週末の過ごし方

極上のエコラグジュアリーを体現する、
ベトナムのプライベートビーチ。

2023.04.21

極上のエコラグジュアリーを体現する、<br>ベトナムのプライベートビーチ。
背後が緑豊かな丘陵となっているニンバンベイ。緩やかな弧を描いたビーチに沿うように、ヴィラが点在する。沖にはエビなどの養殖漁船が。

ここの宿泊客しか訪れることのできないプライベートビーチリゾート、シックスセンシズ ニンバンベイ。環境保全とラグジュアリーの共存をリードする究極のリゾートに、今、世界が熱い視線を送る。その豊かさの真髄とは?

Places Visited : シックスセンシズ ニンバンベイ

ラグジュアリーの定義とは、時代によって変化する。ファッションにおいてのファーに象徴されるように、環境やエシカルに背を向けるような事柄は、今や支持を得ることが難しい。

シックスセンシズは、そのような言葉が注目されるよりも以前、1995年の創業当初より、サステイナビリティとラグジュアリーの共存をうたってきたリゾートである。アジアを中心に、ヨーロッパやオセアニアなど、世界に22のプロパティを展開しており、独自に120項目のサステイナビリティ・スタンダードを持っている。ベトナムのシックスセンシズ ニンバンベイ(以下SSNVB)は、そんなブランド中でもサステイナビリティをリードする存在である。

フランス統治時代よりリゾート地として開発が進んだ南部の町ニャチャン。その中心地から少し離れた波止場より、スピードボートでおよそ20分。約4キロにわたって美しい砂浜が続くニンバンベイは、船でしかアプローチすることができないプライベートビーチだ。

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SSNVBは、このビーチに向かって62のヴィラを有しており、砂浜へダイレクトにアプローチできるビーチサイドや、木々が茂る中にたたずむヒルトップなど、全部で9種のタイプがある。リゾート内にはスタッフと宿泊客、そしてこのエリアに暮らす野生動物しかいない。その安心感を発端とするリラクセーションは、都市生活者にとっては大変貴重な機会であり、ラグジュアリーといえるだろう。加えて有機的なものたちばかりに囲まれた時間というのが、いかに人を心地よくさせてくれるかを教えてくれるのである。

すべてが150㎡以上でオーシャンビュー、かつプライベートプールが設備された独立ヴィラであるSSNVBだが、作りは大変素朴である。どれもが自然の地形に寄り添う形で構成されており、インテリアは木材を中心に廃材も利用。またハードだけでなく、ソフトにおいてもその意志は一貫している。積極的な姿勢の鍵となるのが一人のプロフェッショナルの存在である。

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海にダイブするようにプールにダイブできる「ウォータープールヴィラ」では、太陽がプールの向こうに続く眼前の海に沈む。岩場の地形を生かした設計もSSNVBの特徴だ。
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土に還る素材を極力使用するリゾートでは、写真の「ロックプールヴィラ」はじめすべてのバスタブが木製。

スペシャリストを据えゲストや地域と歩みつづける

「SSNVBがサステイナビリティに関してブランドをリードする存在であるのはなぜなのか? それは私がいるからですよ!」と冗談交じりに答えてくれたのが、ベトナムのハノイ出身のエミー・グエンさんである。彼女は2021年より「リージョナル・サステイナビリティ・ディレクター」として、ここSSNVBをベースにしながら東南アジアのプロパティ全体のサステイナビリティプログラムを監修している。

建物の機能別にみると、ショッピングモールや工場よりも、ホテルのほうが水道光熱などエネルギー使用量が多いという。毎日ゲストに届くアメニティや、フードロスの観点からも、ホテルが環境に与えるダメージは大きい。エコラグジュアリーを標榜するシックスセンシズは、彼女をリーダーにして、それを打開する仕組みを生むべく歩みつづけているのである。

