旅と暮らし
初ポーランドがいい思い出となる、創業117年のクラシックホテル
2018.10.18
Hotel Bristol, a Luxury Collection Hotel, Warsaw
(ホテルブリストル,ラグジュアリーコレクションホテル,ワルシャワ)
ワルシャワ/ポーランド
ポーランドという未知の国に初上陸!
今年の夏、ずっと行きたかったポーランドを初めて訪れた。訪れたのは首都ワルシャワと古都クラクフ。そこで、今回はワルシャワ、次回はクラクフのホテルを紹介したいと思う。
ところでポーランドは多くの人にとって未知な国のはず。私も完全アウェーだったが、訪れたい明確な理由が4つあった。
・10年前に見たBS世界のドキュメンタリー「温かいスープを召し上がれ~ポーランドのミルク・バー」がツボで忘れられない。
・アウシュビッツの日本人ガイド、中谷 剛さんの話を聞いてみたかった。
・スペインで大好きなステーキ屋さんが、ポーランド牛もときどき仕入れていると話していたから。
・日常的にポーランド政府観光局の広告を見る機会があり、「キラリときめくマイストーリー ポーランド」という言葉に影響されていった。
行く理由が十分にあったのだ。
さて、なんとなく予想はしていたが、首都といえどもワルシャワはいわゆる5つ星ホテルの少ない街だ。そもそも、ポーランドの物価はヨーロッパのなかでは群を抜いて安い。例えばおしゃれでおいしいステーキ屋さんでも、ステーキが100g 500円〜、タルタルはひと皿1000円という超お手頃価格(クラクフのEd Redという店)。ワルシャワでUberに乗って400円を超えたことはない。もう、冬にでももう一回行きたい!
というわけで、ホテルもパリやバルセロナと比べると断然安い。まずは大手の宿泊予約サイトでワルシャワのホテルの様子を見て、次にマリオット・インターナショナルのHPでどんなホテルがあるかを探した。
ワルシャワで頼ったのはマリオットだった
世界最大のホテル企業であるマリオット・インターナショナルなら、確実にワルシャワにもいくつかのホテルがある。いまや全世界に30ブランド、6700軒のホテルを有するのだ。
それに、マリオットのポイントプログラムである「マリオット リワード」は還元率が最大10%(1米ドルあたり)! 選択肢が広くて泊まるほどにお得なので、未体験の人は試しに一年、旅先ではマリオット系列に泊まってみてはどうだろうか(逆に、いままで泊まったホテルがマリオット ブランドだったのに、それに気づかず他サイトから予約してポイントを貯めずにいたのではもったいない)。
さておき、今回ワルシャワにあったらいいなと思っていたのは、「ラグジュアリーコレクション」か「オートグラフ コレクション ホテル」に加盟するホテル。マリオットのHPでワルシャワを検索すると6軒のリストが出てきた。
そのうちのひとつが、「ホテルブリストル,ラグジュアリーコレクションホテル,ワルシャワ」で即決。「ラグジュアリーコレクション」とは、その土地で最も魅力あるホテルを世界中から選りすぐった、ホテルのセレクトショップのようなものだ。
ワルシャワで117年間、絶対的存在で在りつづけるホテル
「ホテルブリストル,ラグジュアリーコレクションホテル,ワルシャワ」(以降、ホテルブリストル)の歴史は長い。創業は1901年。創業者はポーランドが誇るピアニストで政治家のイグナツィ・ヤン・パデレフスキである。
19世紀の終わりごろ、ワルシャワの街は目まぐるしく発展していったが、要人を迎え入れるような真にラグジュアリーなホテルは存在していなかった。そこで、パデレフスキが「それはまずいだろ」と言ったかはわからないが、ワルシャワのさらなる活性を担う場として一流ホテルを造ったのだった。
それが、本当に正しい判断だった。創業から117年間ずっと、歴史に名を残すスーパーVIPが「ホテルブリストル」を訪れたのだから。
エリザベス女王、J.F.ケネディ、モナコ大公のアルベール2世、パブロ・ピカソ、オリバー・ストーン、ロマン・ポランスキー、ボブ・ディラン、ウディ・アレン、ビル・ゲイツetc. 。VIPからすればここ一択なので、連なる名前がすごい!
