週末の過ごし方
俳優・町田啓太と考える、装う美学。
「文月」に涼やかに映える盛装。
2023.07.21
日本には四季折々に豊かな表情があり、それぞれにふさわしい「装い」がある。それは単に体感的な暑さや寒さをしのぐといった「機能」を追求するだけのものではなく、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場合)、つまりはTPOにそぐうものであるべき。そして、そのことに通底するストーリーを理解し装うことは、正しい「大人のたしなみ」と言えるだろう。
本連載は、一年の12カ月それぞれに季節を意識したテーマを掲げ、大人の男にふさわしいスタイルを模索しようというもの。小誌が培ってきたTPOに合うトラッドスタイルの知見と、現代を代表するファッションアイコン=町田啓太の表現力とのコラボレートにより、アエラスタイルマガジン流現代版「服飾歳時記」としてつづっていく。
暦の上では秋だが、まだまだ暑い。
そんな季節に、町田啓太は――?
文月(ふづき、ふみづき)の由来もまた、興味深い。一般的なのは「文被月(ふみひろげづき、ふみひらきづき)」を略し、転じたという説。七夕の夜に書物(=文)を開いて夜気(やき)にさらし、書道の上達を祈る風習を言語化したというものだ。
ただし、七夕自体がそもそも中国から奈良時代に伝わった行事であることから、「古来ではない」と疑問視する向きもあり、稲穂がふくらむことから「穂含月(ほふみづき)」「含月(ふくむづき)」と呼び、略し転じたという説なども根強い。令和を生きるわれわれにとっては奈良時代も十分に「古来」だが、稲作文化が息づく日本らしい語源をもつこれらの説もまた、確かにうなずける。
さて、陰暦では7月~9月は秋となり、その最初の月である文月は別称で「初秋」と呼ばれる。昨今の猛暑を踏まえるとさすがに無理のある響きに思えるが、この季節と町田啓太はどう向き合うのか――?
「基本的に自分は汗っかき。この時期に外を歩けば、すぐに汗だくになる。職業柄、真夏に真冬の格好をする撮影もある。そんなときは周囲から涼しげに映るよう、暑さを意識せず、ある意味で心を“無”にしてカメラの前に立つ。そうすれば、人から見えるところに汗はかかない」
まさに、心頭滅却すれば火もまた涼し。町田はこともなげにサラリと言うが、すべての俳優やモデルがこれをできるわけではない。圧倒的に高いプロ意識があってこその、常人離れした業だ。
シアサッカー素材のスーツなら、
真夏の盛装をクールに彩る。
真夏とはいえ、ドレスアップをすべき場もある。一般的に冠婚葬祭には様式が伴い、ある意味で涼しさを諦めた“正しい装い”が求められる。悩ましいのは、それなりに格式のあるホテルやレストランでのカクテルパーティーなど。もちろん、ドレスコードの指定があれば従うまでだが、場のムードを考えるとエレガントな着こなしで参加したい。
「このスーツは軽くて、着ていてストレスがない。そして、サラリとした肌触りがいい」
町田にこう言わしめたのは、ブリオーニのシアサッカー素材のスーツとシャツ。凹凸のある生地表面は、肌に直接触れる面積が少ないため、通気性も高く、肌離れがよくベタベタしない。つまりは、真夏のエレガントな装いを涼やかに仕上げるのにふさわしい。
まとう町田の表情も、Coolに映る。すなわち、涼やかであり、カッコいい!
FROM EDITOR
3年ぶりに訪れたミラノでの時間は、とても有意義で感慨深いものとなりました。まさか、町田啓太さんとご一緒できるなんて! この素晴らしい機会をプロデュースしてくださったトッズのWさんとSさんには、ただただ感謝しかありません。この場を借りて、深くお礼を申し上げます。もちろん、取材撮影もバッチリ。こちらは11月に発売する雑誌にギュッと詰め込んでお届けする予定ですが、先行してVoicyでミラノからの「声」を配信しています。お楽しみください。
アエラスタイルマガジン編集長[雑誌・タブロイド] 藤岡信吾
町田啓太(まちだ・けいた)
1990年生まれ。俳優、劇団EXILEメンバー。映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』『太陽とボレロ』、テレビドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)、『ダメな男じゃダメですか?』(テレビ東京)、『unknown』(テレビ朝日系)『漫画家イエナガの複雑社会を超定義』(NHK)など話題作に多数出演。現在、WOWOW連続ドラマW『フィクサー』Season2が放送および配信中。来年にはNHK大河ドラマ『光る君へ』の出演が控える。
Photograph: Sunao Ohmori(TABLE ROCK.INC)
Styling: Eiji Ishikawa(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: KOHEY
Edit & Text: Shingo Fujioka(AERA STYLE MAGAZINE)