お酒

貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。
第3回 阿佐ヶ谷 つきのや

2022.11.16

貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。<br> 第3回 阿佐ヶ谷 つきのや

誰かに気兼ねすることなく、のんびりとお酒をたしなめる“一人飲み”。何を注文しようが、何軒ハシゴしようが構わない自分だけの世界は、黙食にも有用とあって時流にかなっています。そこで、一人つつましく飲酒できる都内のお店やスポットを、お酒が大好きと語るモデルおよび女優の貴島明日香さんを誘って一緒に巡るとしましょう。

連載第3回は、阿佐ヶ谷にある大衆酒場「つきのや」で一献傾けます。本企画の案内役である酒場ライターのパリッコさんいわく「老舗というわけではないですが、個人的にも大好きな真っ当でいい酒場」を前に、貴島さんの飲兵衛としての嗅覚も反応したようです。

「阿佐ヶ谷は普段なかなか来る機会がないのですが、商店街も含めて街の雰囲気がすごくすてきですね」

貴島さんの言うパールセンター商店街を7〜8分ほど南下した、杉並区役所近くの路地裏にお店を構える「つきのや」。元々、すぐ近所で10年ほど営業されていましたが、2020年に現在の場所へと移転。お店の広さは約3倍になり、15時30分のオープン直後から、老若男女問わず地元の人たちを中心にいつもにぎわいをみせています。

「赤く縁取られた短冊のメニューを眺めつつ、あれこれ悩みながら飲むだけでも楽しいですよね」と、推薦者のパリッコさん。貴島さんも四方の壁に貼られたメニューに目移りしながら「コーンバターやキノコバターなんておいしそう。それに枝豆も捨てがたいですね。というか、メニューの種類もすごいですけど、お値段がめちゃくちゃお安くないですか!」

300円台から600円台を中心としたリーズナブルなメニュー構成に、思わず驚きの声を上げます。

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今回は、定休日にお伺いしたということもあり、店主森本さんおすすめの鮪、タコ、しめ鯖からなるお刺身3点盛り、ポテトサラダ、自家製ハンバーグ、野菜炒めといった定番メニューをいただきます。

「(メニュー数は)何種類あるんだろ? 全部で50種類くらいじゃないですかね」と森本さん自身が把握しきれていないのもそのはず。時期によって毎日のように新メニューが追加されるので、いつ訪れても新鮮な驚きと新たな発見があります。さらに、お店の拡張によって大きな鉄板が厨房に導入されこともあり、牛ステーキやキャベツもんじゃ、ナポリタンなど、それまでになかった鉄板焼きメニューも充実。

貴島さんも熱々の鉄板に載せられた大好物のハンバーグをひと口ほお張ると、
「食感もふわふわで抜群においしいですね! それにコクのあるソースがお肉ともすごく合います」と感激した様子。この日3杯目となる大好きなハイボールを飲むペースもぐっと上がります。

お店を営む森本さんは東京都品川区の出身ですが、若い頃に新島で余暇を過ごすことが多くあって、その頃の仲間や友人が今でも仕入れに協力してくれるそう。お店の名物であり、パリッコさんも毎回注文するという“くさや”もそのひとつで、現地直送の特別な干物なんだとか。

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そして、この酒場を名店たらしめているのが店員さんとお客さんが作りだす温かな空気感。付かず離れずの適度な距離感でありながら、退店する際など、どんなにバタバタしていても店主自ら顔を上げて優しくひと声をかけてくれたり、お店が混んでくればお客さん同士で席を譲り合ったりと、そこかしこに自然な気遣いと思いやりがあふれています。アットホームな雰囲気に加えて、あうんの呼吸とも言える厨房とホールスタッフの連携など、長く通う常連さんでも家族経営のお店だと勘違いする人が多いのもうなける話です。

ロケバスに戻った貴島さんが開口一番「『すごくいいお店だったね』ってスタイリストさんとも話していたんです」と笑顔でひと言。世代や属性が異なる人同士がささやかな幸せを共有できるのも、酒場巡りの醍醐味(だいごみ)と言えるでしょう。

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〈貴島明日香(きじま・あすか)〉
1996年2月15日生まれ。兵庫県出身。高校在学時にモデル活動をスタートし、神戸コレクションやガールズアワードなどで活躍。2017年に『ZIP!』(日本テレビ)の第7代お天気キャスターに就任すると、ORICON NEWSの「好きなお天気キャスターランキング」で1位を獲得。2022年3月に同番組を卒業するまでおよそ5年間勤め上げ、歴代在任最長記録を更新する。現在は、『non-no』(集英社)で専属モデルを務める傍ら、ドラマ出演やABEMA公式アナウンサーとして活動するなど、多方面で活躍。ゲーム配信や愛猫家としての素顔を見ることができる自身のYouTubeチャンネル『あすかさんち。』は、登録者数45万人を誇る。

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〈パリッコ〉
1978年東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター、他。2000年代後半より、お酒と酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌やWEBサイト、テレビ番組などさまざまな媒体で活躍。著書に『酒場っ子』『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(共にスタンド・ブックス)、『晩酌わくわく!アイデアレシピ』(ele-king books)など多数。最新刊となるスズキナオ氏との共著『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)が現在、好評発売中。

〈訪れた場所〉
大衆酒場 つきのや
その日、市場から仕入れたばかりの鮮魚を使ったお刺身や海鮮料理のほかに、鉄板焼き、家庭的な一品料理など、和・洋・中問わず常時50種類以上のメニューを用意。唎酒師(ききさけし)の資格を持つスタッフが厳選した日本酒は、山形県の小嶋総本店の「洌(れつ)」や高知県の南酒造場の「南」など、希少なものを含めて全国各地の銘酒がそろう。

東京都杉並区阿佐谷南1-14-12
TEL:03-5378-8007
営業時間:15:30〜23:00
定休日:月曜

〈パリッコのここがおすすめ〉
「行くたびに膨大な短冊メニューを眺めながら何を頼むか迷い、そしておいしさと、そのリーズナブルさをかみ締めながら、ほろりと酔える。そんな喜びを確実に味わうことのできる、まさに良き大衆酒場のお手本のような名店です」

「貴島明日香さんと行く、ニューノーマル時代の“一人飲み”案内。」の一覧はこちら

Photograph:Satoru Tada(Rooster)
Styling / Hair & Make-up:Yusuke Hashimoto(TRAPEZISTE)
Text:Tetsuya Sato

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