週末の過ごし方
もしもロンドン出張が入ったら?
最新ロンドン街歩き。
2023.07.21
海外出張、それはビジネスパーソンの醍醐味(だいごみ)。空港独特の匂いに始まり、車窓からの異国の街並み、ミーティング前の緊張感……どれもが非日常的で、そして仕事終わりに待ち受ける一杯は最高にエキサイティングだ。この「もしも○○出張が入ったら?」では、元・地球の歩き方のトラベルエディターが海外出張の隙間時間に役立つ遊び方を紹介。vol.1の舞台はロンドンだ。
まず紹介するのはロンドン随一の高級住宅街メイフェアにある「メルカート・メイフェア(Mercato Mayfair)」。19世紀前半に建てられたセント・マーク教会が、なんとフードコートに生まれ変わり2019年11月にオープン。荘厳な祭壇の前にはクラフトビールのバーが構え、ステンドグラスを前に酒を飲むというかつてない体験に、高揚感と背徳感が味わえる。かつての会衆席にはテーブルが置かれ、そこを囲むようにオイスター、ステーキ、ピザ、パッタイ、ジェラートなど国際色豊かな店舗が14ほど並ぶ。地下にはワインバー、上階に上がればルーフトップテラスもあり、平日休日問わずロンドンっ子たちでにぎわっている。
メルカート・メイフェアの周辺には黄色のショッパーが有名なデパート「セルフリッジズ」、世界一古いアーケードと言われる「バーリントン・アーケード」、チューダー様式がかわいらしい「リバティ・ロンドン」など買い物スポットが多く、おみやげ探しができるのも魅力。ショッピングの隙間時間にさくっとランチに寄ってもいいし、平日は23時、金土は24時まで開いているので仕事が遅くなった後でも夕食や軽く一杯飲むのにぴったりだ。
もう少し高級感ある店で飲みたい方には、ホテルの「シャングリ・ラ ホテル ザ・シャード ロンドン」のバー「ゴング・バー(GŎNG bar)」がおすすめだ。ザ・シャードは2023年7月現在、ロンドンで一番高い建築物で、全面ガラス張りでとがった外観はテムズ川沿いでもひときわ目立っている。69階と72階に展望台とバーがあるが、夕方から夜にかけて観光客で混み合うので、仕事でお疲れの出張者にはゴング・バーがゆっくりできていいだろう。
ゴングが位置するのは展望台より少しだけ低い52階。ただし、ロンドンではもちろん、西ヨーロッパでも一番高い場所にあるホテルバーで、ここからでもタワーブリッジやロンドン塔、セント・ポール大聖堂やロンドン・アイなど、観光名所を一望することができる。
カクテルやフードメニューはオリエンタルを意識したものが多く、「Voyager Zheng」は中国の航海士、鄭和をオマージュし、彼が訪れたアジアの国々をイメージしたオリジナルカクテルメニューになっている。超人気バーのため予約は必須(オンラインで可能)。ドレスコードは「スマートカジュアル」のため、ラフ過ぎない格好で出かけるように。
GŎNG bar
https://www.gong-shangri-la.com/
アート鑑賞もロンドン出張の大きな楽しみだ。イギリスでは博物館・美術館の常設展は入場無料(寄付制)のため、仕事の合間のちょっとした隙間時間でも気軽に立ち寄りやすい。博物館で圧倒的な人気を誇るのは「大英博物館」「ロンドン自然史博物館」「ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館」あたり。絵画や現代アート好きであれば「ナショナル・ギャラリー」「テート・モダン」がまずは必見である。
ロンドンのアートは、街なかにも潜んでいる。イースト・ロンドンのショーディッチやブリックレーンは若いクリエーターやファッション関係者に人気のエリアで、グラフィティや壁画があふれる「ストリートアートの聖地」としても知られている。このかいわいを散策すれば、イギリス西部ブリストルの出身の超有名アーティスト、バンクシー(Banksy)をはじめ、フランス人ストーリートアーティストのインベーダー(Invader)、ロンドンとサンフランシスコで活躍するベン・アイン(Ben Eine)、壁一面の巨大アートで有名なベルギーのローア(Roa)などの作品にも出合うことができる。Google Mapにアーティスト名を入れることで簡単に場所が検索できるので、興味のある方はぜひストリートアート散策も楽しんでほしい。
