旅と暮らし

シカゴがもたらす知的な時間、アカデミックな人生!
第2回:世界に誇る“ミュージアム天国”で知の海に浸る

2019.10.30

シカゴがもたらす知的な時間、アカデミックな人生!<br>第2回:世界に誇る“ミュージアム天国”で知の海に浸る
The Art Institute of Chicago

ユナイテッド航空、ボーイング、ハイアットホテルからマクドナルドまで。多くの大手企業が本社を置き、金融、IT、医療ほか、幅広い産業で発展を遂げてきたシカゴ。ビジネスシティーのもうひとつの側面が、あまりに上質で豊かな知的財産の数々だ。アメリカの至宝を収蔵する「シカゴ美術館」、高い企画力と先見性で知られる「シカゴ現代美術館」ほか、50以上の美術館や博物館が街を彩る。建築や修繕にかかる費用の1.33%をアートに費やすことが義務づけられていると聞いて、納得させられるとともに、その意識の高さにも驚いてしまう。

2_Edward-Kemeys.-Lion-(One-of-a-Pair,-South-Pedestal),-1893.-Gift-of-Mrs.-Henry-Field.-The-Art-Institute-of-Chicago
1893年の世界万国博覧会で建てられた本館は美しい古典主義の建物で、優雅なファサードを青銅のライオンが守る。

ピカソから安藤忠雄︎まで、名作の宝庫だった!

まず訪れるべきは、全米三大美術館のひとつ「シカゴ美術館」。ルーヴル美術館に次ぐ印象派コレクションや、国民が誇る現代アメリカ絵画など、収蔵点数は30万点を優に超える。ちなみに、正式名称は「The Art Institute of Chicago」=「シカゴ美術研究所」。元は美術学校だったのが、復興時にシカゴに集った資産家が自らのコレクションを少しずつ寄贈。それが潤沢なラインアップとなったため、万博を機に美術館を創立した。前身の美術学校には、あのウォルト・ディズニーもいたというから話題は尽きない。

  • 600_3_Georges-Seurat.-A-Sunday-on-La-Grande-Jatte-–-1884,-1884_2F86.-Helen-Birch-Bartlett-Memorial-Collection.-Courtesy-of-the-Art-Institute-of-Chicago
    左/ジョルジュ・スーラ『グランド・ジャッド島の日曜日』
  • 600_4_Pierre-Auguste-Renoir.-Two-Sisters-(On-the-Terrace),-1881.-Mr.-and-Mrs.-Lewis-Larned-Coburn-Memorial-Collection.-Courtesy-of-the-Art-Institute-of-Chicago
    ルノワール『二人の姉妹』

さて、鑑賞すべき作品はあまたあるが、そのうちのひとつがジョルジュ・スーラの最高傑作『グランド・ジャッド島の日曜日』。寄贈者の遺言により門外不出で、ここでしか見ることができない貴重なもの。ルノワールは『二人の姉妹』を含め、すべてが光を放つような鮮やかさ。使っていた絵の具が良質で、約140年前の作品でも退色が進んでいないのだとか。

500_6_Grant-Wood.-American-Gothic,-1930.-Friends-of-the-American-Art-Collection.-Courtesy-of-the-Art-Institute-of-Chicago
グラント・ウッドの『アメリカン・ゴシック』
  • 600_5_Georgia-O’Keeffe.-Sky-above-Clouds-IV-(detail),-1965.-Restricted-gift-of-the-Paul-and-Gabriella-Rosenbaum-Foundation_-gift-of-Georgia-O’Keeffe
    ジョージア・オキーフ『雲の上の空 Ⅳ』
  • 600_7_Edward-Hopper.-Nighthawks,-1942.-Friends-of-the-American-Art-Collection.-Courtesy-of-the-Art-Institute-of-Chicago
    エドワード・ホッパーの『ナイトホークス』

アメリカ近代美術のコレクションも秀逸。ジョージア・オキーフが飛行機の乗客としての体験を描いた『雲の上の空 Ⅳ』、中西部の倫理と美徳を表現したグラント・ウッドの『アメリカン・ゴシック』、光と影が映画のワンシーンのようなエドワード・ホッパーの『ナイトホークス』など、アメリカンアートの近代の系譜をめでることができる。

