スーツ
メンズのセットアップスーツの着こなし。
コーディネートのポイントや人気ブランドを解説
2021.07.06
メンズファッション誌やショップでよく見かけるセットアップスーツ。一見ビジネススーツに似ていますが、両者には明確な違いがあります。この記事ではセットアップスーツの特徴やメリット、着こなしのポイントを解説。セットアップスーツの人気ブランドも紹介していきます。
セットアップスーツとは? スーツとセットアップの違い
そもそもセットアップとは上下そろいの服を指す言葉。ビジネス用のスーツも上下そろいで着用するものですが、セットアップスーツとは区別されています。まずは、通常のスーツとセットアップスーツの違いについて解説します。
セット販売のスーツ、上下別売りのセットアップ
それぞれの違いは販売方法にあります。ビジネスで着用するスーツは、ジャケットとスラックスのセット販売が一般的。対するセットアップは上下別売りになっているため、ジャケットまたはスラックスのどちらかのみを買うことが可能です。
上下別売りのセットアップはジャケットとスラックスで別々のサイズを購入したり、ジャケットだけを購入してほかのパンツと合わせることができます。
使われる素材の違い
スーツとセットアップでは使われる素材にも違いがあります。スーツは羊毛(ウール)を櫛に通して整えた「梳毛(そもう/ウーステッド)」で織られることが多く、表面が滑らかで光沢のある質感が特徴です。
対するセットアップで多く使われるのが、櫛を通さずに仕上げる「紡毛(ぼうもう/ウーレン)」。ナイロンやポリエステルといった合成繊維、リネンやコットンなど羊毛以外の原料が使われることも多く、スーツに比べてカジュアルな印象を与えるのです。
着用シーンの違い
セットアップは肩パッドやフラップ(ポケットに付いているふた)の付いていないものが多く、スーツよりもカジュアルダウンした印象が特徴。スーツはビジネスやフォーマルシーンで着用するのに対し、セットアップスーツはカジュアルシーン向きといえます。
セットアップスーツのメリット
セットアップスーツが人気の理由として使い勝手のいいことが挙げられます。具体的なメリットを紹介していきましょう。
ビジネスカジュアルとして使える
セットアップスーツはビジネススーツほどカッチリしていないものの、ビジネスカジュアルとしては十分に活用できるアイテムです。すっかり定着したクールビズに加え、最近ではテレワークを推奨する企業も増加。対面で会議や営業を行うのに比べ、テレワークはカジュアル寄りの格好でも違和感がありません。ビジネスカジュアルを認める企業も増えていることから、セットアップスーツのニーズが高まっているのです。
ただし、重要な打ち合わせや営業といった「ここぞ」という場面においてはスーツが望ましいでしょう。セットアップスーツだとカジュアルすぎる印象を相手に与えかねません。企業によっては服装規定がある場合もあるので、勤務先でセットアップスーツの着用が認められているのかどうかを事前に確認しておく必要があります。
仮に着用が認められている場合においても、シーンに応じてビジネススーツとセットアップスーツを正しく使い分けることが大切です。
コーディネートがしやすい
セットアップスーツの特徴は、なんといっても上下の素材やデザインがそろっているということ。セットアップに合うトップスや小物を選びさえすれば、誰でも簡単にまとまったコーディネートを完成させることができます。セットアップスーツを採り入れたコーディネートは統一感があり、採り入れるだけでおしゃれに見せることができるのです。
また、セットアップスーツを1着持っているだけでコーディネートの幅が大きく広がるのもメリット。セットアップスーツは上下そろいで着るのはもちろん、ジャケットもしくはスラックスのみで着用することも可能です。ある日は上下そろいで着用、次の日はジャケットのみを着用してほかのパンツに合わせる、別の日はスラックスの上にほかのジャケットを合わせる、といった幅広い着こなしが可能になるのです。
プライベートシーンでも使える
セットアップスーツは着こなしの幅が広いことに加え、使えるシーンが多いこともメリットです。ビジネスカジュアルとしても活躍しますし、プライベートシーンでも幅広く着用することができます。
例えば、高級レストランへ食事に行く際や結婚式の二次会に出席する際など、ビジネススーツを着るほどではないけれどドレスコードを守る必要があるという場合、セットアップスーツが活躍。合わせるトップスや小物次第で、キチンと感とカジュアルさのバランスを調節できるのもポイントです。