大英博物館
https://www.britishmuseum.org/
ロンドン自然史博物館
https://www.nhm.ac.uk/
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
https://www.vam.ac.uk/
ナショナル・ギャラリー
https://www.nationalgallery.org.uk/
テート・モダン
https://www.tate.org.uk/visit/tate-modern
最後に紹介するのが、現地でのサッカー観戦。2023-24シーズン、ロンドンには「アーセナル」「トッテナム」「フラム」「クリスタルパレス」「チェルシー」「ウエストハム」の6チームがプレミアリーグに属しており、リーグ戦のある週末は必ずと言っていいほど、ロンドンのどこかで試合が開催されている。世界最高峰の選手たちによる激しいプレー、そして熱狂的なファン・サポーターが生み出すスタジアムの一体感は日本では味わえないもの。ほかの欧州リーグに比べたら比較的治安もよい。
チケット購入に際して各クラブとも公式サイトで販売しており、よほどのビッグマッチやダービーマッチでなければシーズンチケット保有者以外でも購入可能(ただしクラブによってメンバーシップに加入するなど条件あり)。またアーセルナやトッテナムの試合は、メンバーシップに加入しなくても、旅のアクティビティオンライン予約サイト「KLOOK(クルック)」でも手配可能となっている(ただし値段は割高)。
出張の合間にどれだけ自由時間があるかは人それぞれだろうが、せっかくロンドンまで行くのだから、ビジネストリップとはいえ素敵な思い出を作ってほしい。
さてそんなロンドンだが、今回はエミレーツ航空のビジネスクラスに乗り、ドバイ経由での訪問となった。現在、日本からロンドンへの直行便はロシア上空迂回のため、最短距離運航時よりも2〜4時間ほど余計にかかってしまう。直行便ならではのメリットを最大限享受できないなかで、中東経由のフライトはこれまでどおり最短距離での飛行が可能。以前よりも経由便でのビジネストリップを検討するハードルが下がったように思う。そしてなにより、エミレーツ航空を選ぶメリットとしては、唯一無二と言っても過言ではないラグジュアリーな機内体験が挙げられる。
2023年7月現在、羽田からドバイまでは最新鋭機、B777-300ER機(通称ゲームチェンジャー)がデイリー運航している。エミレーツ航空のゲームチェンジャーと言えば、航空ファンにとって搭乗すること自体が旅の目的になり得る人気機種。ファーストクラスからビジネス、エコノミークラスにいたるまで、人間工学に基づいて設計されたシートが備わり、最大6500チャンネルが楽しめる機内エンターテインメントシステム「ice」も全クラスに標準装備されている。
私が実際に搭乗したビジネスクラスの配列は2-3-2。各席の間には可動式の仕切りが設けられていて、窓際シートはまるで半個室のように高いプライバシーが保たれていた。また目を引いたのは23インチのメインモニター。業界最大級となるサイズで、ほかの航空会社だとファーストクラスのモニターに匹敵するケースも。さらにシート横にはタブレット型のサブモニター、そしてリモコンにもミニモニターまで備わり、その高級感は際立って見える。
ちなみに深夜フライトとなるためアメニティポーチが配られるのだが、こちらはブルガリとのコラボアイテムで、中にはブルガリの保湿クリームや乳液、香水などが入っており、大切に持ち帰りロンドン滞在中に愛用したのは言うまでもない。
ラグジュアリーな機材と機内サービスにばかり目が行きがちだが、経由地ドバイでのビジネスクラスラウンジのサービスも高級ホテルのビュッフェ、いやそれ以上の充実ぶりだ。
