靴
革靴の人気ブランド特集
ビジネスに合う革靴の条件
2022.08.15(最終更新:2023.09.13)
革靴には長い歴史があり、知れば知るほど興味が増すものです。革靴の知識を身に付け、スーツスタイルに合った革靴を選ぶことはビジネスマンの基本と言えます。同時に、さまざまなシューズブランドの歴史や特徴を理解することも必要になります。この記事では、革靴の種類や魅力、おすすめのブランドについて解説します。
革靴の種類
革靴には多くの種類があり、それぞれに特徴や適した着用場面が異なります。まずは革靴の種類を押さえ、TPOに合ったものを選ぶよう心がけましょう。ここからは、革靴の代表的な種類について詳しく解説します。
内羽根
革靴はひも付きがよりフォーマルですが、ひも付きの革靴は内羽根式と外羽根式の2種類に大きく分けられます。両者の違いは、ひもを通す羽根の部分のしつらえ方にあります。ここでは内羽根式と外羽根式の違いについて説明します。
内羽根式とは、ひもを通す羽根の部分が甲の革と一体になっている革靴のことです。アッパーに上から切れ込みを入れたようなデザインになっており、ひもを締めると左右の羽根がぴったりとくっつきます。羽根は外側に開かず、凸凹が少ない滑らかなラインが特徴です。一般的に、内羽根式のほうが外羽根式よりもフォーマルだとされています。冠婚葬祭に参加するときは、なるべく内羽根式の革靴を用意するようにしましょう。内羽根式の黒のストレートチップなどを1足準備しておくと、どのような場面にも対応できるので便利です。内羽根式のルーツは英国王室にあるとされており、「バルモラル」とも呼ばれます。
外羽根
外羽根式の革靴では、羽根部分が甲にかぶさるように上から付けられています。ひもを緩めると羽根を大きく開くことができ、内羽根式に比べて着脱が容易です。ひもをきつく締めても左右の羽根がくっつくことはなく、比較的カジュアルなタイプだとされています。日常的なビジネスシーンや、休日のカジュアルスタイルでは外羽根式が便利でしょう。外羽根式の革靴は軍服が由来だと言われており、「ブルーチャー」などとも呼ばれます。
ストレートチップ
ストレートチップは、甲のつま先部分に横一文字の切り替えが入っている革靴です。切り替えのステッチ以外に装飾がない、シンプルなデザインのものだけがストレートチップとみなされます。「キャップトウ」と呼ばれる場合もあります。
最もフォーマルな革靴だとされており、フォーマルな場に出向くときはストレートチップを選んでおけば間違いありません。ビジネスシーンでも問題なく使えるため、最初の一足には最適なタイプです。ストレートチップがフォーマルである理由は、かつては革1枚で靴をきれいに成型できず、つま先を別の革で包んだストレートチップが最も美しかったからだとされていますが、諸説あります。
実用面でのストレートチップの特徴は、つま先で別の革に切り替えられていることで、つま先部分にシワが入りにくいことです。革靴の履きジワが気になる人は、ストレートチップを選べば美観が保ちやすいはず。幅広い場面で多用できるゆえにヒールがすり減りやすいのでこまめな点検・修理が重要です。
ウイングチップ
アッパーに鳥の羽のような形で切り替えが入っている革靴がウイングチップです。W字形のステッチに加えて、つま先部分の穴飾りであるメダリオンや、アッパー部分の穴飾りであるパーフォレーションが施されており、華やかな印象を与えます。「ブローグシューズ」や「メダリオンシューズ」などと呼ばれる場合もあります。
カジュアルな印象が強いウイングチップはフォーマルシーンには向きません。そもそもウイングチップの装飾は、ワークシューズとして履くうえで役立つように施されています。華やかな穴飾りは傷を目立ちにくくする、または通気性を良くするためのデザインだとされています。基本的に、ウイングチップはカジュアルな装いに合わせて履くようにしてください。クラシカルな雰囲気があるため、チェック柄や起毛素材のスーツなどと相性がいいです。
装飾が多いウイングチップには、アッパーのステッチがほつれやすいという難点があります。1箇所ほつれるとその周りも次々とほつれていくため、ほつれを見つけたら早めに対処することが大切です
プレーントウ
プレーントウはつま先部分にステッチや穴飾りなどの装飾がない革靴です。非常にシンプルなデザインで、作りや材質の良しあしが如実に表れます。内羽根式と外羽根式があり、穴の数が少ないほど優雅な印象を与えられます。
