お酒

貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。
第4回 下北沢 発酵デパートメント

2022.11.22

貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。<br> 第4回 下北沢 発酵デパートメント

誰かに気兼ねすることなく、のんびりとお酒をたしなめる“一人飲み”。何を注文しようが、何軒ハシゴしようが構わない自分だけの世界は、黙食にも有用とあって時流にかなっています。そこで、一人つつましく飲酒できる都内のお店やスポットを、お酒が大好きと語るモデルおよび女優の貴島明日香さんを誘って一緒に巡るとしましょう。

連載第4回は、下北沢「発酵デパートメント」にお邪魔します。こちらは、2020年に小田急線の線路跡地にオープンした商業施設「ボーナストラック」内にある発酵食品がメインのお店。

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「下北沢にこんな新しいスポットがあったんですね」。大好きなスパイスカレーを食べに来たり、モダンな趣にあふれた日本旅館「由縁別邸」に宿泊したりと、プライベートでも下北沢には何かとなじみのある貴島さん。「ボーナストラック」は今回が初訪問でしたが、飲食店以外にも本屋やギャラリーなど、個性豊かなショップが15店ほど軒を連ねるとあって、興味深げにじっくりと見渡します。

なかでもこちらの「発酵デパートメント」は、醬油や味噌といった定番品から、日本各地の珍しい漬物やお酒などを集めたグロサリーにカフェレストランを併設したお店。発酵にまつわるワークショップを展開するなど、発酵文化の継承と発展を目指し、多角的な展開を行っています。本企画の案内役を務めるパリッコさんも、店内の棚に並ぶ多種多様な発酵食品を前に「どこかアンテナショップ的な楽しさがありますね」と、その品ぞろえが気になる様子。

店の奥にある小上がりの座敷に腰を下ろすと、貴島さんとパリッコさんはそれぞれワインと日本酒の飲み比べセットを注文。おつまみは、お店スタッフのおすすめから、ワンプレートに4品を盛り合わせた「発酵オードブル」と、一番人気の「鮎クリームフライドポテト」をチョイスしました。

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3種類のワインを飲み比べた貴島さんがお気に入りに挙げたのは、山梨県・奥野田葡萄酒醸造の「奥野田フリザンテ(泡)」。酒造りにおいて発酵を促す酵母をそのまま瓶詰めしたナチュラルスパークリングワインです。

「これはすごくおいしい! クセが全然なくてスッキリとした飲み口ですね。それに、とても華やかな香りがします」

それぞれのワインを堪能しつつも、小鯛の笹漬けや麹を混ぜて醬油などで味付けしたアウトドア納豆などが並ぶ「発酵オードブル」を交互に試しながら、最適なペアリングを探します。なかでも貴島さんを驚かせたのは、こした玄米の酒粕を豆腐に加え、小松菜や水菜と和えた特製の白和え。口にした瞬間「おぉ。なんというか、素朴ではない白和えですね」。突然飛び出した斬新すぎる食レポに周囲は笑いに包まれます。

「いや、違うんです! 口当たりはさっぱりしているのにすごく濃厚で、複雑な味わいのおいしさという意味です(笑)」と、恥ずかしそうに慌てて訂正する一幕も。

一方のパリッコさんは、鮎のなれずしをベースにサワークリームなどを加えたソースを、揚げたてのフライドポテトに絡めた一品に箸が止まりません。

「鮎の感じはそんなに強く出てないけど、すごく深みのある味ですね」

これに合わせるのは、ビール造りに使われるホップを使用した秋田・稲とアガベのクラフト酒「CRAFT稲とホップ02/03」。従来の日本酒ではあり得ないハーブ感とスパイシーさを感じさせる一杯に、「面白いなぁ。グラスを口に近づけるだけで、柑橘系やマスカットなどの爽やかなフルーツの香りを感じます」と、クラフト酒の進化に感心しきり。小さな醸造所で職人が手造りするクラフト酒は、レーベル運営やトラックメーカーとしての顔を持つパリッコさんにとって、インディペンデントならではの自由度やプライドという部分でシンパシーを抱いたように考えるのは早計でしょうか。

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その後も、物販スペースでかわいらしい猫のイラストがラベルにあしらわれたヨセミテのクラフトビールに反応する貴島さんに対し、パリッコさんは趣味で集めているというガラス製の小さな徳利に入った日本酒を購入するなど、おのおのがマイペースに楽しみます。大勢の仲間とテーブルを囲む宴席も楽しいですが、自分なりのペースやスタイルでお酒と向き合える“一人飲み”は、なにもかも性急すぎる時代において、数少ないホッとできるひと時なのかもしれません。

〈貴島明日香(きじま・あすか)〉
1996年2月15日生まれ。兵庫県出身。高校在学時にモデル活動をスタートし、神戸コレクションやガールズアワードなどで活躍。2017年に『ZIP!』(日本テレビ)の第7代お天気キャスターに就任すると、ORICON NEWSの「好きなお天気キャスターランキング」で1位を獲得。2022年3月に同番組を卒業するまでおよそ5年間勤め上げ、歴代在任最長記録を更新する。現在は、『non-no』(集英社)で専属モデルを務める傍ら、ドラマ出演やABEMA公式アナウンサーとして活動するなど、多方面で活躍。ゲーム配信や愛猫家としての素顔を見ることができる自身のYouTubeチャンネル『あすかさんち。』は、登録者数45万人を誇る。

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〈パリッコ〉
1978年東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター、他。2000年代後半より、お酒と酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌やWEBサイト、テレビ番組などさまざまな媒体で活躍。著書に『酒場っ子』『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(共にスタンド・ブックス)、『晩酌わくわく!アイデアレシピ』(ele-king books)など多数。最新刊となるスズキナオ氏との共著『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)が現在、好評発売中。

〈訪れた場所〉
発酵デパートメント
発酵デザイナーの小倉ヒラクさんがオーナーを務める、発酵食品・食材やお酒など、発酵のことならなんでもそろう食のデパート。店舗の一角にあるカフェレストランでは、台湾名物の豆花(トウファ)や甘酒ブラマンジェといったスイーツ類や、米麹を焙煎したこうじ茶やお酢を使ったクラフトコーラなどのノンアルコールドリンクも提供している。

東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内
TEL:03-6413-8525
営業時間、定休日:物販と飲食の営業時間および定休日が不規則になっているため、ご来店前にSNS等で最新の情報をご確認ください。
hakko-department.com

〈パリッコのここがおすすめ〉
個人的に「ボーナストラック」を訪れたのは初めて。コロナもあってなかなか外食の機会を持てずにいましたが、実はずっと行ってみたい場所のひとつだったんです。実際に訪れてみたボーナストラックは、まるでテーマパーク! 想像以上の楽しさで、特にここ「発酵デパートメント」では、仕事ということを忘れて飲んだり買いものを楽しんでしまいました。

「貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。」の一覧はこちら

Photograph:Satoru Tada(Rooster)
Styling / Hair & Make-up:Yusuke Hashimoto(TRAPEZISTE)
Text:Tetsuya Sato

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