週末の過ごし方

ブドウ畑に囲まれた「Six Senses Douro Valley」で過ごす、
ポルトガルらしい穏やかな休日

2026.02.27

ブドウ畑に囲まれた「Six Senses Douro Valley」で過ごす、<br>ポルトガルらしい穏やかな休日

ポルトガルのポルトへ行くなら、併せて訪れたいのがポートワインの産地として知られるドウロ渓谷だ。“飲むジュエリー”と称されるワインの故郷は、絶景を拝むためにも行く価値がある。目指すは、ブドウ畑に囲まれたリゾート「Six Senses Douro Valley」。ポルトを起点とする旅の後編では、ドウロ渓谷を満喫するリゾートステイを紹介する。

<<【前半】ポルトの旅はこちらから

いるだけで気持ちがいい場所、ドウロ渓谷

ポルト中心部からクルマで1時間30分、ドウロ渓谷に到着する。3回目の訪問。私的パワースポットとも言える場所だ。渓谷というだけでも景色がよいのに、川沿いの斜面は一面ブドウ畑。ドウロ川クルーズに出れば、さんさんとしたブドウのパワーを浴びている心地になる。初夏はまぶしい新緑、秋は黄金色のブドウ畑となって、選べないほどどちらもよい。

1
全長897kmに及ぶドウロ川。

そんなドウロ渓谷に戻ってきた。目的は、10年ぶりに「Six Senses Douro Valley」に泊まることだ。開業は2015年夏。「Six Senses」と言えば、1995年に始まり、当時からいちはやくウェルネスとサステナビリティに特化してきたブランドだ。“人の感情を変える空間”をテーマに、各地の自然や伝統と調和するデザインとなっているため、どの施設も居心地がよい。開業時、好きなブランドが好きな場所にできたと聞き、すぐさま現地へ向かった。そして念願の再訪。ロケーションが最高と知ってはいるものの、近づくほどに興奮した。

2
広大なテラスのある館。

車はブドウ畑の中を進み、やがて赤土色の館が見えてくる。ブドウ畑とドウロ川に囲まれたその館こそ、「Six Senses Douro Valley」。元の建物は19世紀のブドウ商の館だ。それからホテルとして営業した期間を経て、「Six Senses」が改装を施しよみがえらせた。内装は大規模に変えたが、たたずまいは19世紀の面影を残す。

変わらぬ姿に懐かしさでいっぱいになっていると、エントランスに大きな変化が。犬のベッドが置いてあり、その前に1匹の雑種犬が寝ているではないか!

3
19世紀のワイン商を思わせる木製扉の前に犬がいる。
3a
うとうと。

まるで館の主のようにくつろぐその犬は、アクア(推定15歳)。保護犬として開業からまもなく迎え入れられたとか。スタッフたちは「家族のような存在」と話す。どれほど大切に思われているかといえば、リゾートのオリジナルワインのラベルはアクアの顔であるほど。チェックインをして館内探索を始めると、2度目のサプライズが。もう1匹の保護犬がテラスでくつろいでいる!

4
周辺の森を徘徊していたところを保護されたフォクシー。

同じく雑種犬の彼はフォクシー(推定4歳)。驚くのが、ゲストが客室に向かうためにエレベーターに乗ると、彼も当然のように乗り込んで移動すること。実にうまく人間を利用している。人懐っこく、犬好きなゲストと仲よくなると、客室に招かれて一緒に寝ることもあるとか。ペットフレンドリーなラグジュアリーホテルは増えたが、ここまでは珍しい。彼らがいるおかげでスタッフの穏やかさが増している気もする。

陽気なムードが漂っているリゾート

開業直後と変わって当然だが、雰囲気がとても明るくなっていた。10年間、たくさんの旅人が行き交い、幸せに過ごした余韻みたいなものが漂っているように感じた。何より、まれにみるほどスタッフたちの雰囲気がいい。

5
GMのオリオル・ジュヴェ・デ・ジェブラさん。

とりわけ陽気に話しかけてくれたのはGMのオリオルさんだ。白いTシャツに柄のジャケットを羽織って、バカンス中のような装いだったが、彼がGMだとすぐにわかった。歓迎ムードが身体中から溢れ出ているような人だったからだ。バルセロナ出身で前職は「Six Senses Ibiza」のGM。イビザの太陽も一緒についてきたかのような明るさ。それが部下に派生しているのかもしれない。

スタッフの雰囲気がいい理由は、恵まれた環境にあるとも言える。窓の外はブドウ畑とドウロ川で、不思議なほどに光がキレイ。“美しい場所にはいい人たちがいる”と、ホテル巡りをしているとよく思う。気持ちいい毎日を送ると、心に余裕が生まれて人に優しくなるのだろうか。そんなことを「Six Senses Douro Valley」でも感じた。特にここはテラスや庭の占有面積が広い。ガラス張りのエレベーターからの眺めも絶景だ。

6
「Cozinha do Douro」のテラス。
7
秋のブドウ畑を前に行われるヨガ。

おおらかな自然に溶け込むデザインのあんばいもよい。基本的には木と石から構成され、ブドウ商の館だった姿もちらほら。例えば「The Vale de Abraão Restaurant」には19世紀の暖炉やアズレージョ(青いタイル)、ここに住んでいた家族の写真がそろい、はしばしがノスタルジックだ。

8
大きな暖炉が豪商を思わせる。

夏にテラスで食べる夕食もたまらない。青空が徐々に紺碧に変わっていき、ブドウ畑が眠るような瞬間を目撃する。そんななか、例のリゾートが作った犬ラベルの白ワインを飲む。ゴウヴェイオ、ラビガトなどドウロの土着品種のブレンドだ。ハーブが香るような味わいで甲殻類ととても合う。

9
ハウスワインとロブスターのリゾット。
10
ワイン泥棒となる生ハムピザを作るクッキングクラスもあり。

客室は比較的モダンなので、バルコニー付きを選ぶと、そこが素朴な外の風景とのよい緩衝エリアになると思った。余裕がある人は2022年に新設されたプール付きのヴィラがおすすめだ。

11
バルコニー付きの「キンタ デラックス(46㎡)」。
12
「ルーフトップ スイート(70㎡)」のジャグジー。

まるでドウロ産ワインの博物館

ドウロ渓谷にはさまざまなワイナリーが並び、ポートワインのブランドは宿を併設するところも少なくない。それもステキだが、「Six Senses Douro Valley」でしか味わえないのが、ソムリエ5人が集めた700種に及ぶ多彩なワインのコレクションだ。うち8割がドウロ渓谷で造られたものというから、まるでドウロ産ワインの博物館。そこが自社ワインを中心に提供するワインホテルとの違いだ。

13
リゾートの目の前にブドウが実る。

ドウロはポートワインの名産地として知られるが、実は、近年スティルワインのレベルが軒並み上がっている。それを知らずにドウロを去るのはもったいない。一度はワインテイスティングに参加すると、ドウロへの解像度がぐっと上がる。

「ドウロは神がワインのために設計した土地、という例えがあります」

そんなパワーワードからテイスティングはスタート。なぜその例えが生まれたのか、特異な地質について教えてくれる。ドウロでは2000年以上前からワインが造られ、1756 年には世界で初めて原産地呼称管理(DOC)がワインに制定された。その後、フランスを中心にワインやチーズの原産地呼称が始まった(シャンパーニュやロックフォールなど)。

先駆けでありながら対外アピールは控えめなのがポルトガルらしいところ。だからこそ、訪ねてほしい。「Six Senses Douro Valley」まで行けば、熱いソムリエたちが丁寧に解説し、ワインを選んでくれる。ドウロ近郊出身のマヌエルさんはこう言う。

「毎年冬に集中してキンタ(ワイン農園)を回り、関係作りと試飲を重ねています。多い日は30種類飲み、おいしいと思ったものだけリストに載せています。ドウロ渓谷は標高800mに達する傾斜地ですから、標高差や土壌によりさまざまなワインがあり、その多様性を楽しんでほしいです。もちろん、ドウロを世界に知らしめてくれた私たちの宝物であるポートワインも含めて」

14
計5〜6種のテイスティング(60€)では後半にポートワインが提供される。

ドウロ川クルーズ、鉄道、ハイキングに満足

滞在中は何をするか? ポートワインを醸すワイナリーへの訪問はもちろんおすすめで、ぜひレセプションで相談を。そのほかに予約を入れるとしたら、ドウロ川でのクルージングだ。

15
ビンテージボードで出発(4名までで1時間450€)。

貸し切りボートにはさまざまなワインが積まれ、斜面に立つワイナリーやブドウ畑を眺めながらワインを味わう。ボートが進むごとに次々と形の違う斜面が現れ、いうなれば大自然の中の大人のアトラクション。途中でエンジンを止めて、川の流れに身を任せてのんびり揺られる時間もいい。

16
「Quinta do Portal」のフレッシュなロゼ。

次に、日本にいたときから密かに楽しみにしていたのが、ドウロ渓谷を走る鉄道への乗車だ。鉄道に乗りたいとスタッフに相談すると、「レグア駅までクルマでお送りするので、そこで鉄道に乗ってピニャオン駅で下車してください。その間の景色が特に美しいです。クルマはピニャオン駅で待っています」と即答。すぐに鉄道の時間を書き渡してくれた。気持ちいいほどにスムースな段取り。やはり、ここはスタッフが素晴らしいと再度思う。

17
川の上を走っているような鉄道体験。
18
ドウロ線はクルーズ利用の観光客も乗るので、空いている午前や夕方がおすすめ。

車内はアーチ型で赤いカーテンが引かれ、駅員さんが切符を確認に歩いてくる。西日が差す時間帯で、地元民らしい乗客と駅員さんがなごやかに話す。絵に描いたような欧州のクラシック鉄道だ。窓の外にはドウロ渓谷の絶景。そしてたどり着く小さなピニャオン駅はアズレージョが美しい。駅を出ると笑顔のドライバーさんと再会。ポルトガルらしいノスタルジックさが詰まった、30分の鉄道体験だった。

19
ピニャオン駅のアズレージョには、ブドウ畑やワイン造りの風景が描かれている。

最後にもうひとつ身近なアクティビティを。それはリゾート周辺のハイキングで、当日すぐに参加可能だ。「Six Senses」は“Reconnect with Naiture”をコンセプトのひとつとするため、自然に触れるアクティビティが豊富。ネイチャーガイドと裏山を歩きだすと、意外な方が先頭で導く。保護犬のフォクシーだ。彼はこのハイキングに参加するのが好きで、豊かな森を楽しむように軽快に進んでいく。

20
野性のイチジクなども実る豊かな森。

途中、「150年前、オーナー家族はシントラ(ポルトガル南西部)から越してきました。しかし妻がシントラの森を恋しがったため、夫は“ここにシントラの森をもってくる”と約束し、同じ植物を植え、同じトンネルまで作ったのです」という話も聞いた。建物に加え自然も元家主の歴史にひもづき、それをいま享受していると実感する。

21
「Six Senses」では“身体に愛される料理”というテーマに基づき、どの施設も朝食の野菜料理が充実。自家菜園にも力を入れる。
22
森を望むサウナもまた“Reconnect with Nature”。

いま振り返っても、“豊かな滞在”だったと心から思う。「Six Senses Douro Valley」は、旅が終わったあとも、回想するだけで温かい気持ちになるような場所。景色を堪能する保護犬たちに、明るく機転が利くスタッフたち、そして美味しいワイン。もう言うことはない。3回目の訪問も、何年後かにかなえばいいなと願う。

23
ドウロ川を望む特等席で休むアクア。

Six Senses Douro Valley
11000€〜
https://www.sixsenses.com/en/hotels-resorts/europe/portugal/douro-valley/

<<【前半】ポルトの旅はこちらから

プロフィル
大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、旅、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、年に10回は海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

あなたへのおすすめ

トレンド記事

  1. 王 貞治も通った後楽園の老舗『中華料理 新三陽』<br> 野球好きのマッチもテンションMAX!<br>マッチと町中華。【第31回】

    王 貞治も通った後楽園の老舗『中華料理 新三陽』
    野球好きのマッチもテンションMAX!
    マッチと町中華。【第31回】

    週末の過ごし方

    2026.01.30

  2. サクッと食感の豪快なかき揚げが名物。<br>本格派の老舗立ち食い蕎麦屋「加賀」。@初台駅

    サクッと食感の豪快なかき揚げが名物。
    本格派の老舗立ち食い蕎麦屋「加賀」。@初台駅

    週末の過ごし方

    2026.02.24

  3. 新年度に向けて新調したい“春財布” おすすめ20選<br>【エルメスの「シルクイン」コンパクト】

    新年度に向けて新調したい“春財布” おすすめ20選
    【エルメスの「シルクイン」コンパクト】

    小物

    2026.02.24

  4. 新年度に向けて新調したい“春財布” おすすめ20選<br>【ルイ・ヴィトンのポルトフォイユ・マルコ】

    新年度に向けて新調したい“春財布” おすすめ20選
    【ルイ・ヴィトンのポルトフォイユ・マルコ】

    小物

    2026.02.25

  5. 「柳川藩主立花邸 御花」のかもなか。<br>すべて実食! 自慢の手土産 #160

    「柳川藩主立花邸 御花」のかもなか。
    すべて実食! 自慢の手土産 #160

    接待と手土産

    2026.02.19

紳士の雑学