接待と手土産
すべて実食! 自慢の手土産。#34
「柿の葉すし本舗たなか」の柿の葉すし
2019.09.02
奈良・五條の風土が生んだ、手軽に食べられて誰にでも喜ばれる鮨。
気心しれた相手に鮨の折り詰めを贈ることがあるが、やはり鮨には特別感があるのか、頗る評判がよく、じわじわと頻度が増えてきた。とは言えやはり生ものなのでTPOは限られる上に、食べる時に箸や醤油も必要で匂いも気になる。そんなちょっと高めのハードルを越えられるのが、柿の葉すしだ。
柿の葉に包まれた小ぶりな鮨は、箸や皿を使わなくても、一口サイズでぱくりと行ける。握り鮨と違って崩れにくいのもいい。その上、柿の葉の抗菌効果で保存性に優れ、匂いもさほど気にならない。小腹が空いた時にちょっとつまめる便利なフィンガーフードなのだ。
柿の葉すしの歴史は古く、本場の奈良県にもいくつか有名店があるが、筆者のおすすめは、「柿の葉すし本舗たなか」だ。本店の味をそのまま届けるために、他県に工場は置かず、奈良で手作りしたものを東京まで運んでいる。できたてよりも味がなじんだ翌日が食べ頃とされる柿の葉すしにとって、配送時間はほどよい熟成時間になるのだ。塩角が取れてすし飯にネタの旨みと柿の葉の香りがしみ込んだ食べ頃の鮨を東京でも味わえる。
“ご飯を味わう柿の葉すし”にとって重要な米には、滋賀県東近江市の「日本晴」の特別栽培米を使う。酢を打ち、重石をきかせてもしっかりと粒が残り、ほどよい歯ごたえになる。ネタは定番の「さば」に「さけ」、「たい」を加えた3種類。特に鯖へのこだわりは強く、適度に脂の乗った胴周りの太い真鯖を仕入れている。脂は乗り過ぎていても塩が入りにくく、柿の葉すしには適さないのだそうだ。
味を決める最後の仕上げは重石。余分な空気を抜き、ネタとすし飯と柿の葉を圧着することで熟成が進む。角の取れたまったりとした旨みがあり、柿の葉の芳醇な香りのする鮨はどこかほっとさせる優しい味わいだ。
小ぶりな折り詰もあるが、手土産用には、吉野杉の間伐材を使用した特製木桶の詰め合わせがおすすめだ。見栄えもいいし、香りも良い。さらに抗菌効果がプラスされて、手土産としては申し分ない。柿の葉の名産地、奈良五條の風土が生んだ逸品。200年以上の時を経てもなお、郷土料理として受け継がれる食文化を、贈ってみてはいかがだろう。
松屋銀座本店(食品売場)
東京都中央区銀座3-6-1
営業時間/10:00~20:00
定休日/百貨店に準じる
価格/さば・さけ・たい3種詰合せ(特製木桶)20個入り4482円・30個入り6696円など ※価格は税込み
問/03-3563-0207
https://www.kakinohasushi.co.jp/
※都内は、他に西武池袋本店、京王新宿店、JR東京駅構内 駅弁屋 祭など
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Styling:Keiko Katanozaka
Edit & Text:Mayo Morino