です。あっさりとした味付けの焼き肉やハンバーグ、肉と野菜の炒めものなど、家庭的な料理にもぴったりです」。梁さんお気に入りの一本だ。
Photograph:Makiko Doi