私が利用させてもらったコンコースBのラウンジでは、シャワーブースやビジネスセンター、フルフラットの仮眠スペースなどはもちろん、ビュッフェやバースペースが複数箇所存在。そのなかのひとつ、「モエ・エ・シャンドン・シャンパン・ラウンジ」では、なんとロゼやグランドヴィンテージを含む数種類の「モエシャン」が飲み放題となっていた。またオーガニックやヘルシーフードにこだわった「ヘルスハブ」では、サラダやビーガンサンドイッチ、スムージーといった体に優しいフードやドリンクを選ぶことができ、健康に気をつかうビジネスパーソンの利用者が多く見られた。
羽田からここまで、既に10時間強の移動。しかしこのラウンジのおかげで、経由地でストレスを感じるどころか、いったん完全にリフレッシュし、ロンドン行きのフライト搭乗口へも軽やかな足取りで向かうことができた。
ドバイからロンドンまでのフライトは、エミレーツ航空のフラッグシップ機である総2階建て機種、A380機が運航している。一度の渡航でB777-300ER機とA380機、ふたつの人気機種のビジネスクラスを楽しめるのもこの旅の魅力だ。
A380機では2階部分にファーストおよびビジネスクラスが配置されており、こちらのビジネスクラスは1-2-1のゆとりある配列。B777-300ER機と同じくタブレット型サブモニター&ミニモニター付きリモコン、またコンセントやUSBポートなどが座ったままで手の届くところにあり、機能性の高さを感じられた。
先ほどの羽田〜ドバイは深夜便だったので大半の時間はフルフラットにして熟睡していたが、ドバイ〜ロンドン間は日中の移動なのでテーブルを引き出し、パソコンでのデスクワークに多くの時間を割いた。前述のとおり充電はもちろん、機内Wi-Fi(ネット利用は有料)もスムーズに接続でき、ビジネス利用にも非常に快適な環境であった。
ビジネスクラスのミールサービスは、羽田〜ドバイ、ドバイ〜ロンドン、どちらも非常にハイレベルなもので、軽食でもメインディッシュでも必ず複数種のなかから選択できるのが楽しみだった。特に日本発の路線では「寿司の盛り合わせ」や「懐石弁当」、ドバイ発の路線では「Traditional Arabic Mezze(アラビアの伝統的なメゼ=小皿料理)」が用意されるなど、就航地の食文化をリスペクトしたメニューには旅のワクワク感が感じられた。
個人的にはロンドンへ向かう機内のサービスで、ロイヤル・ドルトンのマグカップで紅茶を飲んだり、ロバート・ウェルチのカトラリーでフルーツを食べたりしたことで、これから始まる英国旅に向けてひとりテンションが上がっていたことを付け加えておきたい。
そしてA380型機最大の特徴が、機体2階の後方部に設置されたバーカウンター。ゆとりあるシートピッチとはいえ、やはり機内ではたまに立ち上がったり、体を動かしたくなったりするもので、こちらのバーでリフレッシュできるのはエミレーツ航空ならではの魅力。バーテンダーにカクテルを作ってもらったら、そのままカウンター横のソファテーブルでいただこう。もしクライアントやスタッフも同行するフライトであれば、こちらに座って対面での打ち合わせ、なんて利用もおすすめだ。気の利いたスタッフが、ここでもアミューズやお菓子を勧めてくれるが、どれもおいしいのでついつい食べ過ぎて太ってしまう。困ったのはその点くらいか。
今回、ドバイ経由でのロンドン出張だったが、経由のデメリットよりもメリットのほうがはるかに感じられた。値段に関しては時期や混雑具合、また比較対象次第なのでなんとも言えないが、安ければもちろん、同じ価格帯だとしてもB777-300ER機とA380機、そしてラウンジのクオリティーを考えればエミレーツ航空を選択する十分な理由になるだろう。さらに、インはロンドンで、帰りにちょっと寄り道してパリやアムステルダムでのアウトを検討できる自由度もある(そんなことが可能な出張かはさておいて)。随所に快適なだけでなく、旅のロマンも詰まっている……、そんなことを感じたエミレーツ航空の旅だった。
取材協力:エミレーツ航空
https://www.emirates.com/jp/japanese/