そのようなVIP御用達の5つ星ホテルに、私のような庶民も一万円台で泊まることができる。7月中旬、いちばん安い日で1万7000円ほどだった。ホテルの造りからすると信じられない価格だ。
初めてのワルシャワを満喫するうえで、ロケーションも抜群によかった。旧市街もショパン博物館も、お気に入りとなったバー「El Koktel」も徒歩圏内。隣は大統領宮殿という一等地に立つ。
ホテルは2012年に改装を終えたのち、「ラグジュアリーコレクション」に加盟。外観はネオ・ルネサンス様式のクラシカルなたたずまいだ。長身の紳士なドアマンふたりの間を通りホテルに入ると、そこは大理石で造られた瀟洒なロビー。
エレベーターは歴史を感じさせるむき出しのタイプ。4面の窓はクリスタル製で、当時このホテルにかけた気概を感じさせる。
部屋はデザインで個性を出すというより、誰が泊まっても快適なシンプルな造り。白を基調とし、気持ちのよいシーツとバスルームがあり、すべてが清潔。5つ星ホテルだからそれは当然なのだけれど、特にポーランドに来ると十分すぎるくらいぜいたくなことだなとも感じる。緑が見える公園側の部屋がおすすめだ。
創業当時から続くカフェで、まさかのサプライズが!
このホテルでいちばん好きだったのは、こちらの「カフェ・ブリストル」。
ホテルが創業した1901年からあるカフェで、壁にはパデレフスキはじめ当時のワルシャワの社交界の写真が貼られている。休みはなく毎日朝8時からオープン。朝、地元のおじさんがコーヒー片手に新聞を読んでいる姿もあったりして、クラシックかつのどかだ。自家製ケーキやコーヒーを楽しめる場所なのだけれど、ここでカプチーノを頼んだところ、奇跡が起きた。
富士くん!!! 実家の柴犬がラテアートに!
なんとこちらでお茶をしたポーランド美女が、私のインスタをみてサプライズで頼んでおいてくれたのだ。元画像があれば誰でも頼むことが可能。
余談だけれど、私は「SHIBAINU POLAND FCI」というFBの非公開コミュニティーの一員となっている。ポーランドのみなさんの柴犬愛はなかなかのもので、ワールドカップの日本戦で柴崎選手と乾選手をみては、「SHIBA+INUだ!」とコメント欄が盛り上がっていたのだった。
話は戻り、カフェの名物はミルフィーユ。ただ、夕方からバーラウンジでピアノのライブが始まるとのことで、そこでミルフィーユを味わうことにした。メニューにはないが、バーラウンジでもカフェのケーキを楽しめる。
ここでスパークリングワインを飲みながらミルフィーユを食べていると、雨が降ってきた。訪れた7月中旬はちょうど雨の時季で、タクシーの運転手さんにも「雨が多くてかわいそうに」なんて言われた。
また降ってきたな…と思ってたところ、ピアニストの方が『雨に唄えば』を弾きはじめた。これがなんとも軽快で美しくて、雨でも外に散歩へ行きたくなってくる。
その曲が終わったあとは、ビートルズの『イエスタデイ』。少しアレンジされたもので、本人が気ままに楽しく弾いているといった印象。ホテルの中にいるだけでもピアノが心に染みて、さすがショパンの国だ。
ケーキを食べ終えてホテルから徒歩10分の旧市街を歩くと、曇天がかえって趣があった。すでにワルシャワを好きになっていたから、どんな天気でも気にならない。むしろ、雨のワルシャワも見れてよかった。
デスクワークの合間に旧市街を散歩したり、雰囲気のあるカフェで休憩したり、おいしいステーキを食べたり、ときどき音楽を聴きに行く。次回はそんな過ごし方でのんびり一週間ワルシャワに滞在してみたい。その際は、また「ホテル ブリストル」に数日泊まれたら幸せだ。
プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。タイ、スペイン、南米に行く頻度が高い。最近のお気に入りホテルはバルセロナの「COTTON HOUSE HOTEL」。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。