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くくれないクリエーション、とどまらないブランド
アレッサンドロ・ミケーレとグッチ
[センスの因数分解] 

2021.10.04

田中敏惠 田中敏惠

くくれないクリエーション、とどまらないブランド<br>アレッサンドロ・ミケーレとグッチ<br>[センスの因数分解] 

クリエーティブの世界において、ひとつのジャンルではくくれない人がいます。例えばスティーブ・ジョブズはコンピュータで、ポルシェ博士は自動車の世界で発信をしてきました。しかし彼らがクリエートしたのは、そのジャンルにおけるプロダクトだけではなく、新しい時代であり価値観だったといえるのではないでしょうか?

グッチの現クリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレは、ブランドの一時代を築いたトム・フォードに見いだされたことでも知られています。トムと彼に続くクリエイティブ・ディレクターであったフリーダ・ジャンニーニの元でキャリアを積み、2015年に現ポジションに就任。彼のコレクションは、発表後またたく間に世界中を魅了していきます。

そんなアレッサンドロが、かつてモード誌のインタビューで興味深いコメントを出していました。それは、「ファッションは瀕死の状態にあると思う。ならば死なせてあげればいい」といった内容でした。アレッサンドロが身を置いている世界は、紛れもなくファッション業界のはず。しかし、その世界を冷静すぎるほど客観視しています。言い換えれば、つまり、彼はファッションを生み出しているという意識が希薄ということかもしれません。ならばグッチのクリエーションをけん引する彼が生み出しているものとは、いったいなんなのでしょう……。

923日より1031日まで、今年創設100周年を迎えるグッチの、特別でユニークなエキシビションが開催されています。『Gucci Garden Archetypes』展と名付けられ、アレッサンドロがクリエイティブ・ディレクターとなった2015年から2020年までの広告キャンペーンの世界が、空間として誕生しました。東京を疾走するデコトラやパチンコ店のネオンに彩られたきらびやかさ、飛行機のキャビンに馬と同乗するシーン、1968年パリで起こった5月革命を再現するなど、美しくも刺激的な世界を回遊することができ、まるでアレッサンドロの頭の中を体感できるような仕掛けになっています。そしてこの広告キャンペーンにこそ、アレッサンドロが生み出しているものはなにかという、答えのヒントが見え隠れするのです。

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No need to worry(恐れるなかれ)Liberté、Égalité、Sexualité(自由、平等、セクシュアリティ)という言葉や、グッチ ビューティーのリップスティックを塗るすきっ歯のパンクシンガー。そこに内在するメッセージは、自己の肯定であり、よりよき未来のためのポジティブなキーワードです。全身フラワーパターンのメンズスーツや宇宙人が身にまとうドレスなど、その刺激的なビジュアルについ目を奪われがちですが、アレッサンドロが発信するグッチは、斬新なアイテムだけにとどまっていません。違うなにかが、現れてきます。

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グッチがクリエートしているものが、恐れがない、どんな自己も受け止め美を見いだせる、自由と平等の共存する世界であるのならば、それはやはりファッションの範疇(はんちゅう)だけではなく、もっとマクロな視点で創造をしているといえるのではないでしょうか。だからこそ、彼はファッションという存在が終わりを遂げる時が来ていると客観視できるのです。なぜなら、もっと大いなる創造に意識があるのですから……。

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昨今、多くのラグジュアリーブランドのデザイナー就任と交代のサイクルが活発となり、ブランドが就任したスターデザイナーの色に染まってしまうケースも少なくありません。また、ブランドのロゴタイプの均一化にみられるように、マーケティングの結果ばかりを重視するからか、同じようなアプローチになってしまうことも散見されます。しかしグッチは、先々代のクリエイティブ・ディレクターからキャリアを積んだ、いわゆる生え抜きがブランドをリードしており、どことも似ない、クリエーティビティーあふれた作品を生み出しつづけています。それが意味するものとは、オリジナリティーというブランドにおいての本流であり、ファッション=流行とは一線を画すようです。この有り様こそ、アレッサンドロの大いなるビジョンを支えている骨幹といえるでしょう。

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今年、創設100周年を迎えたグッチ。フィレンツェでバッグや馬具を扱う高級なレザーグッズ ショップとして生まれたイタリアンブランドの雄は、自分たちのヘリテージを脈々と継承するだけにとどまらず、新しいクリエーションにチャレンジしつづけています。そして、それらは大きなビジョンと借り物ではないアイデンティティーから生み出されているのです。いま、最も注目されるクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレという人物を育て、抜擢してきた背景には、そんなブランドのアイデンティティーが投影されています。彼はそれを、グッチの刺激的なコレクションや広告キャンペーンへと変換し、私たちを触発、さらには美しい世界へ導くメッセージとして投げかけているのです。

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GUCCI GARDEN ARCHETYPES
会場 : B&C HALL・E HALL 東京都品川区東品川2-1-3
会期 : 2021年9月23日(木・祝)– 10月31日(日)
時間 : 11:00 – 20:00(金・土は21:00まで)
※最終入場は閉館時間の30分前まで
入場 : 無料、事前予約制、グッチ公式LINEアカウントより事前予約受け付け中。
今後の状況によっては、事前の予告なく変更となる可能性もあります。本エキシビションの最新の状況については、グッチ ジャパン クライアントサービス(0120-99-2177 受付時間 10:00-21:00)までお問い合わせください。また混雑時にご来場人数を制限する場合がありますので、あらかじめご了承ください。
本エキシビション会場では、ご来場者の安全に配慮するため、感染症対策を徹底して行っています。
公式サイト/gucci.com

プロフィル
田中敏惠(たなか・としえ)
ブータン現国王からアマンリゾーツ創業者のエイドリアン・ゼッカ、メゾン・エルメスのジャン=ルイ・デュマ5代目当主など、世界中のオリジナリティーあるトップと会いながら「これからの豊かさ」を模索する。著書に『ブータン王室はなぜこんなに愛されるのか』『未踏 あら輝 世界一予約の取れない鮨屋』(共著)、編著書に『Kajitsu』、編書に『旅する舌ごころ』(白洲信哉)『アンジュと頭獅王』(吉田修一、企画)ほか。
https;//kkimiterasu.net

Photograph & Movie:Takahiro Sakata

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