特別インタビュー

ジャージを着るのがオシャレになった瞬間。
[渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。]

2020.10.29

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さらりとはおるだけで、センスのよさと男っぽさが醸し出されるニードルズのトラックジャケット。絶妙な色使いとデザイン、組み合わせの妙が光る。左からトラックジャケット¥29,000、¥28,000/ともにニードルズ(ネペンテス 03-3400-7227

多才でいてファッションフリーク、渋谷直角の愛用品からそのセンスを探ってみる──。

サチモスが出てきたとき「あ、親がよく言ってた〝私たちが若いころにはやってたのよ〞って感覚、コレか」って思いませんでしたか。自分たちが学生のころにベルボトムやフレアパンツはいたりすると言われていたのが、サチモスのヨンスが着るアディダスのジャージを見て「とうとう自分も親と同じことを言うんだ」と。流行は繰り返す、というのが身をもって実感できた。

ジャミロクワイがニットキャップかぶってアディダスのジャージで歌う姿がカッコよくて、「ファッションとしてジャージが欲しい」と思った人は多かったです。80年代、RUN DMCの全身アディダスというのもありましたが、日本ではやはり「ジャージ着るのは田舎者」「女性に一番嫌われる格好」と嘲笑されるイメージが強かった。それがジャミロクワイの登場とJリーグ開幕(92~93年)で、一気にひっくり返った。アディダスやプーマのジャージがファッション的に注目され(Jリーグも当時は「オシャレなもの」だったんですよね)、「ジャージでクラブやライブハウスに遊びに行く」のがはやったのです。「カッコ悪かったものがオシャレになる」という体験を思春期にできたのは大きかったし、90年代ファッションの象徴的なアイテムのひとつではないでしょうか?

ちなみに、ジャミロクワイとアシッドジャズのシーンが、ジャズを新たな解釈で最新のカッコいい音楽にしたように、いまの20代のインディーズの子たちが作る音楽は90年代を軽々と超えたミクスチャー感で面白く、クオリティーも高い。20代のころと同じくらい、渋谷や新代田のライブハウスによく見に行くようになりました。いまは40代でもシックに着ることができるジャージも増えたし、若いころとは違うジャージのコーディネートでライブに行くと、20代を思い出す気持ちといまの気分が相まった不思議な感覚で楽しい。若者ばかりで少し肩身狭いですけど。

<<ポール・スミス=はがねのつるぎ説 はこちら

「アエラスタイルマガジンVOL.47 AUTUMN 2020」より転載

Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)

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