週末の過ごし方

稲見萌寧だけじゃない!
菅沼菜々のツアー初Vで始まる「狭間世代」の逆襲。

2023.08.23

稲見萌寧だけじゃない!<br>菅沼菜々のツアー初Vで始まる「狭間世代」の逆襲。
写真:日刊スポーツ/アフロ

女子ゴルフ国内ツアー・NEC軽井沢72(長野・軽井沢72G北C)は8月13日、菅沼菜々(あいおいニッセイ同和損保)のツアー初優勝で幕を閉じた。通算16アンダーで並んだ神谷そらとのプレーオフ(PO)2ホール目でバーディーを奪い、激闘を制した。優勝者が13人いる98年度生まれの「黄金世代」、エリートがそろう00年度生まれの「プラチナ世代」に挟まれた世代。これまでツアー12勝の稲見萌寧が孤軍奮闘だったが、ついに菅沼が2人目の優勝者となった。ここから始まる「狭間世代」の逆襲。稲見、菅沼に続く注目プロを紹介する。

1.5メートルのバーディーパットを決め、23歳の菅沼はかわいらしく右手を上げた。アイドル好きでアイドルになり切ってプレー。ファンの歓声には笑顔で応えた。だが、稲見から「おめでとう」と声かけられ、抱き合うと涙があふれ出した。

「萌寧ちゃんとかが待っててくれていて、そこですごく優勝した感じが出て泣きました」

稲見の隣には父でコーチの真一さん、母・めぐみさんもいた。菅沼は高2で広場恐怖症を発症。電車、飛行機、船、ヘリコプターなど自力で外に出られない状況があると発作が起き、公共交通機関を利用できなくなった。と同時に無気力症候群にもなり、7カ月間もゴルフを離れている。その後、復帰してプロテストに一発合格した。それでも、広場恐怖症は続いてツアー転戦の手段は真一さんが運転する車のみだ。北海道、沖縄の試合には出場できない状況での苦労は、同期の稲見もよく知っていた。

東京オリンピック銀メダリストで賞金女王のキャリアも築いた稲見。続く同期の優勝者がいない現実を「ジュニアの頃から上(黄金世代)がすごすぎるので」と表現したことがある。稲見を追う1番手でありつづけた菅沼も「萌寧ちゃんはすごい」と言いつづけてきた。

だが、昨今のツアーでは「黄金世代」だけでなく、西村優菜、古江彩佳、吉田優利らの「プラチナ世代」、山下美夢有、西郷真央、笹生優花らの「新世紀世代」(01年度生まれ)、岩井明愛・千怜姉妹、佐久間朱莉、桑木志帆らの「ツインズ世代」(02年度生まれ)、川崎春花、尾関彩美悠、櫻井心那らの「ダイヤモンド世代」(03年度生まれ)からも優勝者が続々と出るようになった。文字どおり、99年度生まれは取り残されていた「狭間世代」だった。

だが、現実にはこの世代にも興味深いプロはいる。鶴岡果恋、泉田琴菜、千葉 華の3人だ。

〇鶴岡果恋 1999年8月20日、横浜市生まれ。湘南学院高卒。2018年7月の最終プロテストに稲見、菅原と共に一発合格。20-21年統合シーズンから頭角を現し、稲見と優勝争いを演じた試合もある。同シーズンはメルセデス・ランキング(MR)55位で準シードを獲得も、昨季の22年はドライバーの不調に陥ってMR90位に低迷。だが、クラブフリー契約となった今季は復調して、前週のCATレディース(優勝:蛭田みな美)終了時でトップ10が2度のMR60位にいる。ドライバー飛距離とフェアウェーキープ率の順位をポイント化したトータルドライビングは8位。つまり、飛んで曲がらないドライバーショットが武器になっている。また、彼女は166センチの細身。ノースリーブのウエアを着こなすなど、ビジュアル面での評判も高い。

〇泉田琴菜 1999年8月5日、新潟県生まれ。幼少期から軟式野球に打ち込んでいたが、14歳でゴルフに転向。高校は単身渡米して、多くのトップアスリートを輩出した米フロリダ州のIMGアカデミーに入学。3度目受験となった21年11月、最終プロテストで合格を果たした。ほかのプロに比べるとゴルフ開始時期が遅く、米国で腕を磨いた異色のキャリア。その道を選択した理由について、本人は「同じようにやっていたら追いつけなかったら」と公言している。稲見、菅沼らがジュニア全国大会で上位に入っていた頃、キャリアをスタートした24歳。野球で培った足腰、バネを生かした飛距離が魅力で、21年プロテスト2次予選で「61」をマークした爆発力もある。ルーキーシーズンの昨季は11位が2度、今季は15位が最高位だが、常に才能開花の雰囲気を漂わせている。

〇千葉 華 1999年6月25日、仙台市生まれ。2男3女の次女。2歳で沖縄に移住し、5歳でゴルフを始めた。中学時代に九州ジュニア、ルネサンス豊田高時代に中部女子アマ選手権で優勝したものの、プロテストの壁に阻まれつづけてきた。そして、5度目の受験となった昨年11月の最終プロテストに合格。ルーキーイヤーとなった今季は、ステップ・アップ・ツアーを主戦場にして2位が1度ある。レギュラーツアーでは資生堂レディス初日11位。好発進で記者に囲まれ、次兄の開(かい)がプロボクサーでかつてOPBF東洋太平洋バンタム級王者だったこと、父もボクシングの日本アマチャンピオンだったことを明かしている。自身も高3で兄と同じボクシングジムに通い、トレーナーからボクサーに誘われるほどの素質があったものの、1年で終了。理由は「拳の皮がむけて、ゴルフに影響が出る可能性があることから」だった。今季はステップ・アップ・ツアーで全体11位のパーセーブ率85.00%。パットもかみ合っていけば、一気に飛躍する可能性がある。

そのほか、石井理緒、吉本ここね、廣田真優、常 文恵、河野杏奈、薮田梨花、東 風花、星野杏奈、須江唯加、大林奈央、平岡瑠依も「狭間世代」。菅沼が初勝利を飾ったことを励みに、おのおのが試行錯誤を重ね、次の優勝者を目指す。

>>飛距離&勝負強さ。女子ゴルフ新時代を感じさせた19歳・櫻井心那、20歳・桑木志帆の躍動!

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