週末の過ごし方
サステイナブルでエコロジカル、
それが新しい別荘スタイル。
【ニューノーマル時代の別荘探訪。】
2021.05.18
リモートワーク、多拠点、タイニーハウス……。ここ数年で、人々の「暮らし方」は一気に多様化した。そのなかで、かつて豊かさの象徴だった「別荘」は、どう変容しているのだろう。最新のケーススタディから、豊かな暮らしのニュースタイルを紹介します。
Logs on the Dune
南房総/設計:中村拓志 & NAP建築設計事務所
南房総の見晴らしのいい砂丘に立つ別荘は、会社の保養所としても使われる。料理とトライアスロンが施主ご夫婦の趣味。数年前、東京以外の拠点を探していたところ、この地に巡り合った。設計したのは建築家の中村拓志さん。以前、広島にあるリゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」に宿泊した施主が、瀬戸内海の絶景を生かした設計とその居心地にひかれ、設計した中村さんに依頼したという。
「自然の中でリラックスできる環境を」という施主の要望に中村さんは高低差のある広大な敷地に幾度となく通い、周辺環境を空間にどう採り入れるか思案した。結果、海岸に砂防柵として使われる丸太や、砂浜に点在するシーグラスを素材として生かすことに。「別荘とは非日常。都会にない抜けのいい風景は重要です。でも、それだけではない。その地の風土、文化、職人、素材に触れることでも非日常はつくり出せます」と中村さん。
今後の滞在の在り方について施主は「じっくり時間をかけて、建物と植物をうまく絡めながら、自然と融合した庭をつくっていきたい」と言う。こうした地域とのつながりも、これからの別荘の新しいスタイルなのだろう。
「これまでの別荘は高価な設備や家具などを仮託してつくりあげるスペック主義の象徴でした。でもそういうお仕着せのラグジュアリーに疲れ果てている人は多い。本当の豊かさとは、地域の素材に身を委ね、自然を享受するサステイナブルでエコロジカルなもの。そこにきちんと目配りされていることが、これからは大切なのではないでしょうか」と中村さんは語る。
Data
●所在地/南房総
●家族構成/夫婦+子3人
●竣工/2019年
●構造/RC造
●規模/地下1階、地上2階
●敷地面積/2972.79㎡
●延床面積/499.17㎡
●中村拓志&NAP建築設計事務所
Photograph: Koji Fujii
Edit&Text: Satoshi Miyashita