週末の過ごし方
『窓辺の女の向かいの家の女』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #14
2022.02.24
アナが目撃したものとは?
すぐさま通報するも、現場を訪れた警察は何事もなかったと言う。果たしてアナが目撃したのは真実か、それとも幻覚なのか? 自身が目の当たりにしたものを証明するため、アナは詮索を始めるが、次第にアナ自身も事件に巻き込まれてゆく……。
アナの視点でストーリーは進んでゆくが、薬とワインという組み合わせゆえに幻覚を引き起こすこともあるため、何が現実で、何が幻覚なのかが曖昧に描かれている。そしていつのまにかアナの妄想が、まるで真実かのようにも思えてくる。
実はこの作品、正統派ミステリーと見せかけて、ダークコメディーの要素も持ち合わせている。ヒッチコックの『裏窓』のような設定であるため、そのような心持ちで挑むと肩透かしをくらう。SNSでの酷評はそのせいであろう。
この作品はタイトルのくどさが示唆する、クスッと笑えるダークコメディーミステリー。あまりに突飛な展開をコメディーとして味わえなければ、この作品を楽しむことはできない。
アナが手にしてる本のうさんくささ、向かいの男性の変わった趣味、永遠に直らない郵便ポスト、ファーゴを連想させる警官たち、数えきれないほどツッコミどころ満載だ。
“ある出来事”から数年たっても立ち直れず、自分の殻に閉じこもっていたアナ。ワインを浴びるように飲みながら、危なっかしくも真実に向かって奔走する姿は、観ていて応援したくなる存在だ。
ミステリーの醍醐味(だいごみ)である謎解きは、視聴中になんとなく犯人を予想できてしまうものが多いが、この作品に関しては想像の域をはるかに超え、意外すぎる展開にどんどん引き込まれてゆく。アナの探偵ごっこが、皮肉にもどんどん新しい犯人候補を生み出してしまう。
1話30分全8話だが、2時間もののサスペンスを観ている感覚ですらっとテンポよく完走できる作品。アナと共にワインを楽しみながら観るのもいいかもしれない、構えることなく気軽に楽しめるダークコメディーサスペンス。仕事から解放された週末に、ぜひ一気見してほしい作品だ。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo