調べ・見立て(調査中)
カジュアル化でスーツはなくなるのか⁉
「ビジネスウエアの5W1H」を考える
編集長の「見立て」。#65
2023.04.19
ビジネススタイルがカジュアル化していると、最近よく言われます。アエラスタイルマガジンの「調べ」アンケートで「あなたの職場でカジュアルデーの取り組みがありますか?」とい問うたところ、「毎日」という回答が18%となりました。反対に、「取り組みは実施されていない」と回答したビジネスパーソンも44%います。カジュアルデーの取り組みを実施していない会社は、「毎日スーツで出社」というのがこれまでの常識でしたが、いまでは逆に「カジュアルデーを実施するまでもなく、毎日がカジュアル」という意味ではないかと想像できます。
「10年前に比べてビジネススタイルがカジュアルになってきていると感じますか?」と質問したところ、68%が「とても感じる」、「少し感じる」が21%と、9割近くのビジネスパーソンがカジュアル化を実感しています。コロナ禍が激化する以前の2020年3月に同じ質問をしたときには、「あまり感じない」4%、「まったく感じない」4%といった回答もありましたが、いまではそのような意見は皆無となりました。
では、実際にはどれくらいの頻度でスーツを着用しているのでしょうか。アンケートの回答を見ると、「週5日(毎日)」着用するビジネスパーソンが45%となりました。以前と比較すると、毎日スーツを着用する人が減少しているのは間違いないでしょう。一方で、「不定期(必要なときだけ)」スーツを着用すると回答した読者は21%と、毎日スーツを着用するビジネスパーソンの半分程度の割合にとどまっているのです。このデータを見ると、最近よく言われている「スーツは絶滅する」という論調が暴論であるのがわかります。
スーツの着こなしについて、「業界による違いはありますか?」と問われることがあります。質問された方は、「ITや広告業界はカジュアルで、金融はカッチリとスーツ」と私が回答するのを予想しているようです。確かに、業界や職種による違いがないわけではありません。ただ、以前ほど紋切り型ではないのです。例えば、普段はスーツを着用しない広告業界のグラフィックデザイナーから「お役所向けのコンペでプレゼンテーションをするので、どういうスーツを着ればいいのか教えてほしい」と相談されたことがあります。あるいは、金融関係の会社から「デスクワークが多い内勤の社員向けにビジネスカジュアルのセミナーをしてほしい」という依頼もあります。つまり、「スーツを着るのか着ないのか」「どのようなスーツを着るのか」「カジュアルがどこまで許されるのか」は、業界や職種ではなく、ウエアを着用するシチュエーションによって左右されるのです。私が提唱しているのは、「ビジネスウエアの5W1H」という考え方。When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰と)、What(何の用件で)、Why(なぜ)お目にかかるのかによって、How(どのように)着こなすのかが決まります。相手に寄り添う、ビジネスがうまくいくように配慮する。これは、着こなしだけではなくて、ビジネスパーソンに必須の態度だと考えるからです。
先日、ある大学で就活生向けにスーツ着こなし講座を行ったときに、「普段着でご来社くださいと言われたときにはどうすればいいですか?」と問われました。私は「それが、その会社に行く最初の面談なのか、何回目かでグループで課題に取り組むセミナーのようなものなのか、それとも社長や役員と話をする最終面接なのかによって、着こなしは変わってきます」と回答して、それぞれの場合に的確なウエアをアドバイスしました。ビジネスの入り口に立っている就活生にとっても、「ビジネスウエアの5W1H」は有効だと思うのです。