接待と手土産
「おつな寿司」の詰め合わせ。
すべて実食! 自慢の手土産 #124
2024.01.18
創業140年余の老舗の味。凛(りん)として芯の通った寿司折り。
濃紺の包装紙に朱色で店章が描かれ、紙ひもの掛けられたおもたせ。さすが創業1875年、六本木きっての老舗寿司屋「おつな寿司」の折詰めだけあって、外観からして凛とした風格が漂う。六本木の表通りに店を構え、気軽に立ち寄れるという利便性も兼ね備えている。プライベートも含めて、もう10年以上は事あるごとに足を運んでいる。
太巻、のり巻に穴子寿司など種類も豊富だが、一番人気はなんといっても名物のいなり寿司。継ぎ足し、継ぎ足し使いつづける秘伝の煮汁で煮た油揚げを、裏返しにして使う。いなり寿司といえば、古くから親しまれてきた庶民の味だが、形や味付けも各地でさまざま。油揚げを裏返したいなり寿司を商いにしたところ大評判になり、それ以来140年余り変わらずの看板商品なのだそうだ。
裏返すことで口当たりが柔らかくなり、のど越しも良くなる。甘く濃いめの煮汁が染み込んだ油揚げは、厚みも食感もしっかりとしている。シャリは、粘りの少ないコシヒカリの酢飯に、高知県産の柚の皮を刻んだものが混ぜ込まれている。柚皮入りは今では珍しくもないが、おつな寿司のいなりはひと味違う。食べはじめは、柚が存在を主張することはなく、のどを通り過ぎるころに、絶妙なあんばいで登場し、それが余韻となってじんわりと口の中に残る。この素晴らしいバランスこそがファンをとりこにするのだろう。
折りは一人前からあり、種類も豊富。人数にもよるが、私のいち押しは、いなり、太巻、山ごぼう巻、かっぱ巻、穴子寿司という、店の自慢の品がみんな入った「詰め合わせ3号」だ。太巻のシャリと、かんぴょう、田麩(でんぶ)とのバランス。かっぱ巻にしても、ヤマゴボウ巻にしても、老舗ならではの安定感がある。そして、京風の焼きアナゴの押し寿司が、また絶品。小さなボトルに入った、アナゴの骨でだしを取った甘いツメを垂らして味わう。
この完成度の高さと並んで、手土産に重宝するのが、扱いやすさだ。煮汁をしっかりと蓄えながらも、流れ出すことのない、ほどよい汁気。生ものではないので、少々時間がたっても、おいしく食べられるのも安心だ。箸でつまんでほいと口に放り込むと幸せがやってくる。
時代と共に変わりゆく六本木の地で、変わらぬ味を守り抜いていくという気概を感じる、凛として芯の通った味。ちなみに、“裏(番組)を食う”という意味で、縁起物として、テレビ業界の差し入れにも好まれているそうだ。伝統が醸し出す風格と肩肘張らない親しみやすさが同居する、差し入れにももってこいのおつな寿司の詰め合わせ。ぜひラインアップに追加してはいかがだろうか。
おつな寿司
東京都港区六本木7-14-4 レム六本木ビル1階
営業時間/月曜~土曜10:00~21:00・日曜10:00~13:00 ※持ち帰り
定休日/お盆・年始、祝日不定休
価格/詰め合わせ1号3165円、詰め合わせ2号4100円、詰め合わせ3号4100円など ※税込み
問/03-3401-9953
https://otsuna-sushi.com/