腕時計
名作腕時計は進化する
[腕時計で幸せになる。]
2021.01.21
揺れ動く時代を長く生き抜いてきた名作腕時計は少なくない。こうしたロングセラーの人気モデルは決して不変ではなく、改良すべきところは改めると同時に、守るべきことは頑なまでに守りつづけてきた。デザインは生活様式や嗜好(しこう)の変化などに対応して微妙に修正され、ケースなどの素材や加工方法およびムーブメントも進化。ただし、オリジナルのもつ個性や世界観は注意深く維持する。このように長年にわたる錬磨を経てきたモデルは、安定した不動の魅力を備えている。いわば時を超越した時計と言えば大げさに過ぎるだろうか。
CARTIER(カルティエ)
1930年代にマラケシュのパシャ(太守)から依頼されたことがルーツであり、85年に誕生して人気を博したモデルが進化した。カルティエでは数少ない丸型ダイヤルの中にスクエアな目盛りを組み合わせた独創的なデザインは変わらないが、すべてを現代的にブラッシュアップ。アイコンとなってきたチェーン付きのリュウズカバーまわりもすっきりと整理され、初期の造形のピュアな魅力が増幅された。
OMEGA(オメガ)
月面に到達した最初の腕時計であり、爆発事故に遭遇したアポロ13号を奇跡的な生還に導いたエピソードでも知られる「スピードマスター」は手巻きのキャリバー321を搭載していた。これまでに多彩なモデルが製作されてきたが、この伝説的なキャリバー321の第2世代を再構築。往年をほうふつとさせるビンテージ風なモデルに搭載された。ただし、外周のタキメーターはブラックセラミック。ホワイトエナメルの目盛りがつややかに映える。
ROLEX(ロレックス)
1926年に世界初の完全密閉式ケースで防水・防塵を実現した「オイスター」を発表。続く31年には同じく世界初の自動巻き「パーペチュアル」。この2つの発明によって腕時計の活動範囲は飛躍的に拡大した。これを継承する「オイスター パーペチュアル」は、基本的なスタイルを維持しながらも細部やダイヤルカラーは常に進化。ムーブメントも最先端の技術を導入して革新を続けてきたことがベストセラーの理由ではないだろうか。
Text: Keiji Kasaki