調べ・見立て(見立て)
コンフォタブルなスーツが定着。
次は、クラシックな着こなしがくる!?
編集長の「見立て」。#72
2023.11.28
働き方の変化に呼応して、機能性素材のコンフォタブルなセットアップスーツが注目を集めています。いっぽうで、改めてクラシックなスーツをしっかりと着るビジネスパーソンも見かけるのです。先日ある展示会で、カジュアルなメンズファッションを採り上げることが多い雑誌の編集長にお目にかかりました。スーツをかっちりと着ていることに驚かされて「めずらしいですね」と声を掛けたところ、「お詫びに行く要件があるわけではないですよ。今日はスーツの気分だったので」とのこと。まさに彼が着用していたのが、ネイビーのストライプスーツでした。アエラスタイルマガジンWEBのアンケートで「この秋、無地のスーツ以外に着たいのは?」の質問にも、ストライプのスーツへの支持は46%とトップです。
では、スリーピースのスーツはどうでしょうか。直近の調査では、ビジネスで着用すると回答した読者が68%となりました。2019年に同じ質問を投げかけたときには、着用するという回答は38%でしたので、大きく数字を伸ばしています。やはり、機能性セットアップのカウンターとしてクラシックなスーツが復権している状況があるようです。スリーピースはベストを着用するのでエレガントに見えるのが特徴ですが、オフィスでジャケットを脱いでもだらしなく見えず、しかも暖かさも確保できるという現実的なメリットもあります。
ブラウンのスーツをビジネスで着用する意向も高まっています。ネイビー、グレーに次ぐ第三の色として、「次はブラウンのスーツが流行します」といわれて久しいですが、提案しているファッション業界以外でブラウンを着ているビジネスパーソンはなかなか増えませんでした。それがここに来て、選択肢としてブラウンを考える人も増えてきているようです。クラシックな濃いブラウン以外にも、カジュアルに着られるベージュのスーツもブラウンの同系色。まずはその辺りからチャレンジしてみるのもいいかもしれません。
いっぽうで、ダブルブレストのスーツについてはまだまだ抵抗が強いようです。ビジネスでの着用すると回答した読者は、33%にとどまりました。やはり、バブルスーツの印象が強すぎるのでしょうか。1980年台にダブルのスーツが流行したときには、金融や不動産業界の好景気が背景にありました。肩パットの入った大きなシルエットは、イケイケの時代の気分とフィットしていたのです。その後、ビジネスのスピード感を重視する時代にはコンパクトなシルエットのスーツが流行し、ビジネスでも寄り添いを重んじる現在は「コンフォタブル=快適」なビジネスウエアが主流になっています。
そして、そのカウンターとして、かっちりとしたクラシックなスーツへの回帰。ニッポンのビジネスマンの働き方と着こなしに、これからも注目していきたいと思います。