紳士の雑学
Vゾーン ラボラトリー
プロローグ
2019.06.17
スーツスタイルにおける着こなしの“肝”と言うべきがVゾーン。ジャケット、シャツ、タイという最小限の要素からなる合わせの妙は、奥深き大人の知的遊戯であると同時に、見る人の印象を大きく左右する重要なポイントである。そこで今回、ネクタイの達人ことアイネックスの並木孝之氏を指南役に迎え、ネイビーベースのネクタイを軸としたリアリティーのある洒脱なVゾーンをご教示いただくことに。まずは本編のスタート前に、心構えとしてタイドアップすることの意義や、注意すべきポイントについて――。
ネクタイをきちんと締めることで相手に信頼感を与え、
自身の発言の説得力が増します
「私がネクタイを締め始めてから約30年近く、仕事としてネクタイに関わるようになってもう24~25年が経ちます。50歳を目前に控えたいま、これだけモノや情報があふれているなかで、自分が考える本当に格好いいVゾーンってなんだろう? と問いかけたときに、やはりネイビーベースのネクタイが絶対的なものだと気付きました。ただ残念なことに、ネイビーというものが皆さんのなかで当たり前になりすぎて、紙媒体しかりWEB媒体しかり、Vゾーンの特集となると、そのシーズンのトレンドと言われるような色を前面に押し出す現状を見て、ネイビーの重要性がいまひとつ訴求されてないなと感じたんですね。だから今回ネイビーを軸として、スーツとシャツは限られたものを使い、どれだけ幅広いコーディネートが組めるのかを提案しようと思います。
それからもうひとつ知ってほしいのが、Vゾーンを作るうえで、自分の体形に合ったジャケットとシャツを選ぶというのが本当に大事だということです。世の中、自分のサイズを見誤っている人が多いのがすごく残念ですね。せっかく上質なものを着てもネクタイのノットが台襟からはずれていたり、窮屈だからといって第一ボタンを開けるのは不格好です。それならいっそネクタイをしないほうが全然いいですよ。基準としては、既製品のシャツならネックサイズの実寸からプラス2cmと覚えておけば間違いないでしょう。あとは、ディンプルを含めたノットを立体的に作ることが重要です。これらのポイントを押さえておくだけで、だれが見ても上手な着こなしができるようになります」
ノットが台襟にピタッと着いた状態が、
私にとってのキックオフの合図
「相手がどんな職種の方であろうと、新規のお客さまにお会いする際は必ずタイドアップするのが私のルールです。自分という人間を理解、信頼してもらううえでも、私が話すことを納得してもらうためにも、やはりVゾーンというのは相手からすごく見られますし、大事なことだと思うからです。それにネクタイを締めると自分のなかで何かスイッチが入りますね。台襟にノットがピタッと着いた状態が、私にとってはキックオフの合図みたいなものですね。
街中を見渡して、クールビズと言いつつネクタイを必ず締めないといけない方もまだまだ多いように思います。こんな暑いなかでどうせ締めないといけないのなら、相手にいい印象を与えられたほうが絶対得ですよね。そんな方のために暑い日でもきちんと装いつつ清涼感を演出できるVゾーンをこれからお伝えしたいと思います。それができれば商談は半分くらい成功したようなものですよ(笑)」
次回からは、並木氏自らがモデルとなって、日替わりでVゾーンを紹介していく「Vゾーン ラボラトリー」の本編がスタート。ネクタイのなんたるかを知り尽くした達人が、ビジネスシーンで有用な合わせ方をレクチャーしていくので、ぜひお見逃しなく。
Photograph:Ryohei Oizumi(2S studio)
Styling:Takayuki Namiki, Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
Text:Tetsuya Sato