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『FLEABAG/フリーバッグ』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #15

2022.03.03

『FLEABAG/フリーバッグ』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #15

数々の賞を受賞し高い評価を得ていても、日本ではあまり話題にならない作品は多い。この英国発のコメディドラマ『FLEABAG』もそのひとつだ。

主演のフィービー・ウォーラー゠ブリッジは、脚本・製作も手がけ、英国中から「天才!」と絶賛の嵐。なんと当時33歳という若さで、エミー賞コメディ部門の最優秀主演女優賞、最優秀脚本賞、作品賞を獲得したかなりの逸材である。イギリスでは放送されるたび、彼女が着た服が飛ぶように売れ、作中に出てくるジントニックの缶ですら売上を伸ばし、社会現象となった。

フィービー演じる主人公には名前がない。一度も出てこないのだ。fleabag(フリーバック)とは、“ノミのたかった、みすぼらしい人、薄汚い恰好をした人”などの意味があるが、恐らく主人公のことを指しているのだろう。視聴者が試されているような演出だ。

ロンドンに住み、小さなカフェを経営している彼女は、異常なほど性欲が強い。衝動的で、皮肉屋、自由奔放、窃盗癖までもある。結婚相手を欲しているわけでもなく、恋人と付き合ったり別れたりを繰り返し、相手がいなくなればすぐ寝る相手を探しはじめる。

友人と始めたカフェは経営不振、銀行に融資を求めるも、とんだハプニングでチャンスを逃す。カフェで飼っているハムスターは、時折ネズミと勘違いされ、客は逃げ帰る。

母は数年前に他界し、ゴッドマザーは自信過剰な芸術家で、いつも嫌味を言ってくる。久々に父に会いに行けば、帰りのタクシーを呼ばれてしまう始末。姉はやり手のキャリアウーマンだが、柔軟性のない真人間。くだらない下ネタばかり言う旦那と、姉のことを変な目で見つめる連れ子もいる。

本作で特徴的なのは、第4の壁を越えて「彼の~最高!」「この人は~だ」と視聴者に向かって友人のように語りかけてくるところだ。時にはツッコミでもあり、眉をひそめこちらに同意を求めてきたり、セックスの具合までも視聴者に向かって話しかけてくるのだ。

しかしすべてが本音というわけではない。物言いたげな表情だけを向けてくるときもあれば、強がっているときもある。それに気付いたとき、すっかり名もなき彼女に夢中だと気付くことだろう。

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