特別インタビュー
世界初の原産国発スペシャルティコーヒーブランド
「ブルートーカイ コーヒー ロースターズ」創業者が語る日本進出の意義。
2023.01.13
サードウェーブコーヒーが日本に上陸し、コーヒーの楽しみ方にも広がりが見られるようになって久しい。日本におけるコーヒー市場の成熟化が進むなか、満を持して登場したのがインド産のスペシャルティコーヒーを展開するブルートーカイ コーヒーだ。2021年に日本での事業開始を発表後、東京ミッドタウン、伊勢丹新宿店、グランスタ東京などでポップアップを展開。いずれも大盛況を収めている。紅茶の文化が深く根付くインドにおいて自国で生産された高品質なコーヒーの魅力を広め、インド最大のコーヒーカンパニーへと急成長した同社の創業者マット・チタランジャン氏が、インド産コーヒーの魅力や商品へのこだわり、日本での今後の展開などについて語ってくれた。
「ブルートーカイ コーヒー ロースターズを創業した2013年当時、インドではサードウェーブどころかスターバックスの進出もまだでした。コーヒーを飲むことができるチェーン店はありましたが、残念ながら“高品質”と言えるようなものはなかったんです」
アメリカで生まれ育ったチタランジャン氏が仕事のために父方のルーツでもあるインドに移住したのが2011年。自身が無類のコーヒー好きでもあることから、「インド国内の飲食店で提供されるコーヒーの品質に満足できなかった」と言う。
「一般的にインドというと紅茶の印象が強いと思いますが、実は、世界有数のコーヒー生産国でもあるんです。しかし、自国で生産されたコーヒーのほとんどは“高品質コーヒー”として海外に輸出されていて、生産者ですらコーヒーを飲む習慣がほとんどなかった。私はそんな状況に疑問を抱きました。インドで生産された高品質なコーヒーを、インド国内の消費者が楽しめるようにしたい、そういう仕組みを作りたい。そんな思いから妻と共にブルートーカイを創業したんです」
チタランジャン氏と妻のナムラタ・アスタナ氏は一軒一軒農園を訪ね、生産者に直接その思いを伝えた。
「コーヒーの生産大国では、森林を伐採して機械的なプランテーションを運営していくのが一般的です。しかし、インドの農園では森林やジャングルが残っている自然環境を保ち、共存しながら、持続可能な形で栽培を行っています。単純にコーヒーを買い付けて販売するだけでなく、どのような場所と環境で生豆が生産されているのかをアピールし、多くの人に知ってもらうことでインドコーヒーの存在感も高まっていくはずだという思いがありました」
2人は何カ月間もかけて農園を回り、徐々に取引先を増やしていった。簡単ではなかったが、コーヒー豆の確保ができると、その後の展開は早かった。ポップアップやBtoBでのコーヒー販売の成功を経て、創業から2年後にカフェをオープン。年々店舗を増やしつづけ、インド全土で40店舗以上を運営するコーヒーカンパニーへと成長した。そしてこれは、コーヒーに対する関心が低かったインドの人々に国内産スペシャルティコーヒーのおいしさを伝え、文化を根付かせた証しとも言えるだろう。
「インド産コーヒーの魅力をインドの人々に届けるというミッションから、次は『インド産コーヒーの魅力を世界中の人に伝える』という新たなステージに突入しました。そしてその第一歩として私たちが選んだのが日本です」
インドには多くの日系企業があるが、そこで働く日本人たちのあいだでもインド産コーヒーのファンは多く、そんなことも日本進出のきっかけの一端になった。
インドから輸入した生豆は日本国内で焙煎。ECサイトでは注文から3日以内に発送している。インド産のスペシャルティコーヒーの魅力は着実に日本でも広がりつつあり、多くのファンを獲得している。
「日本のお客さまの反応はとても良く、うれしく思っています。インドでのビジネスモデルと同じく、ポップアップやBtoBの展開を充実させ、その先に東京でのカフェのオープンも見据えていて、10店舗、20店舗と増やしていきたいです。ただ、私たちはおいしいインド産コーヒーを日本に流通させるだけのエクスポーターではありません。コーヒーという一杯の飲み物を通して、コーヒー生産に携わる人たちのストーリーやインドのコーヒーカルチャー、さらにはコーヒーに合うインドのスイーツや食べ物なども日本の皆さんに届けたいと思っています」
世界初の原産国発スペシャルティコーヒーブランドとしてその歴史をスタートさせたブルートーカイ。本国インド以外で購入できるのは、ここ日本だけ。スペシャルな味わいとストーリーをぜひ、世界に先駆けて体感してほしい。
ブルートーカイ コーヒー https://www.bluetokaicoffee.jp/
Photograph: Tatsurou Sekiguchi
Interview&Text: Reiko Kimizuka