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週末の過ごし方

作家・吉田修一が語る
「前進を忘れないグッチの粋」

2021.10.08

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作家は机に向かって執筆するのが日常ですが、映画の制作発表会や文学賞受賞など、たまにハレの機会をいただくことがあります。そんなとき、私はもっぱらグッチのタキシードやスーツを選んでいます。特別な日に着るスーツやタキシードは、自分にとっていわば戦友のような存在で、以前はいろいろなブランドを試していました。どこもそれなりにすてきなのですが、グッチに出合ったとき、ほかでは得られない満足感があったんです。これだと思ったんですね。

服において、最も基本となるアイテムと言えば、やはり白いシャツではないでしょうか。グッチの白いシャツに初めて袖を通したとき、すぐに上質であることがわかり、ボタンを留めると、すぐに造形の美しさがわかったんです。その感覚は、ほかでは味わえないものでした。また確か開高 健だったと思うのですが、「男のファッションは紺で選べ」という言葉を残しています。紺はスーツにしろジャケットにしろ、ニットにしろ男性のファッションの基本中の基本となる色です。そこを選ぶ指針にしろという意味だと思いますが、グッチの紺はどこよりも良かったんです。以来ずっと頼りにしているブランドです。

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ブランド100周年を祝す「Gucci Garden Archetypes」展が、東京の天王洲で2021年10月31日まで開催中。グッチのクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレが6年間にわたって手がけてきた広告ビジュアルの世界を、複数の空間で体感できる。最初に現れるのは、すべての空間の舞台裏と思われるコントロールルーム。アレッサンドロの脳内を垣間見ているようだ。
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ベルリンが舞台になった2016年春夏のコレクションから、1980年代のナイトクラブのトイレが再現されている。ブースのドア下の隙間から、男女の足元が見える。

以前、銀座のショップへ紺のジャケットをオーダーしに行ったときのことです。スタッフの方に裏地はどれにするかと尋ねられたんですが、ドロワーから次々に現れたその生地たちが、驚くぐらい極彩色の華やかな柄ばかりだったのが忘れられません。完璧な紺のジャケットはとてもシックな存在ですが、背にはこんな絢爛(けんらん)豪華な文様を隠しているなんて、ものすごく粋なことではないでしょうか。

たとえば安土桃山時代、大胆な構図ときらびやかな色彩で知られる狩野派の絵師たちは、織田、豊臣、徳川が贔屓(ひいき)としたことで知られ、戦国時代の文化をけん引してきました。私はグッチのシックさと大胆さには、狩野派が活躍した安土桃山文化に通じるものを感じています。またそんな文化を生み出すようなパワーを持っているのが、現代においてはブランドと言い換えることができるのかもしれません。

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2016年秋冬コレクションの広告キャンペーンのテーマであった「東京」が表現されたスペース。まばゆい光を放つデコトラと数万個のスパンコールで、輝きつづける東京の夜を表現している。

100周年を迎えるというグッチの『GUCCI GARDEN  ARCHETYPES』展覧会が現在開催されています。そこには、現クリエイティブ・ディレクターによるプロモーション映像の世界が広がっていました。床から天井まで蝶や鳩時計、ぬいぐるみが飾られるフェティッシュな部屋や、デコトラをはじめまばゆいネオン、色とりどりの花とフローラルな香りに満たされる空間など、それぞれ全く異なる世界が広がっています。

全く異なる世界が目の前に現れるたびに、私のように長くグッチから離れないファンの気持がわかってきたような気がしました。蝶やぬいぐるみやデコトラは、いわば完璧な紺の裏地なのではないでしょうか。グッチは完璧な紺というモノづくりにおいての王道、トラッドを熟知しています。そのうえで、デコトラやフェティッシュなディスプレーといった、人をドキッとさせる裏の面を出してくる。これで裏も完璧な紺ではまっとうすぎますが、忘れられないような絢爛豪華さを持っているのは大変粋。このグッチの表と裏双方に、私のように多くの人が魅せられているように思うのです。

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2018年春夏コレクションでフィーチャーされたアーティスト、イグナシ・モンレアルの描く壁画は宗教画を思わせるような雰囲気。

またこの展覧会では、グッチのクリエーションが、擬人化した動物や天使たちと一緒に描かれた画に囲まれる間がありました。まるでイタリアドゥオモで出合う見事な宗教画のようであり、グッチ創設の地・フィレンツェで活躍したダヴィンチやミケランジェロ作品をほうふつとさせました。現代におけるルネッサンスを感じたんです。

世界中の人を魅了するグッチですが、この絵のような宗教的なところがあるのかもしれませんね。先ほど文化を生み出すパワーがあるのがブランドと言いましたが、グッチには加えて宗教のように人間の力が及ばない、人智を超えた何かがあるように思います。それを100年という長きにわたって積み重ね、更新してきたのでしょう。

厳しい審美眼を持っていたことで知られる伊丹十三は、生前グッチのレザーグッズを愛用していたそうです。一流を愛する人に認められる技術を持ちながら、一方で今をけん引するユニークさをはらんでいる。伝統だけでない、常に前進しているブランド。しかも驚くべきパワーで。それがグッチだと、この展覧会を訪れ確信しました。(談)

くくれないクリエーション、とどまらないブランド アレッサンドロ・ミケーレとグッチ

Gucci 公式サイト/gucci.com

プロフィル
吉田修一(よしだ・しゅういち)
長崎県生まれ。1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年「パレード」で第15回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞。2007年「悪人」で第34回大佛次郎賞と第61回毎日出版文化賞を受賞。2010年「横道世之介」で第23回柴田錬三郎賞、2019年「国宝」で第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞を受賞した。2016年より芥川賞選考委員を務める。最新刊「オリンピックにふれる」。

Text:Toshie Tanaka
Photograph:Takahiro Sakata

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