特別インタビュー
エコアルフ創業者が語る、
サステイナブルファッションの現在。
2023.03.22
エコアルフは、真のサステイナブルファッションを目指し、2009年にスペインで創業した。ブランド名も息子の名に由来し、次世代への責任ある行動をシンボライズする。日本には2019年に上陸。この春、創業者ハビエル・ゴジェネーチェさんが3年ぶりに来日し、トークイベントを開催した。
会場に掲げられた“LOST COLORS”というメッセージは、本来美しい色に満ちあふれる海の世界に白化現象が進む現状を、豊かなカラーファッションを通じて広く伝えていくという今季のテーマである。ハビエルさんはこうした海洋ゴミを特に問題視する。
「今や毎年5000億枚のプラスチック袋が、持ち帰りのわずか30分のために浪費され、ゴミベルトとなって世界の海を回遊しています。さらに廃棄された漁網などは海底に沈み、いずれもマイクロプラスチックとなり、魚の体内から人間へと摂取されています」
これに対し、2015年にアップサイクリング・ジ・オーシャンズのプロジェクトを立ち上げ、当初3人の漁師と共に始めた海洋廃棄ゴミの回収活動も現在6000名が取り組み、2025年には1万人の参加を目指す。回収された68%は再生可能で、日本でも三重県志摩や沖縄県宮古島などの地方自治体と連携し、昨年初めて日本で回収した海洋ゴミを一部資源としたTシャツを発表した。
現在エコアルフでは、資源ゴミを再生して製品化しているが、服の回収リサイクルについてはまだ中長期的に取り組む課題となっている。
「というのも一般的に生地は快適性を求めてポリウレタンを入れてストレッチ性を持たせたり、高級感を出すためシルクを混ぜますが、混紡素材は現在の技術では95%はリサイクルできないのです。リサイクルには単一素材が好ましく、私たちもまずそれを目指しています。そのなかでこれまでプラスチック以上に再生の難しかったコットンでもようやく100%リサイクルを実現し、短繊維化を防ぎ、耐久性と品質を備えるだけでなく、製品後も3〜4回の再生ができるようになりました。とはいえ製造コストは従来のコットンに比べて3割は上がります。リサイクルというと低価格と考えがちですが、その意識も変えなくてはいけないでしょう」
今後こうした単一素材のアイテムを展開し、素材の段階から生産、流通後のプロセスまで一貫したリサイクルの循環につなげたいと話す。
登壇を終えたハビエルさんに話を伺った。直近のピッティでもサステイナブルファッションへの注目は高く、昨年50だった顧客数も300に増えたという。世界のファッションをリードするイタリア市場での評価に大きな手応えを感じている。
「10年前以上前、消費者はやはりリサイクルではない生地を好みましたし、実際クオリティも低かったと思います。でもいまでは技術が向上し、品質も格段に上がっていますし、サステイナビリティへの認知が広まっていることを実感します」
特にコロナ禍での消費マインドの変化も大きい。
「ヨーロッパでも2カ月間ロックダウンされた時期、人々は自然の変化に気づきました。海が澄んだり、空がとても青くなったことであらためて自然の美しさに気づき、その偉大な治癒力に驚かされました。でも人間はすぐ忘れてしまうので、よりスピード感のある変化を促していきたいですね」
一方でウクライナの状勢に心を痛める。それは、多くの人命が失われるばかりでなく、森林火災などの自然破壊や、爆撃による廃棄物や廃水による壊滅的な環境悪化が進んでいるからだ。それでもまず一人ひとりができることを考え、未来に向けてまず始めることが大切、と静かに、だが力を込めて語った。
エコアルフ 渋谷スクランブルスクエア
東京都渋谷区渋谷2-24-12(渋谷駅直結・直上)
03-6427-3767(営業時間: 10:00~21:00)
Photograph:Takahiro Sakata
Text:Mitsuru Shibata