合わせるトップスをTシャツやカットソーにしたり、靴をスニーカーにしたりすれば、よりカジュアルな印象になり普段着として気軽に着こなすこともできます。ポロシャツと合わせれば、もう少しカッチリした印象になります。このようにセットアップスーツは、あらゆるプライベートシーンに対応できる万能のアイテムなのです。
セットアップスーツのコーディネート例と着こなしのポイント
着用シーンが多く使い勝手のいいセットアップスーツですが、実際にどのような着こなしが考えられるのでしょうか。セットアップスーツを着こなすうえでのポイントについて、コーディネート例とともに紹介します。
コーディネート例1:ビジネスカジュアルでおしゃれを楽しむ
最初に紹介するコーディネート例は、ビジネスカジュアルとしてセットアップスーツを着用した事例です。スモーキーなブルーグレーのセットアップに合わせるのは、白のノーカラーシャツと黒のワラビーブーツ。トップスも靴も定番から少し外したものにすることで、ビジネスとしてのキチンと感を大切にしながらも、適度な遊び心を表現しています。
セットアップスーツ自体が細身のスッキリしたシルエットなので、カジュアル寄りのアイテムを合わせても、それほど崩した印象にならないのがポイントです。
このセットアップスーツに使われているのは、吸水性・吸汗性・速乾性に優れた高機能のポリエステル素材。ビジネスシーンで頻繁に着るのであれば、デザイン性だけでなく実用性にもこだわりたいところです。
コーディネート例2:シンプルに決めてキレイめカジュアル
2つ目は、カジュアルシーンにセットアップスーツを採り入れた事例です。個性的なウインドーペーンのセットアップに合わせるのは、白のサマーニットと淡いパープルのキャンバススニーカー。ニット帽をかぶって、適度にカジュアルダウンしているのもポイントです。セットアップスーツを着用すると全体的に統一感が生まれるため、シンプルなアイテムを組み合わせるだけでもおしゃれなコーディネートに仕上がるのです。
この例ではモノトーンを中心に構成していますが、ワンポイントとして赤や青といった鮮やかなカラーのトップスや靴を合わせるのもありです。Tシャツのような形のシンプルなものであれば、イラストや個性的な柄の入ったアイテムでも合います。セットアップスーツを使ったシンプルな組み合わせに慣れてきたら、より幅広いコーディネートにチャレンジしてみてもいいでしょう。
コーディネート例3:モスグリーンのセットアップを採り入れる
セットアップにはさまざまなカラーがありますが、モスグリーンのセットアップスーツは落ち着いた印象と適度なカジュアルさを併せ持っています。白や黒のアイテムが合うのはもちろんですが、ネイビーやピンクといったカラーとも相性がよく、モスグリーンのセットアップスーツは意外と汎用性の高いアイテムといえます。
この例ではトップスにシンプルな白Tシャツをチョイス。清潔感があるのでプライベートシーンのみならず、ビジネスカジュアルとしてもおすすめの組み合わせです。
白Tシャツのようなあまり主張しないものを合わせることで、セットアップ自体の存在感を際立たせることができます。反対に柄物や鮮やかな色合いのトップスを合わせれば、今度はセットアップがトップスを引き立てる名脇役に。モスグリーンのセットアップは、合わせるアイテムによって演じる役割を変えられる使い勝手のいい存在です。
着用シーンに合わせたトップス・靴選び
同じセットアップスーツでも、中にどんなトップスを合わせるか、足元の靴をどうするかによって与える印象は大きく異なります。大切なのは、着用シーンに応じて適切なアイテムを合わせること。
ビジネスカジュアルとして使うなら、トップスは白シャツが基本。企業や職種によっては白や黒のTシャツを合わせてもいいでしょう。足元はスーツと同様、黒や茶色の革靴を合わせるとカッチリした印象をプラスすることができます。テレワークが主体の職場であれば、華美すぎないスニーカーを合わせるのもおすすめ。キチンと感をベースとしつつ、動きやすくて機能的なビジネスカジュアルが完成します。
カジュアルシーンで着用する場合は比較的どんなトップス・靴でも合わせられますが、選ぶものによって印象が大きく変わる点は要注意。結婚式二次会のようなドレスコードのある場面では、ドレスシャツやキレイめのニットなどを合わせ、足元は革靴で整えるというのがベターです。
