特別インタビュー
時代の先端をゆくC.P. COMPANYの機能服。
ロレンツォ・オスティが受け継ぐブランドのDNA
2023.03.29
八木通商はこのほど、イタリアのC.P. COMPANY(C.P.カンパニー)の日本における独占輸入販売権およびマスターライセンスを取得した。同社のもとで、2024年春夏コレクションから日本市場での取り扱いを本格展開する。
C.P. COMPANYは、1978年にマッシモ・オスティ(Massimo Osti)によって設立されて以来、ミリタリーウエア独自の機能を時代や目的に合わせて、ファッションへと昇華させてきた。特に、1988年にクラシックカーレースのために開発された「ゴーグルジャケット」は、あまりにも有名だ。ガスマスクから着想を得たフードのレンズは、運転中のドライバーの目を雨風から守り、左袖につけたレンズは、時計を透かして確認できる。胸と腰のポケットには、地図や水筒、身分証といったカーレースに必要なあらゆるものを装備できるとあって、ドライバーたちの間で絶大な支持を得た。
マッシモの残した革新的なモデルや素材の数々は、息子のロレンツォ・オスティ(Lorenzo Osti)に引き継がれ、今なお進化を続けている。「イノベーション開発において、これだけ多くの実験を行っている企業はほかにないのではないか」とロレンツォ。その自信は確かなもので、ロレンツォがC.P. COMPANYのCEOに就任した2019年から3年間で、同社の売上高は3倍に伸長した。理由は、コミュニティーに対しての文化的なアプローチが成功したからだ。C.P. COMPANYは、80年代にイタリアでムーブメントになったパニナリ(アメカジをヨーロッパ風に着たスタイル)で、アーティストやクリエイターを中心に火が付き、90年代には、イギリスのサッカーファンの間で人気が高まった。近年では、ラッパーが好んで着たことで、ミュージックシーンでのフォロワーも増えており、顧客層は10代から60代までと幅広い。
「ブランドのアーカイブは大切だが、父は一貫して、新しいもの、今のマーケットに存在しないものを生み出したいとずっと言っていた。新しいものは、過去から答えを学ぶだけでは生まれない。未来を見つづけ、移ろう時代に合わせて、機能や素材をアップデートしつづけなければいけない」。その言葉を具現化したかのようなジャケットが、1999年生まれの「メトロポリスジャケット」だ。「ゴーグルジャケット」と並ぶブランドを代表するアイテムのひとつで、「アーバンプロテクション(=公害や大気汚染から身を守る)」をコンセプトに開発。エアフィルター付きのマスクや充実したポケット機能などは、コロナ禍でも威力を発揮した。
ロレンツォは、環境への配慮も重要なテーマだと語る。
「ファッション業界が地球を汚染する業界のひとつなのは周知の事実だ。6カ月ごとに新しいコレクションを出して、前のコレクションを廃棄する流れに無理がある。一方で、私たちが作り出すコレクションは、10年、20年とずっと着つづけていられるアイテム。そのアプローチをこの先も変えず、業界全体の負荷を下げたい」
C.P. COMPANYは現在、イタリアをはじめ、イギリスやフランス、韓国などを中心に世界各国で取り扱われている。2022年の年間売上高は約1億2000万ユーロ(約170億円)。2024年1月には東京・原宿の明治通り沿いに210平方メートルの旗艦店と、兵庫・神戸のトアロードに直営店の出店を予定する。初年度の国内売上高目標は5億円。八木通商のネットワークを生かしたコラボレーションなどを行いながら認知度を高め、5年後に年間売上高60億円を目指す。
Photograph:Hiroyuki Matsuzaki (INTO THE LIGHT)
Text:Yuki Koike(VINYL)