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『ありふれた家族』
いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #64

2024.01.25

『ありふれた家族』<br>いま観るべき、おしゃれな海外ドラマとは? #64

北欧のなかでもドラマ作品を多く発表しているスウェーデンから、配信開始とともにNetflix全世界ランキング1位を獲得した『ありふれた家族』。

父と母と娘、ごくありふれた家族が、とある殺人事件に巻き込まれて人生が一変する。スリラーでありながらも、家族の関係性をリアルに描き、今まで気づいていなかった家族の問題が次々と明るみになっていく。

こうしてほしい、こうしてほしかった、家族だからこそあまり向き合えずに、すれ違いつづける様子があまりにもリアル。それに加えて、事件はなぜ起きてしまったのか? そして本当の犯人は誰なのか? 数々の疑問から始まる物語に、思わず一気見してしまったと話題のドラマだ。

ステラは19歳の誕生日に、両親とランチをしていた。ステラの夢だった旅行への資金を援助してくれるものだと思っていたが、期待とは裏腹に、プレゼントはピンクのバイクだった。

落胆したステラは、気を取り直して親友アミーラと誕生日を過ごそうと、彼女の家に向かった。「私はあなたを軽んじたりしない、最高の誕生日にしてあげる」と、アミーラとステラはクラブへ。

「イイ男探そう!」とワクワクしながら繰り出したものの、アミーラは同じ大学の仲間と偶然出会い、ステラにはわからない会話ばかりしている。孤独感にふけったステラが、外でひとりポツンとベンチに座っていると、クラブの入り口で見かけた魅力的な男性がちょうどクラブから出てきた。

ステラはこの最低な誕生日を、少しでも刺激的になるように思い切って彼に声をかけ、ふたりは車に乗って別の街へと向かった……。

ある日突然、ステラは殺人の容疑で警察に連行された。クラブで出会った男クリストファーが、何者かによって殺されたのだ。なぜ娘が? 13歳も年上の男と交際? 何も知らなかった両親は、娘を守ろうと数々の危険な行動に出る。

物語は、ステラは本当に殺人を犯してしまったのか?という謎と、ほかの家庭となんら変わらない“ありふれた家族”のように見えて、小さな傷の積み重なりやすれ違い、変えられない過去……、そして明るみになっていく裏切り。皮肉にも、事件をきっかけに家族として成長してゆく姿が描かれる。

家族とは何か? 親子とは? ふとこの作品を観て考えるだろう。「うちは干渉しないタイプだから」「言わなくても思っていることはだいたいわかる」だとか、果たして本当にそうなのだろうか。

ステラには、家族に対して不信感を抱いたきっかけがあった。4年前、自分の好奇心と、無知さが招いてしまったあのできごとが、ずっとひっかかっていたのだ。

「違う、こうしてほしい」。そう言いたくとも、言える隙を与えなかった両親の代償は、とてつもなく大きなものとなってしまった。父は牧師で、街中の人たちを幸せへと導いている。母は弁護士で、困っている人たちの手助けをしている。なぜ私には……、長年そう思っていたステラは、愛されたい、愛されたいと、苦しんでいたのかもしれない。

ステラ役のアレックス・カールソン・タイヤフォーシュは、本作がデビュー作となる。デビュー作で堂々の主演となるのも納得の演技力! 今後の出演作品にも期待が高まる。

ノットリズミカルなテンポ感と、北欧インテリアや、カラフルな街並みが、重たく圧し掛かってくるストーリーに相反して美しい。そういうところが、北欧ドラマファンの心をわしづかみにしているのかもしれない。

『ありふれた家族』はNetflixリミテッドシリーズ(全6話)にて配信中。

<<過去の「いま観るべき、おしゃれな海外ドラマ」はこちら

Text:Jun Ayukawa
Illustration:Mai Endo

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