旅と暮らし
結成45周年を迎えた異端のロックバンドが
2枚組の新作を携え、ヨコハマに帰還。
2018.10.24
常に異端であり続けた日本のロックバンド、外道。シングル「にっぽん讃歌」でデビューしたのは1973年10月のことなので、そこからもう45年が経ったわけだ。因みにギター&ヴォーカルの加納秀人が高校を中退してミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせたのは1968年のことなので、そこから数えると今年で50年。外道・結成45周年、加納秀人・音楽生活50周年。そんなアニバーサリー・イヤーであるゆえ、今年の動きは非常に盛んだ。
まず、今年1月に加納がセルフカヴァーなどを収録した50周年記念ソロアルバム『Thank You』をリリース。各地でレコ発ライブを行なった(ツアーの前半数日は加納がインフルエンザA型に感染して延期となったが、後日振替公演が行われた)。そして外道はといえば、今月17日に2枚組のニューアルバム『外道参上』をリリースしたばかり。
この新作、ディスク1には1974年に発表された外道の1stアルバムで日本ロック史に燦然と輝く名盤『外道』の再現ライブを収録(今年6月に東京・全労済ホール スペース・ゼロにて録音)。ディスク2には「ハイビスカス・レディー」「乞食のパーティ」「水金地火木土天回明」といった旧曲のセルフカヴァーに新曲を織り交ぜたスタジオ録音11曲を収録し、メンバー交代や長い休止期間はあったものの、なんだかんだで45年も続いてきた外道というバンドの、いかがわしくてギラギラしていて異端なのに開かれている唯一無二の魅力を余すことなく伝える作品になっている。
また、『外道参上』を携えてのロングツアーも間もなくスタート。各地ライブハウスが多いが、11月15日にはモーション・ブルー・ヨコハマで外道名義での2度目の出演が決まっている。カクテルなど飲みながら席に座ってじっくり今の彼等を観たい人には絶好の機会と言えるだろう。
自分が初めてライブを観たのは、1980年6月に開催された「晴美オーナイト・ロックショー」というイベント(RCサクセション、パンタ&ハル、JOHNNY, LOUIS & CHARらが出演)で、そのときは外道ではなく加納秀人のソロバンドだった。では初めてアルバムを聴いたのはいつだっただろう。確か17~18歳の頃に、大名盤と言われていた1stアルバム『外道』を買ったのが最初だ。
衝撃だった。とりわけ1曲目「香り」の始まり方にゾクゾクして、鳥肌が立つ感覚を味わいながらも血が騒いだ。聴いた人はみんなそうだったはずだ。そこに集まった不良たちのいかにも品のない野次や話し声でざわつくなか、怪人のような笑い声が繰り返し響き、突然空気を切り裂くようなギターリフで始まるそれは、曲と演奏の強度と共にそこに満ちた不穏な空気までもがビンビン伝わるものだった。絶対的に不道徳で、危険で、“やばい”ロック。あの時代(70年代半ば)特有の空気感がそこにまるごとパッケージされていた。
「あれはミッキー・カーチスさんが“今日の、録っときますから”と言って録音されたものなんですけど、おっしゃる通り、あの時代独特の危険な感じがそこに入っている。当時のミュージシャンはそれを肌で感じながら演奏していたわけで、それはどういうことかと言うと、演奏する上で精神的にも肉体的にも強くてしっかりしたものを持ってなかったら立ち向かえなかったってこと。そうじゃないとコンサートなんかやれなかった。あの頃のライブは1回1回が戦いでしたからね。いい演奏しないと、いろんなモノが飛んできますから。いまのミュージシャンといちばん違うのはそこだと思う。だから出てくる音も違うんですよ」
5年前にインタビューした際、加納はそう話していたが、そんな時代のなかでとりわけ外道のライブは鬱屈した若者たちの“もっとやばい刺激をくれ”といったエネルギーが渦巻いていた。暴走族のバイクが500台もライブ会場に押し寄せ、その後、出演拒否が相次いだりもした。バンドもバンドで、1974年の町田市民音楽祭ではわざわざ町田警察署の隣で演奏して「おまわりさん、楽しいですかー?」などと挑発的なMCをしたりした(その様子は『狂熱の町田ポリス '74』というアルバムにそのまま収められている)。衣装もド派手で、加納は妖しいメイクを施し、着物でギターを弾いていた。
ヴォーカリストとしての気づきと
揺るぎなきバンドアンサンブル
「誰かに似てるとか言われるのがとにかく嫌で、誰にも似たくなかった。だから外タレとやるってなったら、自分は着物を着てね。それがいつのまにかステージ衣装になっちゃったんだけど(笑)。で、ミック・ジャガーがステージで何メートルも動いて歌うって聞くと、だったらオレはステージ上を50メートル走ってやろうとか。そうやって可能性を広げていったんです。誰とも比べられないところを目指して戦おうと。とにかく、みんながこっちに行ったら、自分は逆を行きたいんですよ」(加納)
そのように異端であることの誇りをその時点で持っていた外道は、それから何度かの解散または活動休止と再始動を繰り返したわけだが、2010年に加納秀人、そうる透(ドラム)、松本慎二(ベース)という布陣になってからは、その揺るぎなきアンサンブルで音楽そのものの強度に力点を置きながらコンスタントに活動。
「最強ですからね、いまのメンバーは。本当に何かが始まった感じがしている。外道はまた新しく生まれ変わってるって実感するんですよ」と、5年前にその最強トリオで徹頭徹尾ロックンロールとブルーズに拘ったアルバム『Rocking The BLUES』を発表したときに話していたものだった。
また、そのとき、加納はこんなふうにも話していた。
「最近になって、“オレはヴォーカリストだったんだ”って気づいたんですよ。ひとに言ったら“加納さん、今頃何言ってるんですか?!”って言われたけど、自分はずっとギターとサウンドにばっか頭がいってたから、自分をヴォーカリストだとは意識していなかった。意識するようになったのは最近なんです。40何年間、気づいてなかった(笑)」
そう、いまの加納はギターはもちろん、歌がいい。深みと艶があるのだ。そして、そうる透、松本慎二のリズムセクションが一体となった音の太さと厚み。観ていて、トリオであることが信じられないくらいのグルーブに呑み込まれそうになる。
尚、今回のツアーは、場所によってドラムが佐々木真、または高木太郎になるところもあるのだが、11月15日のモーション・ブルー・ヨコハマはそうる透が叩く。結成45年にしてまたも進化を遂げ、動きが加速する外道。ヨコハマで現在の彼らのグルーブに呑み込まれてみてはいかがだろうか。
プロフィル
内本順一(うちもと・じゅんいち)
エンタメ情報誌の編集者を経て、90年代半ばに音楽ライターとなる。一般誌や音楽ウェブサイトでCDレビュー、コラム、インタビュー記事を担当し、シンガーソングライター系を中心にライナーノーツも多数執筆。ブログ「怒るくらいなら泣いてやる」でライブ日記を更新中。
公演情報
モーション・ブルー・ヨコハマ
『外道』
外道結成45周年記念アルバム『外道参上』レコ発ライブ
公演日/2018年11月15日(木)
料金/自由席 5,000円(税込) BOX席 20,000円+シート・チャージ 5,000円 (4名様までご利用可能)
※BOX席はインターネットからのみご予約いただけます
問い合わせ/045-226-1919(11:00~21:00)
所在地/〒231-0001
横浜市中区新港一丁目1番2号 横浜赤レンガ倉庫2号館3F
その他詳細についてはオフィシャルウェブサイトにて
http://www.motionblue.co.jp/artists/gedo/