シンプルなプレーントウはフォーマルでもカジュアルでも問題なく使える万能型です。フォーマルな場面で使いたい場合は、内羽根式のプレーントウを用意するとよいでしょう。なお、先端が丸すぎるとカジュアルな印象が強まるため、適度にスタイリッシュなフォルムのものを選んでください。
プレーントウは使いまわしが利く分、頻繁に履くことによるソールの摩耗に注意したいものです。定期的にソールの厚みを確かめ、必要に応じて補強しておきましょう。
モンクストラップ
靴ひもを使わず、ベルトとバックルで留めるタイプの革靴がモンクストラップです。ベルトが1本のものをシングルモンク、2本のものをダブルモンクと呼びます。かつてアルプスの修道士(モンク)が履いていた靴が由来とされています。ひも靴に比べてカジュアルですが、ストラップで容易に着脱できる便利な革靴です。
スーツには基本的にひも靴を合わせるべきだとされていますが、唯一の例外がこのモンクストラップです。ビジネスからプライベートまで、幅広く使える革靴が欲しい人はモンクストラップを検討するのも一案です。シングルモンクのほうがドレッシーな印象がありますが、主流となっているのはダブルモンクです。
フィッティング性を高めるために、モンクストラップのバックルにはゴムが付いています。このゴムが伸びてしまうことがあるため、定期的に交換する必要があります。
ローファー
ローファーとは、アッパーにU字のステッチが入ったスリップオンのことです。着脱が容易であることから、ローファー(loafer)、すなわち「怠け者」という名前が付けられました。
ローファーの特徴は、ペニーローファーやタッセルローファー、ビットローファーなど、さまざまなデザインがあることです。それぞれ甲の部分に飾りが付いており、ペニーローファーはコインを挟めるストラップが、タッセルローファーは房飾りがあしらわれています。ビットローファーでは馬具のような金属が飾られていますが、これはGUCCI(グッチ)が生み出したデザインです。
ローファーはカジュアルな印象が強いため、スーツと合わせることはほとんどありません。タッセルローファーは比較的フォーマルなタイプですが、ジャケパンスタイルなどで採り入れるのがよいでしょう。
Uチップ(Vチップ)
アッパーにU字型のステッチが入った革靴のことをUチップ、またはVチップと呼びます。U字型の革を縫い合わせる方法を「モカシン縫い」といい、ひも靴としてはカジュアルなデザインです。基本的には外羽根式で、ステッチがV字に近づくほどシャープでエレガントな雰囲気になります。
Uチップは靴に厚みがあるため、甲が高い足や幅の広い足にもフィットしやすいのが特徴です。もともとハードな使い方ができるように作られた靴なので、カジュアルな場面で履くのに適しています。ただし、高級ブランドの優雅なモデルであればビジネスシーンで使うことも可能です。
ホールカット
ホールカットは、1枚の革のみを使って成形される革靴です。継ぎ目はかかと部分にしか見られず、装飾性を排した上品な雰囲気があります。ホールカットを作るためには包み込むようにしてアッパーを成形する必要があり、非常に高度な技術を要します。メーカーの技術力が試される革靴だといえます。
ホールカットは装飾がまったくないので極めて上品なのですが、一概にフォーマルとはいえません。いずれにしても、ホールカットを履くためには洗練された着こなしが求められます。また、上質な革をきれいに保つためにも、ホールカットは定期的なメンテナンスが欠かせません。
サイドエラスティック
サイドエラスティックとは、アッパーの側面にエラスティック、つまりゴムを使っている革靴のことです。ゴムはむき出しではなく、革帯などの装飾で隠されているのが一般的です。また、多くのサイドエラスティックではつま先部分に穴飾りが施されています。クラシカルな雰囲気があり、スリップオンでありながらスーツに合わせても見劣りしない上品さが備わっています。
サイドエラスティックのデメリットは、長く履いているとゴムが劣化してフィッティングが悪くなることです。「ゴムが緩んできた」と感じたら、早めの交換を心がけましょう。
ビジネスシーンに合う革靴の条件とは
ビジネスシーンに合う革靴にはいくつかの条件があります。まず、適切な種類の革靴を選ぶことが大切です。ビジネスシーンでも問題なく履ける革靴としては、ストレートチップとプレーントウの2種類が挙げられます。黒であれば冠婚葬祭にも使えるので、1足は用意しておくのが賢明です。ビジネスシーンなら内羽根式・外羽根式のどちらも選べますが、フォーマルな場に赴くときは内羽根、外回りのときは外羽根といったように、TPOに応じて使い分けるのもいいでしょう。ストレートチップとプレーントウよりはややカジュアルですが、モンクストラップも選択肢のひとつに加えられます。
