カジュアルウェア
ファッショントレンドスナップ108
イザイアのベルトレスパンツは
盛夏のTシャツスタイルを格上げする起爆剤
2021.06.25
Tシャツはいまや休日のカジュアル着だけでなく、ウェブ会議などで通用するビジネスウエアの仲間入りを果たしています。とにかくコーディネートが簡単でお手頃価格なので、これなしで夏を乗り越えるのは考えられないくらいの超人気商品。その半面、コーディネートが同僚とかぶったとか、スタイリングがマンネリ化した……という悩みを持っている方も少なくないはず。
そこで、今回は定番Tシャツスタイルの悩みを解消する逸品を取り上げてみました。
今回フォーカスしたのは、ベルト不要のベルトレスパンツ。2~3年前からじわじわ日本でも見られるようになりましたが、この夏が人気のピーク。今回のジェントルマンのスタイリングを見ればわかるように、普通のコットンパンツの感覚ではいてもひと味違う雰囲気が出せるのです。手持ちのTシャツやポロシャツをコーディネートしてもトレンド感をアピールできるという効能も。
ただ、見ておわかりのようにTシャツの裾はパンツにインしています。こうしないとせっかくのベルトレスが見えませんから……。
とはいえ、アメジカジ流の「Tシャツは裾出し!」と信じて疑わない方には、かなり違和感があるのも事実。ただ、今回はその固定観念を捨ててトライしてみてください。2~3回トライしてみれば、これはこれでいいかも!と感じていただけるはず。
おなかががぽっちゃりしている方は、これは絶対無理と思うかもしれませんが、普通のシャツはインして着ているのが気にならないのと同じで、慣れてしまえばこれはこれでありだと思っていただけると思います。
例えが大げさですが、ニュースタンダードという言葉の流行とともに新しい価値観&ライフスタイルにいろいろとトライしたように、ファッションもこの際ちょっと冒険してみるのも悪くはないと思いますが……。
ベルトレスパンツには、2タイプあります。ウエストのベルトが当たる帯の部分(ウエスマン)にアジャスターが付いていないドレスタイプと、アジャスターがサイドに付いたりベルトのような持ち出しが付いたグルカタイプ。
今回のジェントルマンのパンツは、サイドにアジャスターが付いたもので フロントは持ち出しと呼ばれる パーツが出っ張っています。それに、ボタンが2個も付いて幅も普通のパンツの2倍以上(約5.5cm)もありますね。これは、ミリタリーパンツのデザインを現代風にアレンジしたもの。こうすることで、シンプルなTシャツやポロシャツを着てもアクセントが生まれるので、コーディネートがグッと引き締まって見えます。
今回取り上げたイザイアのベルトレスパンツは、この明るいインディゴブルーのおかげで、ジーンズ感覚でコーディネートできるのがポイント。王道のホワイトTシャツは言うに及ばず、写真のようなネイビーTシャツとの相性も抜群!
パンツの裾は、ダブル(折返し)にしないで、ジェントルマンのようにシングルにしておくとローファーからスニーカーにまで合わせられ、足元が軽快になり全体がカジュアルな感じにまとまります。
パンツの素材はいまのシーズンに最適なウール×シルク×リネン素材。脇にクラシックなアジャスター(尾錠)がついているので、サイズの調整が可能。ただしあくまで補助的なものでデザイン的な要素のほうが強いので、ウエストはきちんと合ったサイズにお直しを。そうしないと、ウエストに不自然なシワが出てしまい見た目が悪くなります。
最後にちょっとパンツのうんちくを。ベルトレスパンツは、カジュアルパンツと思っている方が多いのですが、そのルーツを探ると、本来はベルトが付いたほうがカジュアルな仕様だったのです。それは、フォーマルウエアのパンツにいまでも受け継がれています。身近なとこでは、タキシードを着るときのパンツは基本ベルトをしません。
現代のものに近いスーツが誕生した1800年代は、多くがオーダーメード(お仕立て)だったのでウエストはピタっと合っていたので、そこを締め付ける必要はなかったのです。もちろん時代が経つにつれ既成品が出回るようになり、パンツをサスペンダーなどでつる必要が出てきました。しかしそこにベルトをするという発想はまだ少なく、既製服が大量に出回りはじめてからベルトをするデザインが広がることに。これは、機能的に便利なのと、スポーティーで新しい感覚が広く受け入れられたから。
日本では戦後にスーツがサラリーマンの制服として浸透したときには、すでにベルトをするものが規格化され出回ってしまったので、それがスタンダードになってしまったのではないかと私は考えています(諸説あり)。
そんなルーツを持つベルトレスパンツですが、そうした歴史を知る人は日本にはごく一部、フォーマルだからと会社にはいていくと「今日はベルトするの忘れたの?」「リゾートに行くようなかわいいパンツはいてますね」と突っ込まれるのがオチなのでお気をつけください。
Photograph & Text:Yoichi Onishi