カジュアルウェア

SHOWCASE
メイド・イン・川越の手づくりアイウエア。

2023.01.20

ファッションエディターの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。

写真・図版
写真手前はアセテートを磨く前の状態。完成品のメリハリの利いた美しさと、見比べてほしい。現在「澤口眼鏡舎」は予約制で営業中。予約や問い合わせはHP (https://sawaguchi-meganesha.com/)から。

僕の実家は埼玉県のど真ん中にあるのだが、最近いつも驚かされるのが、隣町である川越のにぎわい。僕が学生だった頃は寂れきっていた古い街並みは見事によみがえり、古民家や蔵造りをリノベーションしたおしゃれなカフェに、若者たちが殺到している。そんな雰囲気につられてか、腕のいい職人やクリエイターたちも、この街に集いつつあるようだ。

築100年を超える長屋をリノベーションした、「ちゃぶだい」というカフェの奥にお店を構える、「澤口眼鏡舎」もそのひとつ。長年プロダクトデザイナーとして働いてきた澤口 亮さんが、独学での研究を経て、2019年に会社を早期退職して始めた、ハンドメイドのビスポーク眼鏡工房である。

素材はアセテートやセルロイドといったプラスチックが中心。フレンチビンテージに代表されるクラシックなデザインは、決して珍しいものではないが、澤口さんが手作業で磨き上げ、丹念に面をつくり込んだアイウエアは、大量生産のそれとは別次元のオーラを放っている。プラスチック素材は透明感に満ちているし、ひとつひとつの曲線が生き生きして切れ味鋭いのだ。「たかが樹脂ですが、ひと手間かければそれに応えて、一段階上の光を放ってくれるんです」と言う澤口さん。プラスチックという素材だからこそ、職人の技術と丁寧な仕事ぶりが際立つのだろう。

スーツや靴と比べると、眼鏡をオーダーしたことのある人は相当少ないと思うが、ひとりひとり全く違う顔のバランスに合わせてつくられたこちらの製品は、頭を抱えるように優しくフィットし、よくできたジャケットのように、重さを感じさせない。加えてバッファローホーンのような珍しい素材も選べるから、スーツの生地選びのように、一度つくったらクセになることは必至だ。

そろそろ僕も眼鏡が必要になる年頃。次の帰省のときには、藤田嗣治みたいな丸眼鏡でもつくってみようかな。

山下英介(やました・えいすけ)
ライター・編集者。1976年生まれ。『LEON』や『MEN'S EX』などの編集や、『MEN’S Precious』のクリエイティブ・ディレクターに従事した後、独立。趣味はカメラと海外旅行。

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「アエラスタイルマガジンVOL.53 AUTUMN / WINTER 2022」より転載

Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato (TABLE ROCK.STUDIO)

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