普段のお出かけやちょっとしたデートであれば、お気に入りのT シャツを合わせるもよし、パーカーのフードを出してカジュアルダウンするもよしです。足元はスニーカーや、夏であればサンダルを合わせてもかまいません。キャップやハット、ニット帽を合わせてもいいでしょう。
見た目の印象は色でコントロール
上下そろいのセットアップスーツは全体に占める面積が大きいアイテム。セットアップスーツの見た目は、コーディネートの印象を大きく左右します。ネイビーやチャコールグレーといった定番カラーのセットアップスーツを着用すればスッキリと落ち着いた印象になりますし、ライトグレーやベージュのセットアップスーツは春夏らしい爽やかな印象を与えます。見た目でどのような印象を与えたいか考えて、狙いに合った色のセットアップスーツを選びましょう。
着用シーンによっても採り入れやすい色が異なります。ネイビーやチャコールグレーが定番として人気なのは、ビジネスカジュアルとプライベートのどちらでも合わせやすい色だから。ブラックも使い勝手のいい色ですが、合わせるアイテムによっては重苦しい印象になることもあるため注意が必要です。
ライトグレーやベージュは、プライベートシーンを中心に活用したいカラー。定番カラーに比べると合わせるアイテムが限られてきますが、うまく合わせればおしゃれ度をアップできるはず。ただ、軽やかでラフな印象を与えがちなので、ビジネスカジュアルに使用する場合にはTPOを踏まえて判断することが必要です。
ぴったりすぎないサイズ感を意識する
セットアップを上手に着こなすには、自分の体形にあったサイズ感を意識することも大切。ビジネス用であれば、自分の体形にぴったり合ったサイズのスーツを選ぶのがいいですが、セットアップの場合、あまりぴったりすぎるとスタイリッシュとはいえません。
ジャケットのサイズはビジネススーツと同じく肩の位置が合っていることを確認したうえで、中に重ね着ができる程度の余裕を持ったサイズを選ぶのがおすすめ。逆に余裕がありすぎると全体的にルーズな印象になってしまい、セットアップが持つ軽快さが台無しになってしまいます。トレンド感を出すためにオーバーサイズを着用するのも有効ですが、体形とのバランスを考えて、適度なサイズ感を見つけたいところです。
スラックスのサイズで注目したいのが、足元がきれいに見えるサイズ感かどうかという点。セットアップスーツに初めてチャレンジするのであれば、アンクルパンツと呼ばれる8〜9分丈のものを選ぶのがおすすめです。丈を少し短めにすると足首に適度な抜け感が生まれ、洗練されたカジュアルさを演出できます。
ただし、オーバーサイズで着用するなら、丈も長めに合わせたいところ。アンクルパンツを基本としつつ、最終的には全身のサイズ感のバランスを見て丈の長さを決めるといいでしょう。
セットアップスーツのおすすめブランド
セットアップスーツ選びのポイントを解説してきましたが、どのセットアップを選べばいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。購入を検討している人に向けて、セットアップスーツのおすすめブランドを5つ紹介します。
MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュ ロンドン)
最初に紹介するおすすめブランドは、イギリスを代表するアウターウェアブランドのメインライン「MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュ ロンドン)」。このブランドのスーツ&ジャケットにおける代表モデルが「NEW BRIDGE(ニューブリッジ)」です。
ニューブリッジのセットアップは、スーツとジャケット専用で開発された「ウェザー ウーステッド ウール」という素材を使用。この素材は、ウール100%でありながら軽くて撥水性とストレッチ性に優れているのが特徴です。肩パッドが入っていないナチュラルショルダーであるのも特色で、イギリスの伝統的なスタイルを現代版にアップデートした上質なセットアップといえるでしょう。
ニューブリッジのなかでも特に注目したいのが、「FLEX JERSEY(フレックス ジャージー)」というラインのセットアップスーツ。スポーティーで快適なジャージー素材を、ニューブリッジのテーラード技術で仕立てた人気アイテムです。カジュアルにして端正なバランスが優れていることから、ビジネス、プライベートを問わず幅広く着まわせます。
LARDINI(ラルディーニ)
