カジュアルウェア

SHOWCASE
〝いいかげん〞にこだわり尽くしたセーター。

2023.01.06

ファッションエディターの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。

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パパスだけの仕様で別注したジャミーソンズ。中央は編み地だけを輸入し、日本でパッチワークのように組み立てたこだわりの品だ。左から¥74,800、¥90,200、¥69,300/すべてパパス(パパス 03-5469-7860

パリやミラノのモードブランドから、ヨーロッパの名門テーラー、アメトラ、ビンテージ、民族衣装etc.……。自分で言うのもなんだけど、2010年代の僕は、ありとあらゆる洋服を着て新しい情報を追いかけてきた、相当な洋服バカ。その名残で、今でも「山下さんは、最近何に注目しているんですか?」などと聞かれることも多いのだが、最近は返答に困ってしまう。「う〜ん、いいかげんな感じが好きかな」くらいのことしか言えないのだ。やせがまんするのも、計らうのも、高そうな服を着るのも気分じゃなくて、自分の生活にフィットする普通の服がいい。まあ、だからといってなんでもいいわけじゃないってのが、また厄介なところなのだが……。

そんな今の自分の感覚を、具体的に表現するならパパスになる。そう、百貨店でよく見かける、あのパパスである。正直言って数年前まで全くのノーマークだったが、ここの服がなぜだか気になって仕方ない。アーネスト・ヘミングウェイの愛称〝パパ〟から名付けられたこのブランドは、創業から約35年にわたって、徹底的にこだわった服づくりと、アンチファッションという姿勢を同時に貫いてきた。もしかしたら、ここの服は、ちょっと前の僕のような人間には、見つけられない類いのオーラを発しているのかもしれない。だとすると、そんな服の魅力がわかるようになった自分が、なぜだか誇らしく思えてくる。

今季僕が気に入ったフェアアイル柄のニットは、スコットランドのジャミーソンズというファクトリーにつくらせたもの。ぱっと見普通に見えるのだが、そういう雰囲気、シルエットに仕上げるためのたくさんの工夫が施されている。要するに〝いいかげん〟とは〝適当〟ってことじゃなくて、まさに〝いい加減〟。この境地にたどり着くまでに、どれほどこだわれるか? おしゃれだけじゃなくて、自分がこれから目指すべきスタンスを、このブランドから教えられた気がする。

山下英介(やました・えいすけ)
ライター・編集者。『MENʼS Precious』などのメンズ誌の編集を経て、独立。 現在は『文藝春秋』のファッションページ制作のほか、ウェブマガジン『ぼくのおじさん』を運営。

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「アエラスタイルマガジンVOL.53 AUTUMN / WINTER 2022」より転載

Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato (TABLE ROCK.STUDIO)

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