週末の過ごし方
『クイーン・シャーロット~ブリジャートン家外伝』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #49
2023.06.08
涙なしでは見られないスピンオフ
『ブリジャートン家』のスピンオフなのだから、笑えて、泣けて、と軽い気持ちで入ってしまったところ、美しくも切ないシリアスな正統派ラブストーリーに驚かされた。実際、ジョージ3世は、シャーロットと共にした約60年、愛人を作らず、生涯王妃だけを愛しつづけたと伝えられている。政略結婚が当たり前の時代に、“運命”としか言いようのない素晴らしい愛が、そこには在った。
さまざまな愛の形が混在する昨今、古典的で、純粋なラブストーリーは、ある意味新鮮だ。
冒頭で「事実に構想を得たフィクションであり、筆者は意図的に事実に手を加えている。楽しんで」と注釈が入るが、史実に基づく描写を所々センス良く挟んでくるのだからすごい。観終わった後に、このエピソードは実際にあったことなのか調べてみるのも楽しみ方のひとつ。意外な事実を知ることができるうえ、ションダ・ライムズ(制作総指揮)の手腕を改めて実感できるだろう。
シャーロットの結婚生活以外にも、シャーロットの良き相談相手レディ・ダンベリーや、ヴァイオレット・ブリジャートンのバックストーリーを知ることができるため、これから『ブリジャートン家』を観る人にも、観たことがある人にも、どちらにもこのシリーズを深く知ることができる重要なエピソードばかり。
全6話と短いながらも、美しい愛と、悲しみと、王室を支え、強く生き抜いてきた女性たちから、たくさんのパワーをもらえる素晴らしい作品。
前作から引き続き舞踏会のシーンでは、現代ポップスのストリングスアレンジが楽しめる。そのなかでもビヨンセやホイットニー・ヒューストンの名曲を使用したのは、意図的な演出だろう。
その見事な選曲に、正直涙で画面が見えなくなるほど感動してしまうので、ロマンスが足りていない人にはぜひ観ていただきたい。
Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo