特別インタビュー
伊勢丹新宿店 メンズ館 5階
メンズテーラードクロージング スタイリスト 木下寛隆さん
この人から買いたい、この一品
2022.02.15
本気でやってたダンス&ボーカル。いまでも、ちょっと自信あります
じつは接客業は入社するまで経験がありませんでした。人と話すことが好きなので、楽しんで仕事に取り組んでいますが、本当にお客さまに相応しい商品を提供することとは、どういうことなのか、考えだすと深くて難しい世界だなと思っています。毎日、学ぶことが多い仕事ですね。
2月にリフレッシュオープンする5階メンズテーラードクロージングでは、つねに多くの商品知識を求められます。入社直後は、それまで学生だった私には聞いたことのない、読み方もわからないイタリア語のブランド名を覚えるのに苦労しました。それでも一着ずつ自分で袖を通してみたり、歴史を調べたりしながら商品知識を蓄えていきました。自分でいうのもなんですが、わりとコツコツ型なんです。
紳士服を志望したのは、母親の影響です。母も若いころ、百貨店の紳士服売り場で働いていたこともあり、子どものころから連れられて紳士服売り場を見て回っていました。子ども心ながらにカッコいいなと思っていて、いつかこういう服を着たいとずっと思っていたんです。それに曽祖父がテーラーだったということもあり、紳士服に携わるのは血筋なのかもしれません。
母親から影響を受けたものがもうひとつありまして、それは歌とダンス。母は百貨店を退職してから一時、歌手デビューを控えていたこともあるそうです。私も小学5年生から本格的にダンスを習い始めました。ヒップホップをメインに、高校時代は文化祭で踊るたびにチヤホヤされたとは思いますが、大学まで硬派として踊っていました。
いまは、すっかり面影ないですね(笑)。髪型も服装もすっかり変わりましたし、自宅で身体を動かすぐらいかな。ダンサー時代の服はクローゼットの奥深くに仕舞ってしまいましたし、プライベートでも着ることはほとんどありません。でも歌と踊りは、いまでも対応できます。飲み会などあれば結構盛り上がると思いますが、入社以来ずっとコロナ禍で、お披露目する機会が無く……。社内でも、僕が踊れることを知っている人は、ほとんどいないと思います。
「この人から買いたい」記事に、ほかのフロアの女性スタイリストでダンスをされている方が出ていらっしゃいました。そのような先輩がいらしたなんて、知らなかったです。でもいちばんビックリしたのは、今回の取材に先立ちアンケートを提出したら、メンズテーラードクロージングの先輩に「私もブレイクダンスやってた」と言われたこと。5階フロア、クラシックな装いとは裏腹に、かなり個性的な先輩が多いんですよ。
お洋服の提案も基本はブリティッシュかイタリアンクラシックがベースですが、これまで自分が培ってきた感性を元に、「こんなコーディネートがあるのか」と驚きと発見を与えられるようなお店づくりをしていきたいと思っています。