靴
SHOWCASE
サンマとイワシ、そしてワラビー。
2023.06.15
ファッションエディターの審美眼にかなった、いま旬アイテムや知られざる名品をお届け。
![400_1 230213_AERA STYLE MAGAZINE16671_F01](http://p.potaufeu.asahi.com/2f1a-p/picture/27645429/cd6eab773d6aa5aaad268159c0b071d5.jpg)
行きつけの居酒屋で、すっかり高級魚になってしまったイワシの刺身やサンマの開きを前に、ため息をつく今日この頃。同じことはファッションの世界でも起きていて、ぼくが若い頃は大衆的な存在だったモノがいつの間にかラグジュアリー枠に入れられていたり、生産国が変わっていたり、そもそも世の中から姿を消していたりして、手に入れづらくなったケースが年々増えている。この現象は産業構造の変化に由来するので、残念ながらぼくたちにできることはないのだ。
その象徴的な靴と言えるのが、かつて英国のブランドがつくっていた、ワラビーやデザートブーツだ。もともと英国陸軍が砂漠を行軍するために開発されたこれらの靴は、柔らかいスエード素材のアッパーと、ナチュラルゴムのクレープソールを、ステッチダウン製法で縫い付けた、素朴なルックスとつくりが特徴。英国やアイルランド製で1万円台というリーズナブルな価格も相まって、20年くらい前までは、トラッドシューズの大定番として、幅広く親しまれていた。しかし今やもともとの工場は閉鎖され、アジア生産にして価格は2万円台に上昇。カタチ自体もずいぶん変わってしまった……。
そんな状況に一石を投じてくれたのが、1972年に創業し、半世紀にわたってわれわれ日本人に英国靴の魅力を教えてくれた名靴店「ロイドフットウェア」だ。こちらは長年の研究の末、スペインの工場を使って往年のワラビーやデザートブーツを復刻。しかも何もかもが値上がりしているこのご時世に、20年前とほぼ同じ価格を実現しているというから、ありがたい限りだ。最近のものとは違う、少しシュッとしたシルエットに気づいた人は、おそらくぼくと同世代。一生困らないように、まとめて買っておこう。
山下英介(やました・えいすけ)
ライター・編集者。『MENʼS Precious』などのメンズ誌の編集を経て、独立。現在は『文藝春秋』のファッションページ制作のほか、webマガジン『ぼくのおじさん』を運営。
<<<人生を変える、ただひとつのカメラ。 はこちら。
「アエラスタイルマガジンVOL.54」より転載
Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Hidetoshi Nakato (TABLE ROCK.STUDIO)
買えるアエラスタイルマガジン
AERA STYLE MARKET
おすすめアイテム
-
アエラスタイルマーケット別注ボックスで極上のシューケアライフを
-
配色がアクセントになった1枚でサマになるニットT
-
前後を異素材で切り替えた軽妙洒脱な一枚
-
ドレスシャツのように上質なニットTシャツ
-
薄いのにカードやお札がたっぷり入る2つ折り財布
-
薄いのにカードやお札がたっぷり入る2つ折り財布
-
もうバッグや革小物の汚れとはお別れです
-
大事なバッグ・革小物はケアして長く愛用したい
-
ASM WEB編集長 山本晃弘×ブルックリン ミュージアムの別注バッグ!
-
ASM WEB編集長 山本晃弘が別注した唯一無二の上品トート
-
カラー×デザインで新鮮な足元に
-
都会的でシャープな印象の柔らかなビットローファー
-
英国紳士に愛される老舗メーカーのサスペンダー