カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ54
ビジネススタイルにまでスニーカーが浸透中!!
日本にもこのブームはやって来る!?
2019.09.09
2017年くらいからニューヨーク、パリのストリートから火がついたスニーカーブーム。気がつけば、パリのコレクションでもラグジュアリーなブランドが、最先端のモードスタイルにスニーカーを合わせるということを平気でやるようになってしまいました。90年代に起こったナイキのエアージョーダンのブームのときとは、その広がり方が明らかに違っています。
というか、ブームが収束する兆しがまったくなく、有名デザイナーやショップのナイキ別注モデルが出たかと思えば、ソックスタイプやトレイルランタイプなどの新しいジャンルのスニーカーが続々と出つづけていて増々勢いづいています。
ついには、アメリカに「ストックX」というスニーカーの株式市場の様なプラットフォームができる始末。ここでは、2万足以上のスニーカーが売買され、個々のスニーカーの価格が日によって変わり、その価格が個人売買する人やスニーカーのリセール専門店での価格の基準になっているとか。
そうしたスニーカーブームは、今年の6月のピッティにも押し寄せていて、クラシックなスタイルを好む人たちにまでもがスニーカーを履くようになっていました。昨年の夏もスニーカーを履いているジェントルマンもいましたが、今年はその着こなしのバリエーションが増えたのに驚きました。
まずは、このお二人ですが、左のジェントルマンはベルトレスパンツにニューバランスのスニーカーを合わせていますが、シャツがビジネスで通用する仕立ての良いシャツを着ているのできちんと感が出ています。きっと仕事になったらこの上にジャケットを羽織るのでしょう。
右のジェントルマンは、ネイビージャケットにネクタイ、ポケットチーフ、パンツはちゃんと折り目をつけたコットンパンツですが、なんと足元はスニーカー。ネクタイをしている時は、革靴というのがクラシックスタイルのルールでしたが、もうそうしたルールは過去のものとなったようです。
カチッとしたジャケパンスタイルでもスニーカーが悪目立ちしていないのは、スニーカーとパンツの色を上手くまとめたから。スニーカーのデザインも色をたくさん使わずワントーンでまとめているのもポイントです。スニーカーは、よく見ると日本のアシックスでした。
こちらのジェントルマンは、WスーツにヘンリーネックのTシャツを着てスニーカーというかなり難度の高いスタイリング。
このくらいの年配の方までスニーカーを履くようになったのは、今年になってから。昨年までは、やはりピッティといえどスニーカーは若い方が中心でしたが、今年は年齢やスタイルに関係なく足元はスニーカーという方が急増していました。
スニーカーはイタリアのブランドのもののようです。ここは、意見の分かれるところですが、スニーカーのときのパンツの裾は個人的にはシングルが合わせやすいと思いますが、この方も前の方も二人ともWの折返しをつけた仕上げにしています。
そして、大切なのがその長さ(股下)。スニーカーの結び目に軽く当たるくらいがバランスいいようですね。長くして裾がだぶつくとスニーカーの軽快感が消えてしまうのでご注意ください。
かなりお年のめした方ですが、さっそうとスニーカーを履きこなしています。パンツはサスペンダーで釣っているのがちらっと見えます。スニーカーにサスペンダーという組み合わせは、真逆のタイプのものですが、案外うまくまとまるという新発見でした。
靴のブランドは聞き損じましたが、間違いなくイタリア製でしょう。本体の素材は、デニム生地のようですね。ジャケット、サスペンダーはネイビー、シャツとパンツはホワイトにして、スニーカーもその2色しか使わないという、シンプルでありながらかなり計算されたスタイリングです。
ちなみにこのジェントルマンもパンツの裾は、Wにしていますが5cm以上はある極太W。この辺の仕様は、このスニーカーに合わせるためにわざわざ指定して仕上げているはずです。こうした細かな部分にも手を抜かないのがイタリアのジェントルマンの流儀。
最後は、ピッティに来ていたエレガントなマダム。ワンピースにスニーカーという、一見「?」な着こなしですが、実はミラノやパリではこれがいまや当たり前で、ヒールをあわせている人を見つけるのが大変なくらいになっているのです。とにかく、女性ファッションはいまやスニーカーなしでは語れないのです。
こうした先行する女性のスニーカーブームを見ていると、これから増々メンズのスニーカーの裾野が広がり、多様な着こなしが出てくるとは間違いないと感じました。
次回は、6月のピッティのトレンドのなかで秋口にも使えそうなアイテムをピックアップする予定。
乞うご期待を!!
プロフィル
大西陽一(おおにし・よういち)
数々の雑誌や広告で活躍するスタイリスト。ピッティやミラノコレクションに通い、日本人でもまねできるリアリティーや、さりげなくセンスが光る着こなしを求めたトレンドウオッチを続ける。
Photograph & Text:Yoichi Onishi