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『Shameless/シェイムレス 俺たちに恥はない』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #19
2022.03.31
ホームドラマと言えば、温かい家庭で、家族が共に助け合い、笑いあり涙ありのハートフルなものが定石かもしれないが、シカゴの貧困層が多く集まる地域“サウスサイド”で暮らすギャラガー家の波瀾万丈(はらんばんじょう)な毎日を描くこの作品は、下品で、過激で、間違っても家族と一緒に観てはいけないホームドラマである。
父親のフランクは、姉の年金を不正受給しながら働きもせず、毎日ドラッグや酒に溺れて生きている。毎朝、家のどこかで倒れるように眠っていたり、時には道端で眠っていることも。何かしらの病を患っている女性をだまして居候していたり、まったく家に帰らず子育てもせず、6人の子どもたちからは呆れられている。
双極性障害を患っている母親は、ふらっと気が向いたときに現れ、家族をさんざんかき乱したあげく、嵐のように去ってゆく。家族のお金を無断で使い込んだり、子どもたちと楽しむためなら後先考えずなんでもしてしまったりと、何かとお騒がせな存在だ。
この一家を支えているのは長女のフィオナ。高校を中退し、仕事を掛け持ちしながら子どもたちの面倒をみている。貧困層のかわいそうな子と見られるのを心底嫌い、どんなにお金がなくても自力で乗り越えようとするたくましさを持つ。しっかりしていながらも、恋愛面では大胆で豪快。しかし次から次へとトラブルを起こす家族を優先するあまり、なかなか恋人とうまくいかない。
長男のリップは窃盗やドラッグなど、この界隈(かいわい)では当たり前の悪事はひと通りしているものの、かなりの秀才。替え玉受験で稼ぎながら、フィオナと共に家族を支えている。
次男のイアンは、シャイでギャラガー家にしてはおとなしい男の子。ゲイであることを隠していたが、家族は既に気づいている。一度決めたらやり抜いてしまう頑固な面もあり、突拍子もない行動をすることも。
次女のデビーはどうしようもない父も、母も、隔てなく愛せる優しい女の子。家族のささいな変化にも気づくしっかり者だが、ときどき早く大人になりたいという願望を暴走させてしまう。
三男のカールはかなりの問題児。学校では同級生を殴りまくり、退学を迫られることも。唯一カールだけは父を見捨てず関わりを続けるが、ふたりがすることといえば強盗や密売など、たいがい犯罪行為だ。
四男で新生児のリアムは、褐色の肌色であることから実の親は不明だが、だれもそんなことは気にせず、大切に育てられている。
この「ギリギリ家族」のたくましく生き抜く力はとてつもない。給湯器が壊れたならば、最近亡くなった人を探し、盗み出す。託児所が足りない!とかぎつければ夏のあいだギャラガー家を託児所にして、冬を越すお金を工面する。常にお金がない生活のなかで、行き当たりばったりではあるがなんとか生き抜こうと絞りだす知恵には、毎回面食らうものばかりだ。