週末の過ごし方
ノンアルカルチャーをけん引
深遠なる水出し茶の世界
【センスの因数分解】
2022.04.01
飲食業界に突如現れた「アルコール提供自粛」という現象は、レストランジャーナリズムに思わぬ選択肢を生みました。水出し茶です。
フードとドリンクのペアリングは、ここ数年のムーブメントであり、世界のベストレストラン50やミシュランガイドに名を連ねる有名店の多くも採用しています。ワインのみならず、日本酒やクラフトジンなどバリエーションあるラインアップも珍しくなく、可能性がどんどん広がっていました。そんなユニークに食とお酒を合わせていた人たちが規制環境下「ノンアル」ペアリングの際に注目したのが、水出し茶なのです。
「お茶にはワインのように適度なタンニンが含まれています。またほのかな苦みがあったり、香りの豊かさなどが、料理と相乗効果を生みます。そういうことに、アルコール提供が規制されることで気づいた人がとても多かったと思います」と、Uf-fu(ウーフ)代表の大西泰宏さんは言います。
大西さんは芦屋と南青山に店舗を持ち、インド、スリランカなどの産地から直接茶葉を仕入れるなど一貫して高品質の茶葉をセレクト。ワインインポーターやレストランオーナー、パティシエなど飲食のプロがかねてより信頼するお茶の専門家です。なかでも評価されるのが、紅茶やブレンドティーの水出し茶で、レストランのペアリングに採用されることも多いとか。
「水出しにすると、香りはあるけれどカフェインやカテキンの抽出がマイルドになります。それが料理を邪魔しなくなることと、温度からしてもワインや日本酒のような感覚で飲めるのがいいのだと思いますね。また多く飲んでもお酒ほど飲み疲れないのもポイントではないでしょうか」
嗅覚は、脳へじかに刺激を与えるので、記憶と直結するケースが多いとはよくいわれる話ですが、良い香りが高揚感を与えるのは確かなこと。年末年始、ギフトから会食または帰省など多くのイベントがある時期。上質な茶葉だけを使った水出し茶という選択肢を、公私にわたって加えてみるのはいかがでしょう?