1978年にルイジ・ラルディーニが創業した「LARDINI(ラルディーニ)」は、プラダやバーバリーといった著名ブランドのOEM(他社ブランドの商品を製造すること)を長らく手がけてきました。OEMで培った高い縫製技術を生かし、1993年より自社名による独自ブランドでの事業をスタート。今ではイタリアを代表するファクトリーブランドとして知られるようになり、日本でも高い人気を誇っています。名前は知らなくても、ジャケットの襟元に付いた花形のブートニエール(ラペルピン)は見たことがあるのでは。
ラルディーニの製品はセットアップに限らず、全てイタリア国内でのハンドメイド。素材と縫製にとことんこだわり、ジャケットはオーソドックスな作りが特徴。正統派のフォルムだからこそ、合わせるアイテムや着用シーンを選びません。ビジネスカジュアルとして幅広く使えるほか、プライベートでもおしゃれしたい時におすすめのブランドです。
TAGLIATORE(タリアトーレ)
1960年創業のレラリオ社で2代目にしてクリエイティブディレクターを務める、ピーノ・レラリオによって1998年に立ち上げられたイタリアのブランド「TAGLIATORE(タリアトーレ)」。ピーノ・レラリオは製品のデザインとパターン、縫製といった全ての製造工程に携わっており、流行や人気を意識して商品を生み出すのではなく、ピーノのこだわりを全面に出した「ピーノスタイル」がブランドの特徴となっています。
タリアトーレのセットアップは全ての工程が自社工場で行われており、イタリアンテーラードの技術とスタイルをベースにした着心地のよさと洗練されたデザインは特筆もの。「タリアトーレ」とはイタリア語で裁断士のことで、美しくシェイプしたウエストが印象的なジャケットからは、タリアトーレの誇る卓越した裁断技術を垣間見ることができます。
タリアトーレは、バイヤーごとにボタンの種類やステッチの色などをカスタマイズできる「パーソナライズシステム」を採り入れているほか、日本人の体形に合わせた展開をしているのもポイント。日本人でも気兼ねなく、クラシカルでエレガントなセットアップを採り入れることができるのです。
Paul Smith(ポール・スミス)
1970年にイギリスのノッティンガムで誕生した「Paul Smith(ポール・スミス)」といえば、マルチカラーストライプのイメージを持つ人も多いはず。いまやイギリスを代表するファッションブランドとなったポール・スミスは「ひねりのあるクラシック」をスローガンとしており、素材にこだわった正統派ブリティッシュデザインのなかに遊び心を加えたアイテムを多く取りそろえています。
セットアップスーツも、ベースとなるのはイギリス紳士に愛されるクラシカルなデザイン。見た目はエレガントな雰囲気を醸し出しつつ、ステッチの色や裏地の模様などで遊び心をプラスするのがポール・スミス流です。スポーティーでカジュアルシーン向きのアイテムから正統派のビジネスアイテムまで幅広く取り扱っているので、着用シーンに合わせて選べるのも魅力です。
KASHIYAMA the Smart Tailor(カシヤマ ザ・スマートテーラー)
大手アパレル企業のオンワードが展開するオーダースーツブランドが「KASHIYAMA the Smart Tailor(カシヤマ ザ・スマートテーラー)」です。スーツのオーダーをベースとしていますが、ジャケットまたはスラックスのみのオーダーも可能なため、自身の体形に合ったセットアップを仕立てることができます。
日本企業ということもあり、縫製から品質検査に至る全ての工程を日本国内で実施。メイド・イン・ジャパンの高品質なアイテムが魅力です。また、製造工程における最新技術の導入や自社契約工場での製造といった工夫により、高品質でありながら比較的リーズナブルな価格設定も人気の理由。製造工程を短縮化したことにより、最短1週間という納期の短さを実現している点も特徴です。体形に合ったオンリーワンのセットアップを気軽に手に入れたいという人におすすめのブランドといえるでしょう。
まとめ
ビジネスカジュアルからプライベートまで、幅広いシーンで使えるメンズのセットアップスーツ。セットアップスーツを着ればコーディネートに統一感を持たせることができるほか、合わせるアイテムを替えるだけでバリエーションを増やすことができます。セットアップスーツはジャケットとスラックスを別で購入できるため、自身の体形に合ったスタイリングが可能な点も魅力。もちろんジャケットのみ、スラックスのみを採り入れコーディネートを考えるのもOKです。
コーディネートの幅が広がるセットアップスーツを上手に採り入れて、TPOに合わせたおしゃれを楽しんでみてはいかがでしょうか。