たとえばSSNVBでは、オーガニック菜園にベトナム国内初となる、リゾートの敷地に太陽光パネルを設置した「ニンバン・グリーンズ」を2022年に開所。施設内の約20 %の電気を太陽光発電でまかなっている。この発電する菜園に併設されたのが、「ファームハウス」と名付けられたダイニング施設。植物由来のヴィーガン料理をコースで提供しており、“Less-is-more”(少ないほうが豊かである)をコンセプトに、あまり手を加えることなく、オーガニック素材の力強い味わいを最大限に生かした料理を提供している。

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    Farm-to-tableを実現するオーガニック菜園では収穫を体験することもできる。
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    ソーラーシステムと菜園、どちらにも日光が当たるように計算された「ニンバン・グリーンズ」。

サステイナビリティプログラムの責任者として、これらを構築しているグエンさんだが、彼女にとってそれらは施設内スタッフに限るものではない。「リゾートゲストや近隣のコミュニティーと一緒に考えていきたいと思っています」

SSNVBのゲストアクティビティには、その言葉を実践するようなプログラムをいくつも見つけられる。「アースラボツアー」では、スタッフと共にリゾートを巡回しながらサステイナビリティの取り組みの現場を見学。自分たちが口にする水や食材がどのような経緯でやってくるのか。使用した道具などがどのような循環を遂げるのか、さらにはリゾートが展望するその先の環境への取り組みを知る機会になっている。また「セーブ・ザ・リーフ」では、17年にニンバンベイを襲った災害で被害を受けたサンゴ礁の復活のため、スタッフからサンゴのレクチャーを受け、株分けを行うことができる。近隣地域には漁業で生計を立てる人が少なくない。魚のすみかとなるサンゴの被害は、自然破壊であると同時に近隣漁業へのダメージも大きい。SSNBVでは、ゲストと共に美しい海とその恵みを守るために働きかけているのである。

世界が注目するエコとラグジュアリーの共存

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リゾートには趣の異なる4つのレストランがあり、ニンバンベイを一望できる「ダイニング バイ ザ ロックス」では、シーフード料理をメインに提供している。

プライベートビーチリゾートという言葉は、非日常の究極の形のひとつといえるだろう。アペリティフを味わいながら、茜色に染まる空と黄金色に輝く海を眺め、ディナーへの期待を高める……。起きぬけ、シャワーの代わりにプライベートプールでひと泳ぎして目を覚ます。そんな体験が貴重であることは、今も昔も変わらない。しかし、それが地域の環境や生態系を破壊しながら成立しているのであれば、もはやラグジュアリーとは言わないのではないだろうか。その価値観が表れているかのように、サステイナビリティとラグジュアリーの共存を掲げるシックスセンシズは、現22カ所から、向こう3年でさらに30カ所以上生まれる予定だ。今、最も注目されるラグジュアリーリゾートであると同時に、その経営を目指す企業にとっても、エコであることこそラグジュアリーである、という意思が浸透してきている証しといえるだろう。

自分の力で自分のためだけのぜいたくを体験する。かつて望まれた価値観は、みんなで豊かな体験を目指す形へとシフトしてきている。SSNVBは、今にふさわしいラグジュアリーの形を体験できるリゾートなのである。

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    水面に飛び石がレイアウトされたスパへのアプローチ。
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    SSNVBのスパプログラムは、リラクセーションやデトックスといった目的だけでなく、メディテーションやヨガなど内面の平穏を得る一助となるメニューも充実している。

Six Senses Ninh Van Bay(シックスセンシズ ニンバンベイ)
Van Dang Luong, Nah Trang Khanh Hoa, Vietnam
宿泊費 US$900〜(朝食、空港〜リゾート間送迎込み)
予約 0120-677651(IHG内)
https://www.sixsenses.com/en/resorts/ninh-van-bay

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問い合わせメールおよび予約のフリーダイヤルは日本語対応。宿泊費には空港からの車とスピードボートによる送迎サービスが含まれている。施設内に看護師が待機しているというのも、心強い。

<<ベトナムのフラッグ・キャリアで多彩な輝き放つ街へ

アエラスタイルマガジンVOL.54 SPRING/SUMMER 2023」より転載

Text: Toshie Tanaka(KIMITERASU)

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