週末の過ごし方

『EUPHORIA/ユーフォリア』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #8

2021.10.14

『EUPHORIA/ユーフォリア』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #8

現代社会を生きる、Z世代のリアルな葛藤を描く

物語はルーを中心に周りの同級生ひとりひとりにスポットを当てながら進んでゆく。いつの時代にもあるスクールカーストは今も健在。多様性が認められつつも差別はなくならない。SNSでの評価におびえ、アイデンティティーを確立させることへの焦り。親子関係、自己顕示欲、セックス、恋愛、暴力、ドラッグ。この作品はそれを美化せずリアルに生きづらさを描くことで、大人たちに問いかけているのだ。

そんななかでも小さな希望を見いだし、幸せや愛を求めて葛藤しながら生き抜いてゆく。まさにZ世代版『アメリカン・ビューティー』と言えるだろう。

この作品は、それぞれ大きな意味を持ってキャスティングされている。驚きを隠せなかったのはゼンデイヤ。ディズニーチャンネル出身で清楚なイメージの彼女が、何も希望が持てない脱力感たっぷりのドラッグ依存症を演じるということに意図を感じる。エミー賞で主演女優賞を獲ったのも納得、みごと実力派女優として視聴者を魅了した。

トランスジェンダーのジュールズを演じたハンター・シェイファーはトランスジェンダーモデルでもあり、LGBTQの活動家でもある。学校では控えめにしているが、ネットの世界では2次創作小説を書き5万人以上ものファンを獲得しているキャットを演じたハービー・フェレイラは、ボディポジティブの活動家だ。いま最も影響力のあるZ世代キャストを起用することによって、狙い通りトレンドを作り上げていった。

時代の変化をリアルに感じたのは、ジェンダーの問題やコンプレックスについて、本人たちの葛藤は描かれているものの、周りは受け入れているということ。昔のようにそれを悲劇的に扱う時代はとっくに終わっているのだ。痛々しくも前向きに生きてゆく彼らは美しい。

ドレイクが製作総指揮に加わっていることもあり、使用楽曲にもセンスが光る。ミドルスクールのHIPHOPやダブステップ、ビヨンセ、ビリー・アイリッシュ、シーアなどさまざまな楽曲がA24の映像技術によってミュージックビデオのように楽しめ、このシリアスな作品にPOPさを加え青春を淡く描く。これがまたとんでもなくおしゃれなのだ。

淡い恋模様とシリアスに重く圧(お)し掛かってくる現代社会の闇が混沌と描かれてゆく中毒性の強い作品。多少過激な描写もあるため、好き嫌いは分かれるかもしれないが、現在という時代を知るにはこの作品がいちばんリアルと言えるだろう。

現在HBO作品が観られるのはU-NEXTのみとなっている。シーズン1全8話のエピソードと、スペシャルエピソードとして2作品がU-NEXTにて配信中。お見逃しなく!!

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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