カジュアルウェア
エルメスのビンテージスカーフから学ぶフレンチスタイル。
ファッショントレンドスナップ182
2023.04.19
パリで1837年に創業したエルメス。その名前を聞いたことがないという方は、このコラムを読んでいただいている方であれば、まずいらっしゃらないと思います。
創業当時は高級馬具工房としてスタートしています。現代のような車がなかった当時は、馬具や馬車は現代の高級車と同じような価値があり、貴族やブルジョワジーと呼ばれた人たちは、こぞってエルメスで趣向を凝らした馬具をオーダーしていたとか。現在は、馬具はもとより、バッグや洋服、アクセサリー、化粧品などのライフスタイル全般の商品を取り扱っています。
そんなエルメスが、最近若いファッションインフルエンサーやセレクトショップのスタッフの人たちから熱い注目が注がれていると聞きます。ネット上でも世代を超えてエルメスに関する声がざわついています。
今回は、そうした日本ならではのエルメス人気のひとつを解き明かすジェントルマンにご登場いただきました。
「エルメスの80〜90年代のものに個人的にとても注目しています。今日は、フランスのブランドを中心にコーディネートしています。ジャケットとスカーフはビンテージのエルメスで、ポロシャツもフランス製のラコステです」と語っていただいたのはセレクトショップ「クローチア」の森 伸希さん、29歳。
この若さでフレンチブランドを独創的に着こなしていますが、なかでも注目したいのがスカーフの結び方。最近バンダナやネッカチーフなどを首に巻くスタイルがトレンドのひとつになっていますが、森さんの場合はかなり個性的。
「個人的にはエルメスのスカーフを普通に固結びしてシャツの上に垂らすのが気に入っています。80〜90年代のスカーフを選んでいるのは、この時代のプリントの柄がとてもシックで、フランスの絵画を見るような色使いが気に入っているからです。それと生地の厚みもあり、時間が経っている分、生地の目が程よく詰まり、独特のドレープが出せるのも見逃せません」と森さんの的を的を射た解説。
そこで、どう結ぶのかを実践していただき、森さんならではのテクニックも教えていただきました。
「まずは、たたみ方ですが、スカーフの対角線上の2角を内側に3〜4回たたみ、ネクタイのような形にします。次に首の前で長さが約半分くらいになるように回します」
「首のセンターではなく、少しずらした位置で固結びしていきます。このときネクタイのようにはキツく結ばないで少し緩めに結ぶのが個人的には好きですね」
「固結びすると、垂らしたときに自然に左右の長さが違ってきます。こうするほうが、ノンシャラン(無造作とか無頓着といった意味のフランス語)な感じが出てくると思います。スカーフをポロシャツやシャツのVゾーンのなかにしまい込む方もいらっしゃいますが、私は昔のフランス映画の俳優や巨匠デザイナーのように出すほうが気に入っています」
(注)参考画像のあるサイトhttps://www.vogue.co.jp/fashion/news/2019-02-20/karl/cnihub
さすがに、初心者の方がこれをそのままマネするのは勇気が入りますが、ほかの人とかぶらないトレンド感をアピールしたい方や、ファッション系インフルエンサーの方には最適ではないでしょうか。
もちろん、初めて見た人の好き嫌いが、はっきり分かれてくるところではあるのですが……。
エルメスのスカーフには、フランス語で正方形という意味のカレという名前がついています。中世からヨーロッパの絹織物産業の中心地として栄えているリヨンにあるエルメスの工房では、伝統的なシルクスクリーンという技法により一色一色をプリントしていく技術を、いまだに継承しています。
エルメスのカレの縁は、手縫いで丸くまつられています。もちろん同じような仕上げをするブランドもありますが、エルメスは表側に山が出るようにしています。一般的なスカーフとは逆なのです。ここは、わかる人にしかわからない、さりげないポイントですが、マニアにはこうした部分が刺さります。
アメリカのウィルス&ガイガーのブルゾンの横には、フランスのエルメスのボックスがさりげなく置かれています。こうしたセンスに脱帽です!
クローチア
ビンテージのエルメスのスカーフからシャツやジャケット、ビンテージのフランス製のラコステ、イタリアのコートブランドのシーラップ、アメリカのアウトドアブランドのウィルス&ガイガーといった個性的なブランドがセレクトされています。ビンテージと新品が独特の世界観でミックスされた空間は唯一無二。
住所:東京都渋谷区桜丘町12-5 桜丘Kビル2階
電話番号:03-6455-0548
ホームページ:http://clothier.tokyo/
Photograph & Text:Yoichi Onishi