カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ29
猛暑で仕事のときも休日も超薄着になりがち。
気になる体形を解決するアイテムをピッティで発見しました。
2018.08.29
日本ではベスト、イギリスではウエストコート、イタリアではジレ(フランス語)もしくはパンチオットと呼ばれているこのアイティムが、30℃超えのピッティ会場でとても目につきました。
その理由は、Tシャツやシャツの上に着るとコーディネートが急にトレンディーに見えるから。そして、体形もうまくカバーしてくれるからのようです。暑いからといってTシャツやシャツを1枚しか着ていていないというのは、ファッション業界人にとってあるまじき姿勢!?と考える人が多いピッティでは、カジュアルすぎず、かといってジャケットを着るほどかしこまらないし、涼しいというところがウケたようです。
お盆を過ぎても猛暑が続く日本、いつものTシャツやシャツ1枚コーディネートをたまにはイタリアのように変えてみませんか。ただ1枚羽織るだけでおしゃれに見えて、体形をカバーできるのですから!
この御仁は、ピッティのなかでもモードの流行を採り入れた少数派。
着こなしのポイントは、全身をネイビーでそろえたところ。こうすることで、Tシャツとベストが一体化しシャープで都会的に見えています。よく見ると、ベストはWブレストですね。そして、ボタンはいちばん上しか留めていません。ここを、全部留めてしまうと、見た目にかっちりしすぎで、Tシャツのラフな感じが消されてしまいます。ベストのボタンの留め方は、実はカジュアルな着こなしのときの隠れたポイントだったのです。この御仁も、ボタンを留め忘れたのではなく、あえていちばん上だけを留めているのです!!
上半身は一見超カジュアルに見えますが、腕元の時計をクローズアップして見るとなんとロレックスの金☓ステンレスのコンビ。ヨーロッパのファッション関係者は、カジュアルなスタイリングのときにこうした高級スポーツ時計をしてコーディネートに気品をさり気なくプラスしています。ちなみにスーツでドレスアップしたときは、逆にアップルウォッチで抜くといった粋な組み合わせがはやっています。
全身はこんな感じです。足元は白のスニーカー。パンツの股下の長さもかなり短め。素足履きでくるぶしを見せることで、下半身が上半身のカジュアルな感じとほどよくマッチしています。もしこのくるぶしが見えてないと、スニーカーのスポーティーな感じがここまで強調されないと思います。
こちらの年配の御仁もWベストにTシャツというスタイリング。先に出たネイビーのベストの御仁とはイメージがかなり違いますが、実は共通した着こなしをしています。どこかわかりますか?
それは、ベスト、パンツ、Tシャツのトーンをまとめているところ。この年配の御仁は、茶、ベージュ、白という相性のいい組み合わせです。先ほどベストの着こなしで触れたように、この御仁もボタンは上と下を留めず、真ん中1個だけとめています!!
時計はモーリス ラクロア。この時計もかなりこだわりの詰まった機能がついていますね。それにシルバーのブレスをさりげなく合わせています。イタリアの男性は、ブレスレットやミサンガのような手首につけるアクセサリーがとても好きです。逆にピッティに来るイギリスやフランスの方は、あまりこの手の物はつけない傾向があります。
全身はこのとおり。靴ひもは、ご自分でマスタードイエローに替えていると思うのですが、ダークブラウンのトラッドなデザインの靴をポップでカジュアルな雰囲気に変えています。ちなみにこの御仁も、ソックスを履かないで、くるぶし見せをしていますね。
今回のラストバッターはこの方。Tシャツにベストはこんなふうにも着られるというお手本。おなかがちらっと見えていますが、これも彼女の計算。男性のくるぶし見せと同じように、ちらっと肌見せは夏のピッティに欠かせない着こなしテクニックだったのです。
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi