週末の過ごし方
北大路魯山人ゆかりの地で味わう、
贅(ぜい)を尽くした10周年記念の美味
2020.08.27
陶芸をはじめとした芸術家であり、また、希代の食通として知られる北大路魯山人。「美食倶楽部」を設立し、会員制料亭「星岡茶寮」を主宰した。
極められた美味の数々が魯山人によって振る舞われた「星岡茶寮」。その跡地に立つのが「ザ・キャピトルホテル 東急」だ。
千代田区永田町、日枝神社が社を構える丘にあり、美食の地に歴史を刻むこのホテル。新たに建て直されて10周年を迎えるが、それを記念して、贅を尽くしたプランが用意された。
「水彩(すいさい)の余韻」と名付けられた特別なコース。天麩羅・鉄板焼・寿司それぞれの専用の空間で、多彩な食の贅沢を一夜のうちに味わい尽くす、趣向を凝らしたもてなしだ。
他に類を見ない美食探訪で、1組ずつそれぞれのカウンターを巡っていくため、密にならずゆったりと利用できる。
厳選された食材を、優れた料理人が仕上げていく。かつて魯山人がそうしていたであろうもてなしが現代によみがえるかのようだ。
美食の探訪は、まず特別個室「月」で味わう前菜から始まる。
鱧(はも)の落としや、自家製からすみなど、前菜から贅を尽くした特別コースに心が躍る。自家製からすみは、長崎から届くボラの卵巣を用いて調理場で作り上げる。供する前にあぶられ、風味豊かなうまさだ。
雲丹大葉巻は実に素晴らしく、雲丹(うに)のおいしさが口いっぱいに広がる。海苔を使わず大葉を用いるのは、雲丹のうま味や、ふんわりとした食感を引き立てるため。
こぼれ出そうなほどたっぷりの雲丹に大葉をまとわせていて、揚げているあいだ、広がらないよう手で押さえつづけなくてはならないという。
そんな話をカウンター越しに料理人から伺いながら食すれば、もてなしの神髄までも味わえる。
次に通されるのは、鉄板焼のカウンターだ。鮑(あわび)、フィレ、ロースという鉄板焼の贅を極めた構成。これだけの素材を堪能できる機会はそうはない。
千葉県産黒鮑、そして昆布を用いて育てられた北海道日高郡産の黒毛和牛「こぶ黒」のフィレ(50g)とロース(50g)が、客のタイミングをはかりながら、鉄板の上で焼かれ、音と香りを立てていく。
寿司のカウンターでは、本鮪(ほんまぐろ)のとろなど贅沢なネタが熟練の職人によって握られていく。
ここまでたくさんの美味を味わい、腹も満ちてきているはずなのに、最後までおいしく味わえる。ぜひまた、この握りを味わいたいと思えるのも、寿司職人の技の素晴らしさがあってこそだ。
最後はホール席へと場所を移して、デザート(水菓子)で特別なコースは締めくくられる。
ワインや日本酒などをその都度、料理と合わせて楽しめる飲み物のペアリングセットもまた格別。食前酒から始まり8種が提供される。ソムリエが厳選したワインを天麩羅と鉄板焼きで、日本酒を寿司でペアリングし、料理を引き立てながら楽しませてくれる。さらに、お酒が飲めない人には、ノンアルコールのペアリングも選ぶことができるのはうれしいところ。
時に男は美味で誰かをもてなしたいという衝動にかられるものだ。相手が男性でも女性でも、究極の美食を共に味わいたくなる。
そんな至福の時にふさわしいホテル10周年記念のコース。多様な美食を一夜に味わう特別のコースだ。
■ザ・キャピトルホテル 東急
開業10周年記念コース「水彩の余韻」
東京都千代田区永田町2-10-3 3階 日本料理「水簾」
Tel. 03-3503-0873
開催日:2020年10月4日(日)/11日(日)/18日(日)/25日(日)
時間:第1部 午後5時〜/第2部 午後6時〜/第3部 午後7時〜
予約:要 電話での予約で各部1組4名まで(利用日の3日前までの予約、先着順)
コース料金:1名5万円(サービス料・消費税込み6万500円)、和酒やワインとのペアリングセット1名2万円(同2万4200円)、ノンアルコールのペアリングセット1名8265円(同1万円)
https://www.tokyuhotels.co.jp/capitol-h/restaurant/suiren/plan/66674/index.html
※仕入れの状況により食材が変更になる場合があります。
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Edit & Text:Haruhiko Ito(Office Cars)