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Modern Wing

ピカソやマティス、ウォーホルなどの傑作は隣のモダンウィングへ。ここは銀座のメゾンエルメスでも知られる建築家、レンゾ・ピアノによる設計で、自然光あふれる軽やかな空間。本館とは違う趣を味わいたい。

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Ando Gallery

さらに見逃せないのが、安藤忠雄による「Ando Gallery」。照明を落としたなかに屏風が展示される瞑想的な空間。本人は「物性を超えたものを思い起こしてほしい」とコメントしているとか。

モダンアートの動向がわかる、世界が注目する美術館

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さて、続けて訪れたいのが、モダンアートの殿堂「シカゴ現代美術館」。ここの企画展は世界的に注目されていて、デヴィッド・ボウイの回顧展「David Bowie Is」を、ロンドンから誘致したアメリカ唯一の美術館だ。日本人アーティストへの評価も高く、1996年に森万里子の作品を常設展に採り入れ、2000年に奈良美智の作品を紹介。2017年に行われた村上隆の大規模な企画展は、日本はもちろん、世界中で話題を呼んだことは記憶に新しい。

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ヴァージル・アブロー企画展「FIGURES OF SPEECH」(現在は終了)の様子

訪れたときに開催していたのは、ルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック ディレクターに就任した、ヴァージル・アブローの企画展。ファッション、音楽、建築、グラフィックまで、多岐にわたるエッジィな才能を多面的なアプローチで解説。ちなみに“ラグジュアリー・ストリート”のキーマンと呼ばれる彼は、ここシカゴの出身である。彼のインタビュービデオを見るとイリノイなまりの優しい語り口で、どこか牧歌的なムードをまとっているのが印象的だった。

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    「フィールド博物館」では入館すぐ、巨大なマンモスなどが出迎える。
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まったく違う魅力を放つふたつの美術館をはじめ、Tレックスの骨格標本が大迫力の「フィールド博物館」、実物のアポロ8号の司令塔が人気を集める「科学産業博物館」、世界7つの海の水槽を展示する「シェッド水族館」、世界最大の望遠鏡コレクションを持つ「アドラープラネタリウム」まで、まさにシカゴは“ミュージアム天国”。ちなみにこれらの施設は、あらかじめ「シカゴシティパス」を購入しておけば入場料などが半額に。大人の知的好奇心を刺激する名施設を、それぞれ賢く巡りたい。

全米トップクラスの美食の街で“今”を味わう

感性が潤ったのちは、センスあふれる空間で美食を楽しみたいもの。第2回は、いまのシカゴを表現する洗練&旬のグルメを紹介する。

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    ©Anthony Tahlier
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    ©Anthony Tahlier

<ベルモア>
エクリュカラー(生成色)の空間にボルドーのソファが優雅なムードを醸し出すレストラン。“アーティスティック・アメリカン”コンセプトで、エレガントな装飾にウッド、ラタンなどのナチュラル素材をミックスし、くつろぎの場を演出している。海苔や柚子胡椒を使った蟹のメインディッシュほか、昆布や味噌など和の食材を効かせたひと皿もあり、メニュー構成にフードトレンドの潮流を感じる。美食の街・シカゴを印象付ける名店だ。

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    ©Janet Isabelli
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    ©Janet Isabelli

<パープル・ピッグ>
ランチからディナーまで、どの時間もにぎわいをみせるのが「パープル・ピッグ」。カジュアルなムードのなかで、極上のハムやチーズ、見目麗しい地中海スタイルの料理が提供される。ワインが充実しているのが特徴で、ペアリングを相談するとさらに楽しめる。

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蓄えるほどに価値が増し、輝きを放つのが“知性”とするならば、この街はそのことをよく知っていて、自ら成熟を深めていると感じる。第3回は、アメリカを代表するエンターテインメントについて触れていく。

<第3回に続く>

シカゴ美術館(111 S. Michigan Avenue at Adams Street, Chicago,IL)
シカゴ現代美術館(220 E Chicago Ave, Chicago,IL)
シカゴシティパス
ベルモア(564 W. Randolph Street, Chicago,IL)
パープル・ピッグ(444 N. Michigan Ave, Chicago,IL)

取材協力/シカゴ観光局ユナイテッド航空

Text:Maho Honjo

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