紳士の雑学
そのひと手間で差がつく!
長持ちに欠かせないスーツのお手入れ方法とは
2018.11.20
スーツはビジネスマンのユニフォームにして戦闘服。安いものを1,2シーズンで使い捨てにするより、少々値が張ってもいい素材の品を手入れしながら着続けるほうが結局は経済的。ちょっとの手間をかけるだけで、スーツはぐんと長持ちします。正しいケア、やってはいけないこと基本と心得を紹介します。
なぜ手入れが必要なのか
毎日のハードなビジネスは服にもダメージを与えます。汗の染み込み、ホコリの付着など、思った以上に汚れるもの。放っておくと型くずれやシミの原因となり、スーツの寿命を縮めてしまいます。もちろん、着こなしとして清潔感に欠けるのはNG。見た目だけでなく、雑菌の繁殖が匂いの元にもなります。
汚れたらクリーニングに出せば大丈夫! そんなふうに思っていませんか。これは必ずしも正しくはありません。確かにクリーニングは汚れやシミには効果的です。ただしクリーニングに使われているのは石油系の溶剤で、天然のウールを使ったスーツを頻繁に出すと生地を傷めます。特に大きな汚れがなければ、夏でも多くて2~3回、冬ならオフに1回で充分でしょう。とはいえ、それも適切な毎日のケアがあってのこと。わずかな時間でできる、ちょっとしたお手入れの数々をご紹介します。
スーツをきれいに長持ちさせるお手入れ術
1.スーツを脱いだらまずはポケットを空にしよう
スーツのポケットにあまりものを入れないほうがいいですが、それでも使うことは少なくありません。大切なのは脱いだ際に中のものを出しておくこと。財布や携帯電話のような重みのあるものは垂直に生地が引っ張られるため、型くずれの要因となります。かさのない定期入れやカードケースも長い目で見れば同様。また使ったハンカチを入れっぱなしにするのは不衛生の元です。着終えたスーツは、何も入れない買ったばかりの状態にすること。これは鉄則と覚えておきましょう。
2.型崩れしないようハンガーへ吊るす
ハンガー選びは正しい保管の要。クリーニング店から上がってきた細いハンガーにかけっぱなしでは、スーツが持つ大切な立体感が台無しになります。おすすめは肩のカーブに沿った厚みのあるもの。余裕があれば木製タイプが理想です。天然の木が持つ除湿効果で、スーツにこもった湿気を吸い取る働きがあります。スラックスもハンガーの下部にあるバーにかけるのが一般的ですが、余裕があれば専用のスラックスハンガーも便利です。
3.日々の手入れはブラッシングが肝心
スーツは一日着ているだけで思いのほか汚れます。ぱっと見はきれいでも、生地にホコリや汚れがたまっているもの。生地を傷めないように毛足の長いスーツ用ブラシで、こまめにブラッシングをしましょう。
4.アイロンがけのポイントとは?
日常的なスーツのヨレはアイロンで解決。立体的で難しいようでも、アイロン台をうまく使えば比較的おぼえるのは簡単です。ただしかけすぎでテカリが出ないように、高温を避けるように気をつけたいところ。ハンカチなどのあて布をするのも効果的です。
5.直射日光の当たらないところに収納しよう
季節の変わり目にはたまった汚れを落とすためにクリーニングへ。残したままだとカビやシミの原因となります。上がってきたクリーニング後の処置で間違えがちなのが、カバーとしてかかってきたビニール。これはあくまで商品の汚れ防止のためにお店側がかけていたもので、戻ってきたら不要です。すぐに風通しのいい場所で陰干しした後、防虫剤をつけたままクローゼットにしまいましょう。
クリーニングのしすぎは痛みの原因だった!
ウールは天然素材。過度の石油系のクリーニングは逆に生地の風合いを損ねます。ワンシーズンが終わる頃、また夏の汗をかきやすい時期も、よほど汚れがひどくない限りは月一回程度に。汗をかきやすい時期でも、上記の手間をマメにすることで持ちはかなり差が出ます。もちろん、毎日同じものというのは論外。できれば最低3着ぐらいでローテーションをしつつ、季節の変わり目で出すのがいいでしょう。
こんなときどうする? トラブル別の対処法
大きな汚れでなくても、小さなトラブルが日常茶飯事なのはスーツも同じ。後々にダメージ残さないように、ちょっとした工夫の応急ケアをご紹介します。
雨に濡れてしまった
天然の毛であるスーツは水にも比較的強いですが、それでも濡れっぱなしは型崩れや臭いの元。早めの処置の越したことはありません。雨に濡れたら、見落としがないようにハンガーにかけ、しみ込む前にタオルでふき取りましょう。この時、強くこするのではなく、軽く押さえるようにしてください。その後は風通しの良い場所で自然乾燥させましょう。
汚れが付着した
汚れにはジュース、インク、醤油などの水溶性、食べ物やボールペンなどの油溶性のものがあり、それぞれ処置の方法が異なります。前者は水を染み込ませてハンカチなどで叩くようにしましょう。後者は洗剤や漂白剤が有効ですが、汚れが取りにくく変化する恐れもあるので、手に負えないようであれば早めにクリーニングへ。
臭いをとりたい
汗の臭いは風通しのいい場所にこまめに干すことで結構軽減されます。また飲み会などでつきやすいのがタバコ臭。市販の消臭剤を使うのもありですが、もっと手軽なのはバスルームに吊るしておくこと。湿気が臭いを取ってくれます。湯を張っておくのもいいですが、翌日着用する場合は朝まで置きっぱなしにしないようにくれぐれも注意。全体が軽く湿った程度で出して陰干しに。
テカリが出てきた
生地によって差はあれ、日々の着用による摩擦でテカリが出てきます。スーツの表面の凹凸が無くなることで光を反射することが原因ですが、少しでもいい状態を長持ちさせるにはスチームアイロンが断然おすすめ。蒸気が繊維を起こし、立体感を保ちます。もちろん、いちばんの大敵は酷使。できれば最低3着ぐらいでローテーションをするのが、結局は経済的です。
まとめ
自宅でできるスーツのアフターケアは少なくありません。それを実行することで、確実に寿命は伸びます。スーツは生き物。正しい手入れを日課に、クリーニングの頻度を減らすことが結局はお得です。
・高価なスーツ一着より、適正価格のスーツ数着をローテーションで
・毎日のちょっとした手入れがスーツの寿命を延ばす
・クリーニングに頼り過ぎない。出すべき状態と時期をおぼえておく
Photograph:Tomoka Tanaka(kiitos)
Styling:Yukihiro Yoshida
Text:Mitsuhide Sako(KATANA)