革靴の色は黒または茶が鉄則です。重厚感のあるスタイルには黒が、軽やかなスタイルには茶がよく合います。同時に、ベルトや腕時計などの革製小物と靴は色をそろえるようにしてください。革靴の素材については、安価な合成皮革よりも見た目が上品で長持ちする本革を選ぶほうが賢明でしょう。
メンズビジネスシューズの人気ブランド
上質で長く使える革靴を選ぶためにも、人気と実力を兼ね備えた有名ブランドを知っておくことをおすすめします。ここからは、メンズビジネスシューズの人気10ブランドを取り上げて紹介します。
JOHN LOBB(ジョンロブ)
英国の数あるブランドのなかでも、「キング・オブ・シューズ」と呼ばれている王室御用達のブランドが「JOHN LOBB(ジョンロブ)」です。1866年、靴職人のジョン・ロブによってロンドンで開かれたブティックがジョンロブの歴史の始まりです。ブティックをオープンして以来、世界最高峰の品質や技術が評判となり、ジョンロブは富裕層の人々がこぞって注文するブランドとなりました。その後、一時は経営難に陥りましたが、エルメスグループの傘下に入ることで現在も靴の生産を続けています。
ジョンロブを代表するモデルが内羽根式ストレートチップの「シティーⅡ」で、シンプルでスタイリッシュなデザインと履き心地の良さを兼ね備えたマスターピースです。その他、ダブルモンクの原形「ウィリアム」やエレガントなウイングチップ「ダービーⅡ」など、一見の価値がある美しいモデルがそろっています。
Edward Green(エドワード・グリーン)
「Edward Green(エドワード・グリーン)」はジョンロブと並んで英国を代表するブランドです。1890年、エドワード・グリーンによってノーサンプトンで設立され、卓越した技術と洗練されたデザインで現在の地位を確立しました。伝統的なグッドイヤーウェルト製法で、エレガントかつスタイリッシュな革靴を現在も生産しつづけています。
エドワード・グリーンの代表モデルとしては、「チェルシー」や「ドーバー」などが挙げられます。「チェルシー」はアッパー側面のスワンネックステッチが特徴の内羽根式ストレートチップです。優美なデザインのUチップ「ドーバー」は、モカシンシューズの王様といえる存在です。
J.M. WESTON(ジェイエムウエストン)
フランスで生まれ、美しい靴によりファッション文化に色を添えてきたブランドがJ.M. WESTON(ジェイエムウエストン)です。ジェイエムウエストンの歴史は、エドゥアール・ブランシャールが1891年にフランスのリモージュ地方で設立した工場から始まります。1927年にはパリへの出店に伴い現在の「ジェイエムウエストン」へと社名を改め、パリの文化を象徴するようなモデルを次々と生み出します。
ジェイエムウエストンの代表モデルは、ブランドのアイコンシューズであるローファー「180」や、「ゴルフ」の相性で親しまれる「641」などです。Uチップの「641」はゴルフシューズを基にデザインされたユニークな革靴で、どんな気候にも対応できるタフさから「エディターズシューズ」とも呼ばれています。
Alden(オールデン)
アメリカントラッドの意匠を受け継ぐ、アメリカを代表するシューズブランドが「Alden(オールデン)」です。1884年、オールデンはチャールズ・H・オールデンによってマサチューセッツ州のミドルボロウにて設立されました。当初は紳士靴の受注生産などを専門にしていましたが、現在では既成靴の最高峰ブランドとしてアメリカに君臨しています。
オールデンの革靴の特徴は、とにかく履き心地がいいことです。医療用矯正靴の分野にも進出しており、快適で歩きやすい靴作りを徹底的に追求しています。オールデンの代表モデルとしては、外羽根式プレーントウの名作「990」や、万能型のタッセルローファー「664」などが挙げられます。
Crockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)
「Crockett&Jones(クロケット&ジョーンズ)」は、豊富な種類の木型を保有していることで知られるブランドです。1879年に英国のノーサンプトンでチャールズ・ジョーンズとジェームス・クロケットによって設立されました。伝統的な製法を保ちながら、高品質な革靴を生み出すブランドとして現在も世界中で愛されています。
