カジュアルウェア
スパイバー×ゴールドウインの挑戦
クモの糸から始まった新素材が導く未来とは?(後編)
[ソーシャルグッドなファッションのゆくえ。]
2022.06.01
新しい素材開発、その原点は人類の悲劇
フツ族とツチ族の対立から、約100日間で50万〜100万人にも及ぶジェノサイドが行われた。欧州による植民地化や政治的構造などさまざま絡み合う複雑な要因の一つに資源問題があった。
関山 高校生のときにドキュメンタリーを見たのですが、すごく衝撃的でした。なんでこんなことが起こっちゃったんだろうと思って、それから過去に起こった紛争について調べてきました。それで得た結論は、結局は資源の問題ということ。これから新興国の人口が増えてくる。彼らが豊かになってくると資源がますます必要になってくる。でも資源に限りがある以上、結果的に争いが起こります。
山本 環境問題が資源問題を生み、結果的に貧困や格差のリスクを生む。そうした大きな問題解決のための事業というわけですね。
関山 ええ、それでバイオテクノロジーを知り、これだったら自分も貢献できるのではないかと。
山本 なるほど、単にCO2を減らせばいいという問題ではないわけですね。最後に今後の取り組みについてお教えください。
渡辺 フリースやデニムのような素材もリリースする予定です。
関山 タイでの生産拠点が順調に立ち上がりつつあります。またアメリカでも生産を行うための資金調達は済んでいます。ただこの2つを合わせても、生産量は数千トンです。世界中の繊維の生産量からすれば1万分の1という規模にしかならない。一方現在のグローバルな繊維消費量の増加傾向からすれば、2040年には世界中の繊維の総生産量は2億トンになると予想されます。いかに環境負荷の低いもの、循環可能なものに替えていくか。われわれの基盤技術はかなり整ってきています。後は時間がかかっても、人類がやるだけです。
渡辺 いま当社で扱うブリュード・プロテイン素材が使用された商品は数百枚ですが、2023年には1万枚を目標に置き換えたい。また当初から着用後の商品はすべて回収、資源化を考えています。
山本 事業の将来性はどうお考えでしょうか。
渡辺 事業規模を大きくするのではなく、いかに環境への負荷を低くするか、また多くの人が地球について考える機会をつくれるか、それを当社は目指しています。
関山 循環のシステムのためのベースができています。20年代にそれを形にし、2050年までに普及させたい。その頃には「30年前には服を捨てていたらしい」と語られるはずなんですよ。
山本 販促のキャッチフレーズとしてのソーシャルグッドではないということがよくわかりました。テクノロジーで世界を変えていこうとする関山さん、ビジョンを持ってアパレル業界を変えていこうとする渡辺さんが、すごく頼もしく感じられます。後は、私たちひとりひとりの次世代への責任感にかかっているんですね。本日はどうもありがとうございました。
Edit & Text: Mitsuhide Sako(KATANA)