クロケット&ジョーンズを代表するモデルが、内羽根式ストレートチップの「オードリー」です。気品が漂うシンプルなデザインで、さまざまなシーンに対応できる汎用性の高さがあります。そのほか、ホールカットの「アレックス」やシングルモンクの「サヴィル」なども高い人気を誇っています。
Tricker's(トリッカーズ)
英国のシューズブランドのなかでもとりわけ長い歴史を持つのが「Tricker's(トリッカーズ)」です。トリッカーズは1829年、ジョセフ・トリッカーによってノーサンプトンで設立されました。トリッカーズの革靴は武骨な雰囲気が特徴で、カントリーブーツやウイングチップの定番ブランドとして知られています。
熟練の職人が1足の靴を1人で仕上げるベンチメイド製法によって、他のブランドとは違った味わいが感じられるのもトリッカーズの魅力です。トリッカーズを代表するモデルとしては、カントリーブーツ「モールトン」やウイングチップ「リチャード」、外羽根式プレーントウ「ロバート」などが挙げられます。
JOSEPH CHEANEY(ジョセフ チーニー)
「JOSEPH CHEANEY(ジョセフ チーニー)」も英国ノーサンプトン発祥の由緒あるシューズブランドです。1886年、ジョセフ・チーニーによって設立されたジョセフ チーニーは、伝統的な製法を守りながらトレンドを採り入れた靴作りで現在も注目を集めています。OEM生産でも大きな需要があり、世界中のアパレルブランドがジョセフ チーニーに革靴の製造を委託しています。ジョセフ チーニーの代表モデルは、内羽根式ストレートチップ「ALFRED」やシングルモンク「WALTER」、外羽根式プレーントウ「ALDERTON」などです。
SANDERS(サンダース)
「SANDERS(サンダース)」もまた革靴の聖地ノーサンプトンで生まれた名門ブランドのひとつです。1873年、ウィリアム・サンダースとトーマス・サンダースの兄弟によってサンダースは設立されました。
サンダースはイギリス国防総省向けに供給される革靴の製造を担っています。官公品の製造はライン全体の約半分を占めており、サンダースはそこから安定した利益を得ています。それゆえに比較的安価に良質な革靴を製造でき、コストパフォーマンスに優れた製品を世界中に提供できるのです。ノーサンプトンの革靴をなるべく安く手に入れたいのであれば、まずはサンダースを検討するとよいでしょう。
サンダースのオーソドックスなモデルとしては、Uチップ「Military Apron Derby Boots」や外羽根式プレーントウ「Military Officer Shoe」などが挙げられます。
Paraboot(パラブーツ)
「Paraboot(パラブーツ)」はフランスを代表するシューズブランドです。パラブーツの歴史は、フランス東部の町イゾーで1908年にレミー・リシャール・ポンヴェールによって設立された靴工房から始まります。当初はアルピニスト向けに登山靴を製造していましたが、現在はスーツに合わせられるUチップやダブルモンクなどのモデルも人気を博しています。登山靴に由来する堅牢な作りと、ビジネスにもカジュアルにも対応できるファッション性の高さがパラブーツの魅力です。代表的なモデルとしては、チロリアンシューズの「ミカエル」やUチップの「シャンボード」などがあります。
三陽山長
日本人であればぜひ知っておきたい国産シューズブランドが「三陽山長(さんようやまちょう)」です。2001年にブランドを立ち上げて以来、日本人の足型に合った革靴を追求しつづけています。「品質本位」というコンセプトを一貫して掲げ、日本人の感性を生かしたスタイリッシュなデザインで人気を集めています。三陽山長の定番モデルは内羽根式ストレートチップの「友二郎」です。オーソドックスなデザインでありながら、「品質本位」にこだわる三陽山長の気概が十分に感じられる逸品です。
まとめ
革靴にはさまざまな種類があり、着用に適したシーンはそれぞれ異なります。TPOに合った革靴を選ぶために、まずは種類ごとの特徴を理解しておきましょう。特に、フォーマルシーンやビジネスシーンで場違いな靴を履くと礼を失する恐れがあるので注意が必要です。また、優れた革靴を生み出すシューズブランドは世界中に存在します。今回紹介したなかから、お気に入りのブランドを探してみてはいかがでしょうか。